19話 自然と一体化の魔力訓練
やはり、会話なしでは思うようにいかない。
三人で全く別の事をしている。
エンジェリアは、結界を探そうと森の奥へ向かう。
フィルからの連絡によると、ゼーシェリオンは、結界の中心であろう研究所へ向かっている。
イールグからの連絡によると、クルカムは、上から探そうとしている。
「……」
「まぁ、初めはこうなるだろうね。誰に合わせるか決めてすらいないから」
「みゅ? 」
「何かあった時に何も言わずにするためにも、何かあった時のために、誰に合わせるかくらい決めておかないとばらばらに動くだけだよ。こんなふうに」
「ぷにゅぅ……なら、一緒に……でも……誰かが見つければ良いの。エレは遊んでよっと」
一度ばらけてしまえば、再び合流して探すという選択肢はエンジェリアの中では消えている。
エンジェリアが探せなくとも、ゼーシェリオンやクルカムが見つけてくれるだろう。
「エレは自然と一体化するの」
エンジェリアが魔法を使うために初めに習った事、それが自然を感じる事。詳しくいえば、自然に宿る魔力を感じる事だが、エンジェリアは、それを自然と一体化した気になる事で成功させた。
森は植物達の居場所。自然に満ち溢れている。こういった場所は、人工物ばかりの場所よりも自然の魔力が漂いやすい。
エンジェリアは、自然と一体化したかのような感覚を味わう。
「これなの……ふにゅぅ。なんだかお疲れ様もとれていくように感じるの」
「エレには自然の魔力で癒しの効果もあるのかもしれないね。それより、それで……まぁ、気づいてないならいっか」
「みゅ? 」
フォルが言おうとしたのは、結界の出口探しの重要なヒントだろう。エンジェリアがこれをやっている事でフォルが言おうとした。
この自然と一体化している状態が関係あるのだろう。
エンジェリアは、この状態だからこそできる事を考える。
「ふにゅ。この状態でできる事といえば、自然の魔力動きを頼りに探す事なの……むにゅ」
「やってみなよ。失敗しても大丈夫だから」
「ふにゅ。それは分かってるの。フォルがいてくれるからなんとかなるって。そうじゃなくて、自然と一体化は自然と同じで動くと分かんなくなっちゃうの。だから動かずにどうやって探そうかなって」
植物は自分から歩くような事はない。エンジェリアも植物と一体化中は植物と同じように動く事ができない。だが、動かなければ結界の出口を探す事はできない。
エンジェリアは、植物が風に吹かれた時のようにゆらゆらと揺れながら考える。
「……普通に魔力を視るだけで良いでしょ。自然と一体化になっている時にどの方向に流れているか感じ取って、あとは魔力を視る。それでできると思うよ」
「ふにゅ。やってみるの」
エンジェリアは、自然と一体化してどの方向へ魔力が流れているか感じ取る。魔力の流れは風のように外へ繋がる場所へ流れる。
「分かったの。あとは行くだけなの」
「エレ、定期的にやりなよ。ゼロだったら大丈夫だろうけど、君は迷いやすいから」
「ふにゅ」
エンジェリアは、魔力の流れを感じ取った南へ進む。
**********
途中何度か確認を挟みながら、結界の出口らしき場所へ辿り着いた。
エンジェリアは、これが本物か確認するため、落ちていた木の枝を拾い、出口らしき場所へ放り投げた。
「……違うの」
放り投げた木の枝が結界の中で止まる。ここへ入っていたら、この木の枝のようになっていたのだろう。
「確認は大事」
「うん。大事だよ。無防備に中に入っていれば、出てこれなくなっていただろうね」
「フォルなら助けてくれるの。でも、なんだかやなの。あの中に入るの」
「助けられはするけど、いやなのをなくす事はできないかな。エレ、もう一度やってみる? 方法自体は悪くないんだ。今回は偶然ハズレを引いただけで」
エンジェリアは、再び自然と一体化した。
こことは別の場所から魔力が流れている。
「他の場所発見なの。今度こそ正解だと良いの」
