第1話 報告書。
「何も収穫なしか…。」
アーダとアメリ―の報告書を読んで、思わずため息が出る。
何か引っかかるかと思ったが、二人の報告書には、ドーリス侯爵は娘をモーリッツ公爵家に嫁に出す気はなさそうだ、とある。1か月仕事をさせたから、何か動きがあればそろそろあってもおかしくない。アメリーはともかく…アーダが虚偽報告するのは考えにくい。先王まで動かして、縁談を勧めたのに…あの女。
さて。次の手を、打ちましょうかね。
王城には火種を持ち込んである。今頃は、現王が側妃を取る話で盛り上がっているだろう。可哀そうなイングリット。
休日明けの3人を呼ぶ。
お掃除メイドのアーダ。こげ茶のおかっぱ眼鏡。瞳は緑。
キッチンメイドのアメリ―。はちみつ色のおさげ。瞳は薄いブルー。
洗濯メイドのアリーナ。明るい茶色のお団子ヘアー。瞳も明るい茶色。
「今回の派遣先は、王城です。王妃の侍女が具合が悪くて休んでいるので、信用のおけるものを、と希望がありまして。侍女でアーダ。」
「はい。」
「アメリーは王妃付きのキッチンメイドで。」
「はい。」
「アリーナはいつも通りね。」
「はい。」
「この協会の基本理念は?」
「はい。生きて無事に帰ってくること。たんまり稼いでくること。です。」
「はい。良く出来ました。では、よろしく。」
「あ、アーダ、これをイングリット様に届けてくれる?いつもお贈りしているお茶なの。そろそろなくなるころだから。」
「はい。お預かりいたします。」