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No.004 飛空艇

カルルの父親が魔石を換金するために街に出かけて数日が経った。


体内の魔力循環の鍛錬を行うとなぜか勝手に魔石が錬成されるという変な体質になってしまったカルル。


当初は屑魔石ばかり錬成していたが、徐々に浮遊の魔石、飛空の魔石が錬成できるようになっていた。


浮遊の魔石はカルルの意思で錬成できるようになったものの、飛空の魔石はまだ半分ほどは錬成に失敗する。


魔力の魔石は、まだひとつも錬成できずにいる。


床に錬成済みの魔石を並べ数を数えていく。


すると浮遊の魔石は50個を超えていて、飛空の魔石は20個ほどになってた。


今までの魔石のでき方を思い出しながら魔石の数に何かヒントがあるのではと考える。


「そういえば、浮遊の魔石が50近くなった頃に飛空の魔石が錬成できたような・・・」


試しに飛空の魔石を左手で掴み、魔石の錬成を試みるといつの間にか右手に飛空の魔石が握られていた。


「左手で魔石を握りながら魔石を錬成すると欲しい魔石ができる?」


ならばと魔石の錬成を何度も繰り返すうち、右手には今までに見たことの無い赤い半透明の魔石が握られていた。


早速、その赤い魔石を鑑定の魔石で鑑定してみると・・・「魔力の魔石」と鑑定結果が出た。


今までに錬成した魔石の数を調べると、浮遊の魔石80個、飛空の魔石51個、魔力の魔石1個であった。


「そうか、数を作らないと次の魔石が錬成できないのか!」


そういえば、母親が言っていた事を思い出した。


攻撃魔法で魔獣を倒すと経験値が手に入る。その経験値がある程度に達すると魔法力が上がると。


魔石の錬成の場合は、とにかく魔石を錬成する事が経験値を貯めることになるとカルルは気が付いた。


そこからは、左手で魔力の魔石を握り続け魔力の魔石の錬成を続けた。


次の日。


家の畑の一角にあるカルルの飛空艇工房へと向かう。


工房と言っても小屋がある訳ではない。


畑で使う土が盛ってあるだけの場所だ。


そこに今までに創った壺の様な形をした飛空艇もどきがいくつか並んでいる。


数日前に降った雨で土は柔らかくなり、壺の様な形をした飛空艇もどきは崩れて原型を留めてはいない。


カルルは、土魔法で形を整え人ひとりが入れるくらいの壺の様なものを創る。


だが、これだけだと柔らかすぎて簡単に壊れてしまう。


この壺の形をした土をもっと固く強固なものする必要がある。


森の中にあった飛空艇の残骸は、触っただけで固いと分かるほど頑丈に作られていた。


あれをどうやったら再現できるのか。


カルルは、何か方法があるのかを考えてみる。


ふと父親との会話を思い出す。


「それに土魔法以外にも強化魔法や固定魔法もいる」


その会話に出てきたのは「強化魔法」というものだった。


カルルは、強化魔法というものを知らないが、土魔法で石を作り出しそれを飛ばして魔獣を何度も倒した経験がある。


元々は土魔法なのに固い石を創れるのだから、土を固めて固くできるはず。


カルルは、自身が作りだした壺の様な形をした飛空艇もどきの外殻に両手を充て、外殻が固くならないか魔力を込め始めた。


すると外殻の色が変わり始めた。


「固く、固く、もっと固く、叩いても蹴っても壊れない物になれ!」


そう念じること数分。壺の様な形をした飛空艇もどきは、叩いても蹴ってもびくともしない程の固さへと変化していた。


「やった。できた!」


カルルは喜び飛空艇もどきの外殻を何度も脚で蹴り、どれくらい固いのかを何度も試してみる。


すると外殻に小さなヒビが入っていた。


確かに外殻を見ると薄い。家で使っている壺ほどの厚さしかない。


「これじゃ人は乗れないか・・・」


森の中にあった飛空艇の残骸の外殻は、カルルが創った飛空艇もどきの外殻の数倍の厚さがあり、さらに柱の様なものが飛空艇の内部に組まれている事を思い出す。


