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No.003 魔石の価値

意図せず屑魔石を錬成したカルルは、その屑魔石の中にひとつだけ浮遊の魔石が混じっているのを発見した。


その魔石は、今は食卓の中央に置かれている。


買い出しに出かけた父親が戻ると早々に家族3人でテーブルを囲み家族会議が始まった。


「カルルが飛空艇を創るなんて言い出した時は、信じていなかったけど・・・」


母親は、信じられないという口ぶりでテーブルの中央に置かれた魔石を見つめる。


父親は、何度も鑑定の魔石でテーブルの中央に置かれた魔石の鑑定を行っている。


そして鑑定結果は毎回同じ。


「本当に浮遊の魔石だ」


カルルは、テーブルの中央に置かれた魔石を指で摘み魔力を込める。


すると魔石は、中に浮いたまま落ちることはない。


その光景を見て驚きの表情を浮かべるカルルの両親。


「宙に浮いたぞ」


「浮遊の魔石っていうだけあって本当に宙に浮くのね」


魔力が切れるとテーブルの上に落ちる浮遊の魔石。


今度は、父親が魔石に手を伸ばし魔力を込める。


すると魔力の魔石は、カルルがやった様に宙に浮く。


そんな光景が延々と繰り返されるボロ家の床には、カルルが魔力の鍛錬中に錬成してしまった屑魔石が壺の中に収められていた。


その数は300を超えていた。


しかもその中には、浮遊の魔石と同じ緑色の魔石が5個も入っていた。


父親が何かを思い出しながら静かに話し始める。


「もしこれが本物の浮遊の魔石だとする。冒険者ギルドの壁に張られている魔石の買取り表を覚えているか」


「ええ、多少の変動はあるけど、いつも買取り額の上位に浮遊魔石というのがあったわね」


「ああ、浮遊魔石・・・1個金貨100枚だったと記憶している」


父親は、カルルの目を見ると真面目な表情を浮かべこう切り出した。


「この魔石は、カルルが創ったものだからカルルのものだ」


「だが、それでもあえて言わせて欲しい。来週、街に行った時に換金してみようと思うがいいか?」


「換金するのは魔石1個だけだ。それ以上は換金しない」


父親の言葉に思わず絶句するカルル。それに対して何と答えればよいのか・・・。


この家での生活を考えるなら魔石を換金した方がいいとは思う。それは子供のカルルにも分かる。


だが、飛空艇を創り空を飛んでみたいという夢を考えると、魔石を換金してしまって本当によいのかためらいもある。


もし今後、魔石を錬成できなくなったらと変な考えもよぎるが、たった数個の魔石しか錬成できないのであれば飛空艇なんて夢のまた夢でしかない。


カルルは、そこで思い立った。


「換金するなら1個じゃなくこれも!」


そう言って手の平を両親の前に出した。


そこには、半透明の緑色の魔石とは違う半透明の青色の魔石があった。


「カルル、これは?」


「多分、飛空の魔石だと・・・思う」


「鑑定してもいいか?」


カルルは、父親に魔石を渡すとそっと手の平を引っ込める。その手は少しばかり自信なさげに震えている。


「鑑定、鑑定・・・と」


すると鑑定の魔石は、その半透明の青色の魔石を飛空の魔石と断定した。


カルルは、飛空艇に必要なふたつめの魔石を錬成に成功していたのだ。


・・・・・・


それから数日ののち、カルルの父親は、家から歩いて半日ほどの街へとやってきた。


背負った鞄の中には、カルルが錬成した魔石がたんまりと入っている。


これからいくつかの街で乗り合い馬車を乗り換えながら大きな街へと向かい、そこの冒険者ギルドで魔石を換金する予定でいる。


なぜ、いつも利用する街の冒険者ギルドではなく、遠い街の冒険者ギルドまで行くのかというと、超レア魔石を換金した事で冒険者ギルドから目を付けられないようにするためだ。


