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星月の蝶(修正版)  作者: 碧猫
4章 管理者見習い
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10話 求めていた情報


 禁止指定魔法の取り締まりの依頼を受けたフォルは、詳しい話を聞くため、ルーツエングに会っていた。


「今回の仕事は少々厄介な事になる。うまくいけば、ノーズとヴィジェの居場所への切符を手に入れられるが」


「神獣が関わっているって事で良いんだね? 」


「そうだ。蛇氷種が禁止指定魔法を使っている輩を匿っているという情報を得たが、どうやら、その種も禁止指定魔法を使っているらしい。人数は五人。手伝うか? 」


 禁止指定魔法に対しての取り締まりに関して、偽の愛姫の元にいる神獣達も手を出す事はない。手だけではなく口すら出さない。出してはならないという決まりがある。


 だが、ここまで表立って動いている今、その決まりを守らないかもしれない。その一点だけが気がかりだ。


「良いよ。一人の方がやりやすい。それより、偽の愛姫に心酔している輩がこれで変な動きしないかなんだけど」


「しないだろう。禁止指定魔法に関して口を出す事はしてはならないという決まりに背けば、神獣の……全種族の安全規定に反する事になる。それで大問題になれば損をするのは向こうだ」


「それはそうだけど……うん。そうだね。明日の朝までには片付けたいから、そろそろ行くよ。終わったら報告する」


 エンジェリアとゼーシェリオンのためにもできるだけ早く終わらせたい。フォルは、転移魔法を使い、目撃情報のあった場所へ向かった。


      **********


 目撃情報のあった場所は、偶然にもシュリュフェズだ。


 エンジェリアとゼーシェリオンの存在を知られていないのか、狙われていないのが幸いだろう。


 ――エルグにぃ様の話だとここにいるみたいだけど……一応つけておくか。


 管理者の仕事の際につける黒いベールをかぶる。自分達が神獣の一組織である事の証明でもあるが、これには、認識操作魔法がかかっている。


 蛇氷種の儀式殿に瓜二つの建造物。ここに神獣がいるから近づくなとでも言っているのだろう。


 フォルは、追加情報がないか確認したあと、建造物の中に入った。


      **********


 蛇氷種と思われる神獣五人と魔族と思われる男一人。ルーツエングの情報にあった通りだ。


「ここが神獣の地と知って足を踏み入れるんか」


「……神獣であろうと、禁止指定魔法の使用は重罪だ。主様の命により、禁止指定魔法使用者に禁止指定魔法の記憶削除と悪夢の罰を与える」


 これは仕事だ。感情のない声色で、淡々とそう言った。


「クックック、その虚勢がいつまで持つか。管理者と言えど、禁止指定魔法を知らぬ。最強の魔法を手にした我々に敵うわけない。手も足も出ないまま、苦痛の悲鳴を上げるのが目に見えている」


 禁止指定魔法については、メッセージで仕事の連絡を受けた際に書かれていた。


 限りなく正確な未来を視る。全ての攻撃を無効化する。情報ではその二つだ。


 厄介なのは間違いないが、決して破る事のできない魔法ではない。


 という以前に、禁止指定魔法の効果など考えなくとも良い。


「……ぴゅにゅ」


 収納魔法からリプセグに預かっていてもらった剣を取り出した。


 かつては精霊の王の証として用いていた剣。


 剣を地面に突き刺す。


「クックック、何の真似だ? 管理者でも命欲しさに屈するのか。だが残念だ。やれ」


 リーダーらしき蛇氷種の神獣以外が一斉に襲いかかろうとする。だが、誰一人として動いていない。


「何をやっている」


「無駄だ。君の仲間はもう君を助けない。少し話をしようか? 答え次第で、禁止指定魔法を使わない条件つきにはなるが、見逃してあげる」


「……助けなどいらん。おれ一人で十分だ」


「……蛇氷種の中に、神獣達の行為に疑問を抱き、隠れている者がいる。それが君らだろう? 逃げるためにも危険な禁止指定魔法に手を出す他なかった。違う? 」


 フォルがここへくる直前に確認した追加情報。そこに書かれていた事だ。


「……」


「大丈夫だ。僕は君らの敵じゃない。それに、この会話は誰にも聞かれない。話次第では見逃すだけでなく、本家で君らを保護する。本家は、あの神獣達とは別だ」


 警戒心を解く事。それをしなければ話は聞けないだろう。


 フォルは、ベールを取り、素顔を見せた。


「……っ⁉︎ なぜ、管理者に……いや、管理者だから、ですか」


「そうだね。管理者という場所は良い隠れ蓑になっている。主様、ううん。エルグにぃ様が厄介と言っていた理由が理解できたよ。久しぶり、キプス」


 ベールを持つ手が震える。禁止指定魔法取り締まりという仕事の程が消えたからだろう。


「久しぶり、本当に久しぶりです。ご無事で何よりです。フォル様」


「……ごめん。こんな場所にいさせてしまって。ずっと、疑問を持ったまま、あの連中に従わせて」


「全ては攻め入ってきたあの輩が原因です。我々も、きっとあの方々も……ギュシェルの全員が、貴方様を責めてなどおりません。むしろ、感謝しております。全ての情報を消してくださったおかげで、ギュシェルである事にバレずに生きられたのですから」


