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No.044 錬金術ギルドの展示会

残業続きです。

お話の在庫が無くなったので、書き溜めたらまた投稿します。

メリダの街の冒険者ギルドの管理が錬金術ギルドに移管されてから数か月後、メリダの街で錬金術ギルドが主催する展示会が開催された。


展示会の主催は、錬金術ギルドだが展示会の企画を考えたのはカルルであり、展示会の主要な展示品の殆どの提供者もカルルである。


ただ、それは錬金術ギルド内でも極秘とされ、錬金術ギルドに所属する錬金術師達の成果である魔道具の展示会という名目で開催された。


会場は、全部で5ヵ所。街の中に3ヵ所と街の外に2ヵ所だ。


第1会場は、魔石と魔道具の展示を行う。


ここの目玉は、トーデスインゼル(死の島)にある神殿遺跡から持ち帰った"知恵の魔石"である。


冒険者ギルドの記録では、100年間に大錬金術師ゼストが持ち帰ったという記録しか残されておらず、冒険者ギルドに"知恵の魔石"の実物は存在しない。


第2会場は、飛空艇の展示を行う。


広場に通常型飛空艇、戦闘型飛空艇、早期警戒飛空艇の計3艇を展示する。


飛空艇の内部を見せることはないが、代わりに第4会場で飛空艇による遊覧飛行を行う。


第3会場は、早期警戒飛空艇を実際に飛ばして得られた地形図や魔獣の位置などを会場内で見られる様にした。


この展示は、一般客や子供にはあまり人気はないと思われた。その代わりに軍人や領地経営をしている貴族には垂涎の眼差しとなる玄人向きの展示となる予想だ。


第4会場は街の外に置かれ、飛空艇によるメリダの街の上空や、グルズ山脈近くを飛ぶ遊覧飛行を行うための搭乗場所となる。


カルルが急遽飛空艇4艇を創ったので、それを使った遊覧飛行となる。


第5会場は、街から少し離れた場所で魔道具の実演を行う。


予定としては、人が装備する飛空の腕輪、防壁の腕輪、魔道の腕輪を使った実演と、戦闘型飛空艇の魔道砲を使った魔法攻撃の実演を行う。


これ以外にもカルルが個人的に提供した魔道具がある。


それは、第1会場と第3会場の建物内に設置された魔道ストーブだ。


地味ではあるが人が多く出入りする建物内は、かなり暑くなるため魔道ストーブで適度な温度に冷やすことにした。


気が付いた人だけが分かる玄人向きの展示だ。


もうひとつは、第1会場から第3会場の近くに設置された魔道トイレである。


各会場の近くに計20個の個室と魔道トイレを置くことでトイレトラブルを防ぐのが狙いだが、こちらは商談があればいつでも対応できるように第1会場近くに対応できる職員を配置してある。


さて、展示会は2日間に渡り朝の8時から夕方の6時まで行われる。


近隣の街から露店を出したいという露天主から錬金術ギルドに多数の申請があったが、メリダの街にも店や露天商はいるため殆どは断ることになった。


今回の展示会では、神殿遺跡から持ち帰った"知恵の魔石"の展示が目玉だが、それを見たいという冒険者が数日前からメリダの街へとやって来ており、宿屋はいつにも増して満室となっている。


街に入りきれなかった冒険者達は、街の外に勝手に天幕を張り寝泊まりを始める。


ここで問題になったのがやはりトイレ問題だった。


錬金術ギルドもこれには困り果ててしまい、結局はカルルの土魔法により個室を創り複数の魔道トイレを設置することになった。


さて、展示会が開催される初日、第1会場には朝早くから長蛇の列ができており、錬金術ギルドから応援で派遣された職員と、現地で雇われた臨時職員が列に並ぶ人達の整理に追われている。


第1会場はそれほど広い建物ではないが、入場すると強化魔法で強度を高められたガラスケース内に魔石がいくつも並べられている。


最初は、浮遊の魔石、飛空の魔石が並ぶ。どれも飛空艇に使われる魔石で市場価格で金貨100枚で売買される高価格魔石である。


しかも魔石は必ず3個ずつ並べられた。


理由は、魔石を1個だけ展示するとワンオフ品だと疑う者がいるためだ。


ワンオフとは、世界にひとつしかないもののことで、例えばダンジョンでドロップした魔石を自身が錬成したと嘘を言い、専売するといって予約金をだまし取る輩が少なからずいる。