冒険者ギルドにも裏稼業というものが存在する。


おおっぴらに売られては困るアイテムを持ち込む者は、その存在を消されたり監禁されるという話は酒場では有名である。


カルルが錬成した魔石もそれに充るのかを懸念しての行動だ。


そして大きな街の冒険者者ギルドへとやってきたカルルの父親は、アイテムの換金を行うカウンターへ向かい、順番待ちの木札を受け取る。


いつも利用する街の冒険者ギルドとは、建物の大きさも職員の数も利用する冒険者の数も桁違いだ。


しばらく待つと木札の番号が呼ばれた。


衝立で仕切られたテーブへと向かうと、若い女性が対面に座っている。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなものを換金されますか?」


冒険者ギルドの受付嬢といえば、冒険者の仕事の斡旋や困り事の相談に乗ってくれる頼もしい存在なのだが、今日だけは敵対者という感じがしてならない。


カルルの父親が鞄の奥から袋を取り出し、その中から魔石をふたつテーブルの上に置く。


「この魔石を換金したい」


この様なやり取りは、毎日アイテムの換金を行っている受付嬢からすれば、ありふれた光景でしかない。


「お客様。では、鑑定を行いますのでお預かり証をお渡しします」


そう言うと簡単なメモ書きの様な紙切れをテーブルに残し、受付嬢は事務所の奥へと向かう。


「何事もなく換金できるとよいのだが・・・」


カルルの父親のそんな考えも空しく、事務所の奥から女性の悲鳴の様な声と数人がバタバタと走り回る音が聞こえる。


「まさか・・・騒ぎになっているのか」


落ち着きたいという気持ちはある。


だが初めて換金する魔石がどれくらいの価値があるのか不安の方が大きい。


「お客様。おっ、おまたせしました」


先ほどの受付嬢が戻ってきた。だがその態度は明らかに同様している。


さらに受付嬢の後ろには、いかにも役職者とおぼしき中年の男が立っている。


「私、アイテムの鑑定を行っております主任鑑定士のギルバートと申します。お客様に少々お尋ねしたいことがございます」


受付嬢と主任鑑定士は、そそくさと対面の椅子に座るとカルルの父親に小声で耳打ちした。


「あの魔石は、浮遊の魔石と飛空の魔石ですね。あれをいったい何処で入手されたのですか?」


「いえね、あの魔石を鑑定したら作成年度が今年だったんですよ。つまりあの魔石は『新品』です」


主任鑑定士の口は軽く次々と言葉が綴られるが、どうもその言葉にとげがある。


「浮遊の魔石と飛空の魔石は、飛空艇用の魔石じゃないですか。ごく限られた錬金術師が錬成できるとは聞いてはおりますがね」


「なんせ飛空艇は、王宮とか軍で使われるでしょう。だから出物が極端に少ないんですよ」


「それで、王宮や軍で使われる飛空艇の魔石をお持ちという事は、王族とか軍に関係される・・・方ではないですよね」


カルルの父親は、魔石の換金を依頼する時に冒険者だった頃に使っていた身分を示すタグと冒険者証を呈示している。


今は、冒険者の資格を凍結したままだが、元Aランク冒険者ともなるとそんな事もできてしまう。


「ご存じだと思いますが、殆どの飛空艇用の魔石は100年前に大錬金術師ゼストが作ったものです。つまり魔石も殆どが100年前に作られたものばかりで・・・その殆どの魔石が寿命を迎えておりまして」


そうか、この主任鑑定士は、魔石が盗品ではないかと疑っているとカルルの父親は判断した。


「それでですね、あの魔石を錬成した錬金術師のお名前を教えていただきたいと思いまして」


ため息をひとつ付いたところでカルルの父親は、こう切り出した。


「あの魔石が盗品だというなら他をあたる。魔石を返していただきたい」


その言葉を聞いた主任鑑定士は、慌てた素振りを見せる。


「いえいえ。めっそうもございません。あの魔石はこの金額で買わせていただきます」


そう言って主任鑑定士がカルルの父親に示した額は、金貨312枚。


「仮に、仮にですよ。あの魔石を錬成した錬金術師をご紹介していただけるのでしたら金貨400枚をご提示させていただきます。はい」


その言葉にカルルの父親の額から溢れんばかりの冷や汗が流れた。




◆飛空艇の外殻や躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆魔石を創るスキル

・魔石錬成


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆魔石を創るスキル

・魔石錬成


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:0

 1000艇まで残り1000


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