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No.017 埋もれた飛空戦艦

アリーア王国の内陸地域と海岸地域を隔てるグルズ山脈を越えると遠くに海が見える。


カルルは、最近この海を見てはいるもののやはり見る度に感動が湧き上がる。


さて、アリーシュ王国の国王となったエミル様から手渡された手紙を持ち、アリーシュ王国の王太子殿下の領地へとやって来たカルルとアリス。


ここには、数百年前に作られたという大型の飛空艇があり、アリーシュ王国の王太子殿下も幼少期に親善訪問をした際に見学したという。


カルルは、アリーア王国の王女殿下の屋敷の正門と思われる場所に飛空艇で降り立った。


いつもなら近くの森に飛空艇を隠し徒歩で街へと向かうのだが、今日はアリーシュ王国の国王陛下から渡された手紙があるので、正面から正々堂々と乗り込む事にした。


正門の前には、数人の警備兵が立ち周囲の警戒にあたっていて、庶民がおいそれと近づけない威厳を醸し出している。


そこに降り立つ1艇の飛空艇は、あきらかに異質だ。


いきなりの光景に思わず立ちすくむ兵士達。


そこに飛空艇内から現れた少年と少女。


「アリーシュ王国の国王陛下よりアリーシュ王国の王太子殿下フローラ様宛ての手紙です」


カルルは、そう言うとひとりの兵士に手紙を手渡す。


警備の兵は、飛空艇を見るのは初めてのようで、少し強張った表情を浮かべる。


「し、しばし待たれよ」


兵士は、手紙に施された蝋の封印に刻まれた紋章と、手紙に書かれた王国名と国王の署名を見ると慌てて屋敷の中へと走っていく。


やがて兵士が集まり出すと飛空艇の周りを囲みだした。


「これが空を飛ぶのか」


「俺も飛空艇は、初めて見た」


「けっこうでかいんだな」


そんな声が漏れ聞こえてくる中、カルルとアリスは手紙を持った兵士が慌てた様子で走って戻る姿を捉えた。


「はあ、はあ、はあ。王太子殿下がお会いになるとのこと。ご案内いたします」


息を荒げた兵士がカルル達を屋敷へと案内するという。


「飛空艇は、ここに置いたままでよろしいですか」


カルルの質問に少し考え込む兵士。


「我々が警備いたしますのでご安心ください」


そう言うとカルル達は、4人の兵士に連れられ屋敷の門をくぐる。


そして屋敷のとある部屋に通されてしばらく待つと、慌てた様子の若い女性が数人の従者を連れて現れた。


「お待たせしました。アリーア王国の王太子殿下・・・いえ、国王陛下よりの手紙を拝見いたしました」


カルルは、アリーア王国で自身が体験した話を始めた。


・・・・・・


「つまり、次期国王選定に際して現国王様は、国を守れる力のある人を次代の国王に選びたいという話ですか」


「そうです」


「それで飛空艇という訳ですね」


「はい。この国を守るためにはどれくらいの数の飛空艇が必要かは分かりませんが、まずはお父様・・・いえ、国王陛下を納得させるものを見せる必要があります」


「国王様を納得させる・・・ですか」


カルルも飛空艇を並べて見せるだけでこの国を守れるとは考えてはいない。


現国王陛下を納得させるためには、飛空艇以外の何かが必要であることは理解した。


「分かりました。では、飛空艇はお創りいたしますが・・・」


「対価ですね」


王太子殿下は、国防には金がかかる事を重々承知している。


それが飛空艇であれば尚更だ。


「はい。お譲りするのではなくそれなりの報酬はいただきたいと考えております。僕も慈善事業で王太子殿下に会いに来た訳ではないので」


そう言われると返す言葉に詰まる王女殿下。


しばしの沈黙の後、王女殿下からこんな提案が出された。


「でしたら、飛空戦艦を差し上げますからそれと交換というのはどうでしょうか」


「飛空戦艦?」


「はい。わが王国に古来より伝わる飛空戦艦です。今からご覧になりますか?」


王女殿下の言葉に思わず二つ返事で返すカルル。


「ただ、ちょっと問題があります」


王女殿下は、数名の護衛を引き連れて屋敷の敷地内にある庭の片隅へとカルル達を案内した。


「この地下に飛空戦艦はあります」


「それでなんですが、100年以上前の調査の時に飛空戦艦に取り付けてあった魔石を全て外して研究用に持っていってしまったそうです」


「その外した魔石は?」


「全て砕けて使い物にならなかったそうです。どうも飛空戦艦から魔石を取り外すと壊れる魔法がかけられていたようです」


「という事は・・・」


「はい、この飛空戦艦には、魔石はひとつもありません」


王女殿下がそんな話をしながら地下深くへと通じる階段を降りていく。


そして王女殿下の侍従達が大きな扉を開けると、そこには飛空艇とは思えない巨大な船体が横たわっていて、船体の全貌は全く見えない。


「あの、船体が土で埋まってますね」


「そうなんです。飛空戦艦の保管庫の壁が崩れて埋まってしまいました。ここから見えているのは、船体の3割程度です」


カルルは、飛空戦艦と呼ばれている巨大な船体へと近づくとその巨体にそっと触れる。


「かなり大きな飛空艇なんですね」


「内部の大きさからすると全長は、100mを越えています」


「でも魔石がひとつも無いから飛ぶことはできないという訳ですね」