「うん。そうだね」
「……ねぇ、フォルは、どうしてみんなと別行動にしたの? エレだけフォルと二人なの」
ゼーシェリオンとクルカムは、フュリーナ達が二手に分かれてついて行っている。だが、フォルの希望でエンジェリアとフォルだけは二人っきり。
今までずっと会えなかった分、会えた今、できるだけ長い時間を共にしたいのではと疑問に思っていた。
「君と二人の方が楽だから。許してくれる……そもそも気にしてなんていなかったって分かっても、自分の中で納得できるかは別だよ」
「……フォルは、どうして欲しかった? 」
「……怒ってほしかった。許さないでほしかった。でも、離れたくはない。なんなんだろうね」
「みゅ? 」
フュリーナ達に対する言葉だろう。だが、どこか遠くを見ているように見える。
「……なんでもない。次の場所を見つけたんなら早く行ってみようよ」
「ふにゅ」
「……エレ、君は、何も思い出さないで」
小声で言った言葉だが、エンジェリアには聞こえていた。なぜそう言うのか。エンジェリアにとって不都合な過去といえば、崩壊の書に載っているような世界を滅ぼした記憶だろう。
その記憶をフォルはエンジェリアに思い出して欲しくないのかもしれない。エンジェリアは、深く考える事はなかった。
**********
次の場所は正解だろうか。エンジェリアは、木の枝が落ちていないか探したが、一本も落ちていない。
何かいらないものでも持っていないか、収納魔法を探す。
「これで良いの」
エンジェリアは、アトラクションで手に入れていた爆弾を投げた。
爆弾は結界を貫通した。そう見えたが、目の前に転がっている。
結界の外には出ていない。
「鏡なの。爆弾が二つ」
これも出口ではない。鏡のように反射しているだけだ。
「ふにゅぅ。なんでこんなにいっぱいあるんだろう。出口じゃないのに、流れがおかしいの」
「どうしてだろうね。そこに答えがあるんじゃない? 」
「みゅぅ……流れがおかしい……いっぱい流れる……ふにゅ? 逆かもしれないの。いっぱい流れる時は流れない方が正しいかもって教わったの」
これも魔法学に関する事。エンジェリアは、魔法学の内容として覚えていた。
エンジェリアは、再び自然と一体化する。一つの流れではなく、全ての流れを感じ取る。
その中で、流れがない方角を探す。四方八方から流れているため、探すのはかなり困難な事だが、わずかな隙間を見つけるのは、昔からやっている事だ。
「ふにゅ。こっちなの」
一箇所だけ明らかに怪しい場所を見つけた。そこだけは無のような状態。風も魔力の流れない。何もないかのような方角を見つけた。
エンジェリアは、今度こそという想いでその場所へ向かった。
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今度は正解のようだ。エンジェリアは、あらかじめ用意しておいた木の枝を投げると、結界の外へ出て行った。
動くものも念の為投げた方が確実だろうと、エンジェリアが昔遊びで作ったおもちゃを投げた。
おもちゃは、結界の外で正常に動いている。この場所が出口で間違いなさそうだ。
「ゼロとクームに連絡なの。それにしても、結界の出口がこんな場所だったなんて……ゼロは近くにいたはずなんだけど」
結界の出口は、研究所の中にあった。エンジェリアとゼーシェリオンが一緒にいた真っ白い部屋。その部屋の中にゲートがあり、そこが出口のようだ。
「……エレ達、昔ここでフォルに助けてもらったの。お仕事だったとしても、とっても嬉しかった。ここは、きらいな場所だけど、すきな場所」
エンジェリアとゼーシェリオンは、ここで実験を行われていた。思い出したくもない事も多い。だが、その最後だけは、本当に救いだった。
フォルが研究所を壊滅させ、エンジェリアとゼーシェリオンを連れ出してくれた。それは、エンジェリアの忘れたくない思い出。