カルルが入れるだけの小さな飛空艇もどきだが、外殻をより厚くして躯体(柱)を創り、それらを石の様に固く固く強化していく。


数日ののち、カルルの飛空艇もどきの大きさは、大人が3人は入れるほどにまでなっていた。


外殻は、当初の4倍ほどの厚さになり、躯体(柱)で補強し、石のように固く強固にした。


もう足で蹴っても石を投げつけてもヒビすら入らない頑丈な物へとなった。


さて、カルルの飛空艇創りは、魔石創りと飛空艇創りは終わったが、魔石を飛空艇に組み込むという作業はまだだ。


森の中にあった飛空艇の残骸を思い出しながら何処に魔石を置けばよいのかを思い出す。


さらに魔石に魔力を流す"魔道回路"をどうやって創るのか。


やらなければならい事はまだまだ沢山残っていた。


次の日。


飛空艇の床に魔石を埋め込める穴をいくつか堀り、魔石をその穴へと埋め込んでいく。


そして左手に持つのは、母親愛用の攻撃魔法で使う魔法杖だ。


杖に埋め込まれたいくつもの魔石と魔石を繋ぐのが魔道回路と言われるもので、各魔石へ魔力を伝える働きをする。


魔法杖の魔道回路と言われる部分をカルルの左手の指でなぞり、右手は飛空艇の床下に埋め込まれた魔石と魔石の間に置いた。


カルルが魔力を込めると右手の指先が置かれた床が光り出し、細い線の様なものが現れ魔石と魔石を結ぶ。


床下に埋められた魔石は全部で7個。


中央に魔力の魔石が埋め込まれ、魔力の魔石を囲む様に浮遊の魔石と飛空の魔石を交互に埋め込んでいく。


これは、飛空艇助手をしていた父親から教えてもらった魔石の配置と同じだ。


床の中央に埋め込まれた魔力の魔石から放射状に魔道回路が伸び浮遊の魔石と飛空の魔石とを結んでいく。


試しに魔力の魔石に魔力を込めると・・・飛空艇もどきは、わずかだが地面から離れ宙に浮いた。


「やった・・・やった!浮いた!空を飛んだ!」


カルルが創った初めての飛空艇が空を飛んだ瞬間であった。


だが、飛空艇は、あっさりと地面へと落ちた。


魔石が床から外れて魔石だけ宙に浮いた状態になったのだ。


「そうか、魔石をただ床に埋め込んだだけだとダメなのか・・・」


カルルは、まだ父親との会話の中から何かヒントが無かったか思い出してみると。


固定魔法という言葉を思いだした。


「飛空艇の床に作った穴に魔石を埋め込むだけだと魔石は外れる。だから外れない様に固定するのか」


固定魔法は、魔法で作る"糊"のようなもの。


そんな理解をしたカルルは、さっそく試してみた。


土魔法で土壁を作って土壁同士を繋げる時は、土魔法で泥を作って繋げていた。


飛空艇の床と魔石が外れない様に接着・・・接着・・・接着。


見た目には、何も変わっていない様に見える。


床に埋め込まれた魔石を指でつまんでみると、全く外れる気配はない。


「できた!」


ただ、こんなに上手くいくものなのかという疑問もわく。


「これもあの日に現れた女神と名乗った女性の力なのかな?」


そんな疑問が脳裏をよぎるも飛空艇の完成に一歩近づいたカルルにとっては、どうでもよい話ではあった。


飛空艇試作1号艇という味気ない名前が付けられた飛空艇の誕生。いや、これは試作であってもれっきとした飛空艇である。


だが、実際に飛ぶためにはまだやらなければならない事がある。


カルルは、床下に埋め込まれた魔力の魔石に直接魔法を送り込むことで飛空艇を宙に浮かせた。


だが飛空艇は、外を見ながら操作するもの。


森の中にあった飛空艇の残骸もそういった形をしていた。


まずは、人が飛空艇を操作するために魔力の魔石を置くテーブルと人が腰かける椅子を置かなければならない。


テーブルに埋め込まれた魔力の魔石から床下の魔力の魔石まで魔道回路を繋げる必要もある。


さらに飛空艇を動かす時には、外が見える窓を付けないといけない。


