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星月の蝶(修正版)  作者: 碧猫
4章 管理者見習い
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18話 ギュゼル


 思い出話に花を咲かせていると、突然テンデューゼに向かって短剣が飛んできた。


 テンデューゼが避けて、短剣は木に刺さった。


 エンジェリアは、木に刺さった短剣を見る。そこには、神獣の紋章が描かれている。しかも、珍しい黄金蝶の紋章。


「相変わらず熱烈な歓迎な事で」


「今すぐにでもギュゼルの仕事を回しても大丈夫なのか、確かめてあげないとだからな。もう少し確かめてからの方が良いとは思うが、やりすぎると気づかれるからこのくらいにしておく」


 エンジェリアは、声の方へ走っていき、飛びついた。


「フォル、フォル、だいすき。だいすきすぎるの。らぶなの。とってもらぶなの。エレをらぶするの」


「エレ、気を遣わなくて良いよ。ちゃんと向き合うんだって決めたんだ」


 声の主は、フォルの真似をしたフィル。フィルと一緒にフォルが来ている事に気づき飛びつきに行った。


 エンジェリアは、フォルの胸に顔を擦り寄せる。


「にしても、真似が上達してんな。フィル」


「仕事でフォルの真似をする事があったから。またある時のためにもさらに磨きをかけた」


「それを披露するためだけってわけじゃないな」


 フィルがフォルの真似をしていたのは、フォルのためだろう。


「……ごめん、あの時」


「……」


 フォルが俯いている。エンジェリアは、ゼーシェリオンの元へ戻り、共有で会話をする。


 ――ゼロ、前のをできる? ギュリエンで別れたんだから、ギュリエンで再会させるの。それに……エレなら、少しでもお話しやすくできるの。フィルの努力を無駄にしないの。


 ――ああ。分かった。協力する。


「……エレ様、これを使ってください。師匠からもらったもので、僕にはまだ使いこなせないんです」


「ありがと」


 エンジェリアは、クルカムから魔法杖を借りた。持ちやすく、美しい魔法杖に、エクルーカムの愛を感じる。


「今回は、エレのじゃないけど、もう思いついてるの。ゼロ、お願い」


「ああ」


 エンジェリアは、魔法杖を左手に持ち、右手を胸に当てた。


「消えない後悔。消せない過去。ずっとそれに囚われていた。

「迷って良いの」僕とおんなじ、世界に囚われた子。その言葉が、救いになった。

 いつだって


 許してなんて言わない。でも、会いたいんだ。だからずっと探し続けるよ。償い続けるよ。

 ちゃんと思い出すよ。もう、忘れたいなんて思わない。僕は、自分の犯した罪と向き合って生きるから。


 奪われた時間。消せない傷。ずっとそれで良いと思っていた。

「一緒に償う」聖なる星を守る、聖なる月の子。その言葉が、未来を見せた。

 ありがと


 許されなくて良いんだ。そう、思えるんだよ。だけど時々泣いても良い?弱くても良い?

 ほんとは強くないんだ。でも、そうしないといけなかったから。僕は、誰にも弱さを見せてはいけないんだ。


 枯れていく。世界が、何もかも。どうして僕は……

 差し伸べられた、氷の華と純粋な音

 僕の、愛おしい光の華音


 やっと会えたね。ずっと、待っていたんだよ?

 

 許してくれてありがと。また、一緒にいて?ずっと、ずっと、言いたかったんだ。ごめんって。

 今度は間違えないよ。もう、後悔なんてしたくないから。僕は、自分の役割を受け入れて生きるから」


 歌と共に、メロディーズワールドを発動させる。景色が変わり、かつてのギュリエンの地となる。


 エンジェリア達がいた、都から離れた双子宮。エンジェリアがゼーシェリオンと協力して育てた花畑。


「これは……そうだったんですね」


「……ごめん。あの時、守れなくて。一緒にいる事ができなくて。許してくれなくて良いよ。あのせいで、こんな事にまでなっているんだから。恨んでくれて良い。でも、これからもずっと笑っていてほしい。その場所がどこでも良いから」