展示してある魔石は、全て錬金術ギルドに所属する錬金術師が錬成したもだということを示すため、魔石は必ず3個ずつ並べられた。


次に展示した魔石は、探査の魔石と鑑定の魔石である。


この手の魔石を作れる錬金術は多く、市場にも広く出回っているのであえてこの場に展示する必要などないように思えるが、魔石が探査できる範囲が極端に広かったり、遠距離だったりと市場には出回っていないものばかりを並べてみた。


探査系の魔石では、広域探査の魔石、遠距離探査の魔石、超遠距離探査の魔石の3種類。


鑑定系の魔石では、広域鑑定の魔石、遠距離鑑定の魔石、超遠距離鑑定の魔石の3種類。


この探査系と鑑定系の魔石の展示を凝視している人の殆どは、探査の魔石や鑑定の魔石を錬成できる錬金術師が多く、眺めてはため息を付くという動作を繰り返している。


これらの探査や鑑定の魔石は、全て飛空艇で使われており魔道具としては販売しない旨が魔石の下に説明書きされている。


その次に展示されているのは、物理防壁の魔石と魔法防壁の魔石である。


物理防壁の魔石は、物理攻撃に対する防壁を展開する。物理攻撃にはかなり威力を発揮するが魔法攻撃には殆ど効果はない。


逆に魔法防壁の魔石は、魔法攻撃に対する防壁を展開する。魔法攻撃にはかなり威力を発揮するが物理攻撃には殆ど効果はない。


なので物理防壁の魔石と魔法防壁の魔石は、対になる魔石であり両方の防壁を同時に展開して使用される。


この展示で目を止めているのは、体が大きく盾職と思わる人が多く、やはりため息を付きながら魔石を凝視していた。


そして最奥に魔力の魔石と知恵の魔石が並ぶ。


ここが最も人の流れが止まり魔石を凝視する者が多かった場所だ。


なにせ冒険者ギルドが100年に渡り誰もがどんな魔石でも錬成できる魔石として宣伝してきたお宝だったが、誰も実物を見たことが無かったのだ。


それが錬金術ギルドに変わった途端に展示されたという訳だ。


その展示された知恵の魔石の説明には、詳細は伏せつつ錬金術師が入手したとだけ書かれている。


100年前に知恵の魔石を入手したゼストも錬金術師であることは広く知られており、そこから察すると冒険者ではなく錬金術師でなければ、魔石を入手できないという推察に行きつくのは容易い。


その先は、魔道具の展示となっている。


各魔石がどんな魔道具となっているのか。個人でも購入可能なのかは、冒険者ならずとも気になるところだ。


飛空の腕輪は、飛行魔法が使えない者でも空を飛ぶことができる魔道具で、これがあれば人では登れない場所や降りることができない渓谷にも容易に立ち入ることができる。


防壁の腕輪は、物理防壁と魔法防壁を同時に展開できる魔道具で、盾職が欲しい魔道具として問い合わせが多かった。


魔道の腕輪は、戦闘用飛空艇に装備した魔道砲の威力を落したものだが、殆どの魔獣を1発で仕留めることができる超強力な攻撃魔法武器で、魔道の腕輪の展示の前には、多くの魔術師が足を止めている。