それらをひとつずつ解決していく。


魔力の魔石を置くテーブルも椅子も土魔法で創り固く強固にしていく。


空を飛ぶ飛空艇のテーブルと椅子は、固定して移動できない様にしたが、床下の魔石を交換できる様に椅子とテーブルの配置にはかなり苦労した。


そしてテーブルの魔石と床下の魔力の魔石とを結ぶ魔道回路を作り始めたが、これが以外と手間のかかる作業となった。


テーブルに埋め込まれた魔力の魔石と床下に埋め込まれた魔力の魔石との間は以外と長く距離としては2mを超える。


そこに地道に魔道回路を創り込んでいく。


魔道回路は真っ直ぐに創ったつもりではあったが、後からよくよく見るとかなり曲がったりズレたたりしていた。


まあ、初めての飛空艇なのだから仕方がないと半分笑いながら自身の仕事に満足感を覚えるカルルであった。


椅子にゆっくりと座り、テーブルの上に埋め込まれた魔力の魔石に手を充て魔力を注ぐ。


すると飛空艇は、ゆっくりと宙に浮く。


だが、目の前には飛空艇の外殻があるだけで外の景色は全く見えない。


最後の難関は、外が見える窓作りであった。


次の日。


これが意外と難題であった。


土魔法で外殻を小さく削り取り、外が見える窓を作ってみた。


だがこのままだと雨が降ったら飛空艇内は、雨でずぶ濡れになるし風も入ってくる。


何か透明なガラスの様なもので窓を塞ぐ必要があるが、カルルの家の窓にはガラスは無い。


窓ガラスは高価な割に割れ易くお金がある家でしか使われない。


外が見える様な透明なものでそれなりに固いものが必要だ。


そんなものがカルルの周囲を見回してみてもある訳が・・・あった、魔石だ。


魔石は透明で固い。例え屑魔石であっても足で踏んでも割れたものを見たことがない。


「もし、屑魔石を平に作れたら窓ガラスに使える」


カルルは、屑魔石を左手で握り、右手は飛空艇の外殻を切り取った小さな窓に充てる。


すると歪ながらも窓を半分ほど覆う様に透明なガラスの様な物が形作られた。


だがまだ窓の半分は隙間ができている。


「窓ガラスを作るって以外と難しい」


そう思いながら何度目かの挑戦ののち、小さい窓を覆うほどの透明なガラスを作ることに成功した。


カルルは、これを魔石ガラスと名付けた。


魔石ガラスは、少し歪んでいて透明ではない所もあるが、外を見る事はできるし手の平で触ってみても魔石と同じで固く頑丈なのが分かる。


そして満足気なカルルの視界に入ったのは、扉の無い出入り口だ。


そう、カルルの飛空艇には扉は無い。


森の中にあった飛空艇の残骸にも扉は無かったが、何も無いと危ないと考え土魔法で扉を作り、家の扉を参考に蝶番や閂を土魔法で試作した。


初めての飛空艇創りは、以外と早く終わったが。これで飛空艇が完成した訳ではない。


これから飛空艇で低く飛んで操作を覚えながら何度も手直しをしていく事になる。


カルルの飛空艇創りを見ていたカルルの母親は、目に涙を浮かべて息子の成長に喜びカルルを抱きしめた。


この大陸に100年前に現れ数百の飛空艇を世に送り出した伝説の大錬金術師ゼスト。


その大錬金術師は、自身が創った飛空艇により引き起こされた多くの戦争を嘆きこの大陸から姿を消したのが100年前。


それから飛空艇は、徐々に数を減らし、今ではこの大陸で飛空艇を創れるものはいない。


そんな大陸の片隅で100年ぶりに現れた飛行艇が創れる錬金術師の誕生であった。




◆飛空艇の外殻や躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆魔石を創るスキル

・魔石錬成


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:1

 1000艇まで残り999


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