「はい」


カルルは、考え込んでしまう。


全長が100mを超える巨体ともなれば、仮にカルルが錬成できる魔石を100個以上使ったとしても、宙に浮かせる事ができるだろうかと。


すると、以前にアリスに渡した飛空の腕輪で宙に浮くと、飛空戦艦の上へと舞い上がった。


「凄く大きいわね。こんなのが空を飛んだら皆驚くわ」


アリスは、飛空戦艦の船体の上へと降り立ち、しばし眺めるとまた飛空の腕輪で地上へと戻ってきた。


その光景を見たカルルは、もしかすると次期国王選定で現国王を納得させられるある事を思いついた。


「王女殿下。では、こうしませんか。僕は飛ぶ事ができる飛空艇を10艇創ります。その対価はこの飛べない飛空戦艦です」


しばしの間を置いてこう続ける。


「もし、王女殿下が次代の国王陛下となった暁には、王国軍にさらに20艇の飛空艇を創ります」


「次期国王ともなれば、予算を何とかできるでしょうから、20艇の飛空艇の代金を分割払いで支払っていただきます。どうでしょうか」


「そして現国王陛下を納得させる秘策を思いつきました」


そういうとカルルは、王女殿下に耳打ちをする。


「えっ、すっ、凄い。それならお父様、いえ、国王陛下も納得していただけると思います」


「では、まずは飛空艇を10艇、そのあとに魔道具を80個作ります、そのあとに飛空戦艦の調査に入ります」


アリスの行動がカルルの秘策へと繋がり、それは王太子殿下も了承した。


その日からカルルの飛空艇創りが始まった。次期国王の選定まであと3ヶ月の出来事であった。


・・・・・・


カルルの飛空艇創りは、王女殿下の屋敷に隣接する兵舎の倉庫内で行われた。


飛空艇と飛空艇に使われる魔石創りは、順調に進み40日程で完成した。


次は、次期国王選定で現国王陛下を納得させる秘策となる魔道具作りだ。


こちらは、目標数が80個と多いため1日4個を作っても20日程を要する。


アリスはというと、王女殿下の兵士達に飛空艇の操術を教えている。


アリスは、カルルの飛空艇に乗って操術を覚えてからまだ10日も経っていないが、それでもかなりの上達ぶりを見せている。


王太子殿下を守る兵士達は、誰も飛空艇など操った経験はない。


そのため、まずは魔力量の多い兵士を集めてアリスが操術を教える。


操術を覚えた兵士が別の兵士を教えるという具合に少ない人数で教育を施す事となった。


アリスの教え方は、兵士達からは評判となり"教官"と呼ばれている。


カルルが作った魔道具も数が揃い始めた頃から使い方の訓練が始まった。


兵士達が腕に魔道具を装備して腕輪に魔力を込めると驚きの声が上がる。


それは戦場での革新的な戦術として指揮官達の目に映った。


「これを部隊で運用できれば、革新的な戦術になります。国王陛下もきっとお喜びになるでしょう」


「こんな魔道具を作る発想は、やはり飛空艇から来ているという事ですか」


カルルが作った魔道具は、指揮官達に好評であった。


そして飛空艇創りと魔道具作りが終わり、いよいよカルルは飛空戦艦の調査へと入る。


次期国王選定の日まで残り30日となっていた。


・・・・・・


飛空戦艦の入り口のひとつは、船体の下に人ひとりが入れるくらいの小さいものがあるだけだ。


他にも入り口はありそうだが、保管庫の壁が崩れて土砂で埋まってしまい使えない。


船体内の灯りは魔石を取り出したために全く使えず真っ暗だ。


仕方なくカルルは、魔石ガラスと魔力の魔石で簡易照明をいくつか作り、それを飛空戦艦のあちこちに取り付けた。


船体内の通路を進み、いくつかの階段を上るとそこそこ大きな部屋へと出た。


「ここが飛空戦艦を操る操術室です」


飛空戦艦の管理を任されているという王太子殿下の侍従のひとりが案内してくれなければ、ここにはたどり着けなかったとカルルは思った。


そこは、カルルの飛空艇の2階にある操術室と比べるまでもないほど広く、複数の魔石が埋め込まれていたと思われる小さな窪みがいくつもある操術卓が並んでいる。


「恐らくこの小さなくぼみに魔石が埋め込まれていたんでしょうね」


カルルが操術卓の裏側を覗き込みあるものを探し始める。


「ありました。魔道回路です。でもところどころ切れてますね。これだと作り直した方が早いかな」


そういいながら魔道回路が何処に繋がっているかを調べていく。


飛空戦艦の調査は、まずは魔道回路の系統を調べて何処に魔石を配置すればよいのかを調べるという地道な作業から始まった。




◆飛空艇の外殻や躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆魔石を創るスキル

・魔石錬成


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:43

 1000艇まで残り957


◆創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇

 ・飛空艇試作三号艇


 王国向け飛空艇

 ・アリーア王国け飛空艇 30艇

 ・アリーシュ王国向け飛空艇 10艇


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