 フォルの瞳から涙は流れている。


「……だめですか? その場所を、フォル様と一緒の場所にしては」


「そうですね。その場所は、昔のようにギュゼルでなければ意味がありません。そうでなければ、これまで神獣達から逃れていた理由が消えます」


「……謝罪なんていらない」


「そうですわ。フォル様がいなければつまらないですわ」


「そういうこった。俺達は全員あれをフォルのせいなんざ思っととらん。エレ、フォルが話やすくしてくれて感謝だ」


 エンジェリアは、こくりと頷いた。


「……うん。ありがと。ルー、せっかくだから、試験をしようよ。ここからどう出るか。エレ達に任せてみない? 」


 フォルが涙を拭き笑顔を見せた。


 エンジェリアは、ゼーシェリオンと互いを見つめ合う。


「きっとエレに任せるの」


「きっとゼロに任せるんだ」


「ふにゅ。クームこれありがと」


 エンジェリアは、クルカムに魔法杖を返した。


「ついでに、これの使い方分かったよ。クームが使えない理由も」


「そうなんですか? さすがはエレ姉様です……あっ……今はというか、昔もエレ様は同い年なのに」


「……使い方。これ、鍵がかけられているから開けないとなの。いつかクームがこれを使いこなせるようになった時のために……これは自分で知るべきなの。媒介としてなら簡単に使えるの」


 エンジェリアは、媒介として使っていただけで鍵を開けたわけではない。鍵はクルカム以外には開ける事のできない仕掛けだ。


「鍵……そういえば……こうでしょうか……できました」


 【どんな道を選ぼうと応援する。成長を心から祝おう】


「……はい。師匠」


 クルカムが、瞳に涙を溜めて魔法杖を抱きしめた。


「……クーム、エクーに報告するためにもここから出ないと」


 エンジェリアは、クルカムの腕を引っ張る。


「はい。ですが、エレ様は何もしないでください。また迷子になりかけます」


「クームが意地悪なの。なら、クームが出口探すの。エレはついていくだけだから」


「俺も俺もー」


 エンジェリア達は仲良くで口を探す。まずは出口に関して情報集め。情報集めは管理者として基本だ。今回は、フォル達にヒントをもらう。


「フォル、ヒントちょぉだい」


「管理者として協力は大事。ほとんど仕事で関わらなくとも、定期的に交流会を開き交流する。君らはそれを見せてくれているから、それ相応のヒントをあげる。出口は結界の割れ目。どこかは言わないけど」


 自分達で探そうとしても、ここは広すぎる。他にもヒントがほしい。


「……フィル、ヒント」


「結界は円。おれからはこれだけ。ヒント条件は、互いの得意不得意を理解している事。少しずつ理解しつつあるからこのくらいのヒント」


 ヒントは条件があるようだ。条件さえクリアしていれば、イールグからも聞けそうだ。


「……イールグ様、ヒントを頂戴してもよろしいですか? 」


「結界は壁状。外に出ようとすると見えない壁にぶつかる。条件は、知る事。互いに知らない事を教え合う。自分一人では知らない事は多い。それを補う事。管理者は互いを知り協力する事が大事だ。ペアを良く知る事で、相談なしに行動する」


「そうだね。今の管理者達も、ああ見えてそれだけはできるんだ。何かあった時、言葉を使う事ができないかもしれない。そんな時間がないかもしれない。そういう時、相方を信じて、相方ならどうするか。なら自分はこうすれば良い。それを瞬時に見極める事。判断する事」


 エンジェリア達はまだそこまでできていない。フォルが何も考えず、同時に見習い試験などするはずがない。管理者の仕事をこの三人でやらせるつもりなんだろう。

 もしくは、現在の試験管と試験者のペア。


 それは状況によって変えるのだろう。


「……ちょっとやってみるの。ゼロ、クーム。今からどうするって会話禁止なの」


「あっ、ちなみにこれはそういう訓練をしておくだけで、実際に使う場面は少ないだろうから、こんなとこでやらなくても」


「実験なの」


「そうですね。やってみましょう」


「ああ」


 エンジェリア達は、結界から出るのに関係のある会話を禁止縛りで、出口を探す事にした。

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