 ギュリエンにいた神獣達は、フォルを恨んでいるだろう。許す事などないだろう。そんな事を考えていたが、実際に会ってそれを否定された。


 それだけで、心が軽くなる。自分を許そうとする。だが、それを自分で否定する。


「……」


「話をしたいんでしょう? なんでも答えます」


「……あ、ああ。ノーズとヴィジェ……かつて本物の御巫に一番近いと言われた双子の御巫の居場所を知りたいんだ」


「儀式殿です。あそこの扉は、特殊な空間でして、我々がいなければ場所は分からないでしょう。あの時は、開いていたので行けただけで、本来は行く事などできません」


 エンジェリアとゼーシェリオンが儀式殿の場所を知る事はできたとしても、その扉の場所は知る事ができないだろう。


「ここにその扉があるんだね? 」


「はい。その通りです。明日、無事にバレずにいられたら、扉を開きます」


 禁止指定魔法を使ったという情報で、場所を知られてしまっている可能性がある。その対策をしておく必要があるだろう。


 フォルは、幻覚魔法と結界魔法をかけた。


「これでしばらくは大丈夫だよ。この間にエルグにぃ様に保護を頼んでおくよ」


「ありがとうございます。そういえば、リーグ達の事ですが、神獣達が探しているそうです。前に一度会って、その時、フォル様に無事という事を知らせたいとおっしゃってました」


「えっ……そうか……ありがと。伝えてくれて。良かった。よか、った」


 今までどれだけ探しても目撃情報すら見つからなかった。だが、ようやく無事という事だけだが、知る事ができた。


 涙が溢れる。だが、今泣いてばかりではいられない。喜びを隠し、涙を拭く。


「……みんな時期に目を覚ますよ。ただの睡眠魔法だから、今頃良い夢でも見てるんじゃないかな。これ、良かったら使って。毛布と衣類、それにエレ特製栄養ドリンク」


「双子姫様もご無事でしたか。ありがとうございます。やっと、解放される。みなにも伝えておきます。フォル様がご無事でしたと」


「うん」


 フォルは連絡魔法具を取り出し、ルーツエングに連絡した。


『どうした? 』


「保護を頼みたいんだ」


『いつでも迎え入れられる。本家の場所は知っているだろうから、来てくれるか? 』


「ええ。フォル様達に扉を開き次第、そちらへ向かいます」


『分かった。もう遅い。今日はゆっくり休め。こっちへ来た後、色々と話を聞かないといけないから、しばらく休めないだろう』


 ルーツエングは、今まで何があったのか、禁止指定魔法に手を出した経緯を聞かなければならない。それがルーツエングの仕事だ。


「ええ。ありがとうございます。おやすみなさいませ」


『おやすみ』


 通話を切り、連絡魔法具をしまう。


「もう少し話していたいけど、エレとゼロが起きる前に帰ってこないといじけるんだ。だからまたあし……日付変わってるよ。またあとで」


「ええ。待っております」


 フォルは転移魔法で、別荘へ帰った。


      **********


「これは……ゼムかな」


「正解」


「出迎えありがと、フィル」


 フィル以外は寝ている。フィルは、フォルが帰ってくるのをずっと待っていたのだろう。


「お疲れ。ずいぶん乱れてたけど何かあった? 」


「うん。みんなに会った話を聞けたんだ。僕に無事を伝えたいって言ってたんだって……あんな事あったのに、まだ、僕を」


「誰も見てない。おれには隠さないで良い」


「うん。早く会って、謝りたいよ。また、一緒にいたいって言いたいよ」


 フォルはフィルに抱きついて泣き出した。フィルの前だからだろう。涙が止まらない。


「でも、会って、何話せば良いか分かんないよ。会うのが怖いよ」


「うん」


「みんな、昔みたいに笑ってくれるかな? もし、もう笑ってくれなかったら……」


「うん。不安だよな。大丈夫、大丈夫だ。また昔みたいにいられる」


 フィルは、フォルが泣き止むまでずっと、一緒に起きてフォルの話を聞いてくれていた。


 いつもはこんな事はないが、相手がフィルだからだろう。泣いた後、泣き疲れたかのようにフィルに抱きついたまま眠った。


「……おれがついてるから大丈夫だ」

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