収納の腕輪は、収納の魔石を使った魔道具で馬車1台分の物資を収納できる魔道具だ。


この魔道具の展示の前には、どう見ても商人と思しき多数の者が足を止めていた。


そして展示会場の片隅に展示された小箱があった。


誰も見向きもしないその小箱は、転送の小箱である。


転送の魔石を使った魔道具で数百キロ離れていても手紙を送れるという画期的な魔道具なのだが、派手さが無いせいかここで足を止める者は少ない。


第2会場は、飛空艇の展示を行っている。


飛空艇の展示は、飛空艇の簡単な説明が書かれた紙が貼られており、特に飛空艇が動く訳でもないので短時間眺めては去っていく者が殆どだ。


第3会場は、空を飛ぶ早期警戒飛空艇から送られてくる地形図や魔獣の位置などを会場内で見られる様にした展示を行っている。


この会場はあまり人気はなく、会場を訪れるものが少なかったが、逆にこの会場に入る者は、軍服を着た軍人が多く錬金術ギルドの職員に説明を求める者がとにかく多い。


さらにお付きの者を引き連れた身なりの良い、どうひいき目に見ても貴族だと分かる一団が足を止めて地形図を凝視している。


恐らくこの地形図が自身の領地で利用できたとしたら、どれだけ領地経営に有益に働くか想像に容易い。


しかも魔獣の位置や敵対する者の位置まで把握できるとなれば猶更だ。


第4会場は、街の外になる。


飛空艇4艇を使い街の周囲を飛ぶ遊覧飛行だ。


これは、魔石や魔道具の展示会よりも人気があった。


会場前には朝早くから長蛇の行列ができてしまい、早々に行列の最後尾を打ち止めにしたほどだ。


飛空艇には、操術師などの乗組員4~5人が乗り、それ以外に10人ほどが搭乗できる。


今回の遊覧飛行は10分程度と短いため、1艇辺り1時間に6回の遊覧飛行を予定している。


となると1時間に4艇でフル稼働しても240人を搭乗させるのがやっとだ。


そして遊覧飛行を待つ行列は、優に1000人を超えていて行列の最後尾は2時間待ちとなる。


まさかここまで飛空艇による遊覧飛行に人気が集まるとは、錬金術ギルドも思ってもみなかった。


第5会場も街の外にある。


ここでは、第1会場で展示があった魔道具を使った演舞が披露された。


まずは飛空の腕輪を使い空を飛ぶという演舞だ。


さらに上空に飛空艇を空中停止させ、そこからの降下や地上から飛び立ち飛空艇に搭乗するといった展示が行われた。


次に防壁の腕輪を装備した者に対して剣士が真剣で攻撃を仕掛ける演舞と、魔術師が手抜き無しの攻撃魔法を放つ演舞が始まる。


剣士が真剣で何度も切りかかるも、防壁の腕輪を装備した者へは剣が届かない。


防壁は、小盾、大盾、前方へ半球状、使用者の全体を囲む全球状と4形状に変えられるため、防壁の腕輪を使う者の反撃に合わせて形態を自由に変えることができる。


今度は、魔術師が攻撃魔法を放つも防壁が破損するまでには至らない。


数人の魔術師が土魔法、水魔法、氷魔法、風魔法、火魔法、雷魔法とあらゆる攻撃魔法を放つも、どの攻撃魔法も防壁魔法を破ることはできなかった。


次の演舞は、魔道の腕輪を使い土魔法で創られた巨大な岩壁を破壊すといった派手なものである。


演舞が始まる前に会場に土魔法により大きな岩の壁が形作られていく。


その大きさは縦横5mで奥行きは1mほどの厚いものだ。


最初に火魔法と雷魔法で岩壁を攻撃して、どれくらいのダメージが与えられるかを見せるところから始まる。


厚さ1mの岩壁に魔術師が火魔法と雷魔法を放つも、岩壁には多少の傷と焼け跡が残るのみであった。


次に魔道の腕輪を装備した魔術師が岩壁に向かって魔道の魔法を放つと、厚さ1mの岩壁に大きな穴があいた。


その穴は、奇麗に厚さ1mの岩壁を貫通している。


魔道の魔法が他の攻撃魔法と比べても明らかに攻撃力が違うことが分かる演舞であった。


そして最後に上空に現れた飛空艇が、会場に作られた岩壁に向かって魔道砲を連射していく。


魔道砲の連射は、ほんの数秒である。


だが用意された3つの岩壁はことごとく破壊されていた。


第5会場では、演舞が始まる度に大きな拍手が湧き、演舞を見守る観客を大いに喜ばせた。


演舞は、大成功であった。


だがそんな時であってもトーデスインゼル(死の島)では、冒険者達が魔獣と戦い負傷して救助を求めていた。


錬金術ギルドが主催した展示会で盛り上がるメリダの街に2艇の飛空艇が降り立つ。


その飛空艇から運ばれていくのは、トーデスインゼル(死の島)で魔獣との戦いで負傷した冒険者達だ。


血まみれの冒険者が担架に乗せられ、次々と治療院へと運ばれていく。


彼らは、冒険者ギルドがトーデスインゼル(死の島)を管理していた頃は、命を落としていたかもしれない者達である。


それが錬金術ギルドに管理が移った途端、飛空艇を使った救助隊により命を繋いでいるのだ。


その光景を見ていた街の冒険者達から声が上がる。


「がんばれ!」


「死ぬんじゃないぞ!」


「皆、お前達のことを応援している!」


担架で運ばれて行く血まみれの冒険者に多くの声がかけられていく。


その光景に勇気づけられた血まみれのケガ人は、担架に乗せられたまま腕を叩く上げる。


その姿に周囲の冒険者から喝采が送られていた。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:154

 1000艇まで残り846


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイザバード王国軍向け飛空艇 30艇

・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼、商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物質補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇

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