9話 行き方
エンジェリアとゼーシェリオンは、二人でノーズとヴィジェの捜索の手がかりを探すため話し合いを始める。
すぐに占い術を使い、居場所を特定しても良かったが、占い術は、成功するか分からない。成功したとしても、エンジェリアにその記憶はない。
ゼーシェリオンに頼めば良いが、的確な居場所を言うとは限らないため、使うとしても、ある程度居場所を絞っておく必要がある。
「まずは、エレ達がどうしていたかなの。エレ達はあの時、世界の異変を探るために、一生懸命魔力を辿りながら歩いていたの。その時に見た景色を覚えていれば、何か分かるかもしれない」
エンジェリアは、魔力を辿っていた時に見た景色を思い出す。
綺麗な植物が生い茂る場所。薄暗いジメジメとした湿地帯。色とりどりの蝶が存在する場所。
エンジェリアの記憶では、その景色が強く残っている。
「ゼロはどんな景色を覚えているの? 」
「薄い青色の儀式殿。あの時は神殿だと思ってたが、あれは儀式殿だな。神獣が使うと言われる儀式に使う場所だ」
「ふにゅふにゅ。儀式に使う場所……あの魔法陣も何かの儀式だった? でも、あんな魔法陣出儀式なんてあるのかな? 」
儀式殿にある魔法陣なのだから儀式に用いるための魔法陣。その可能性もなくはないだろう。
だが、その魔法陣が儀式に使うのであれば、何かしらの意味があるはずだ。エンジェリアの記憶の中では、それを感じ取れていない。
「魔法の知識はあるけど、分かんないの」
「そうだな……それに、他の場所なら調べればなんとかなるかもしれねぇが、神獣関連の場所となると、調べても何も出ない可能性が高い。景色の方を調べるか? 」
「神獣関連の場所なら、特殊な条件でのみ行ける場所とかもあるかもしれないの。景色の場所を調べたとしても、見つからないかもしれない」
エンジェリアは、魔法機械を取り出し、神獣関連の施設を調べる。だが、予想通り何も出てこない。
「……こうなったら、管理者の……でも、それでも出てこないかも」
「それこそ占い術に頼るしかねぇだろ」
「どこの儀式殿だ? もしかしたら知っているかもしれない」
「おれも。ある程度の施設は知ってるから」
神獣の事は同じ神獣に聞くべきとでもいう事だろう。
エンジェリアとゼーシェリオンは、互いの顔を見合わせた。
「……分かる? 」
「分からない」
イールグとフィルが協力的なのはありがたいが、エンジェリア達には、ある問題があった。
神獣にも様々な種がある。その種が分からない限りは、場所を特定するのは難しいだろう。
「……氷の蛇さんって事は覚えてるの。どの種か分かんないの」
「それだけ聞ければ十分だ。蛇氷種……だが、あの紋章のある儀式殿ならいくつか知ってるが、あの世界にあるものではなかったはずだ」
「御巫候補を消すためにあそこへ現したと考えるのが良いと思う。その場に止まらないのがあの種の特徴だから」
「そうだな……蛇氷種の巨大魔法陣が使える儀式殿……フィル、あそこの可能性がないか? 洗脳施設に使われていたあの儀式殿だ」
神獣の施設のほとんどは、建設当初に想定されていた使い方をされていない事がほとんどだ。
別の事に使われていても珍しい事ではないが、洗脳という用途で使われていたのは珍しい事だろう。
「あそこなら、簡単に行ける。散歩も途中で道が開く事もあるくらいな」
「お散歩すれば良いの? 」
「そうだ。この時期なら、ローシャリナあたりに扉が開くはずだ。ローシャリナの王宮地下。今回の出現地はそのあたりだろう」
ローシャリナの地下。エンジェリアが行きたくない場所だが、ノーズとヴィジェのためだ。行かないという選択肢はない。
「エレには辛いだろう。別の場所を探そうか? 」
「ううん。探さなくて良いの。ゼロも一緒にいてくれるって約束したから。もう、あんな真似はしないって。だから、エレの事は気にしないで。ゼロはとっても反省してるの。理解してるの。エレ達が運命共同体なんだって」
エンジェリアは、そう言ってゼーシェリオンの手を握った。
「ああ。そうだな」
「という事で、明日はそこへ行くの。それで……リミェラねぇに連絡できない。エレは連絡先知らないから」
リミェラの連絡先を知っているのは、フォルとフィルとイールグだろう。エンジェリアとゼーシェリオンは、連絡先を知らない。
イールグが、連絡魔法具を取り出し、リミェラに連絡してくれる。
『イールグ? どうした? こんな夜分に、何かあった? 』
夜というのもあり、リミェラは心配しているようだ。
「ぷにゅ。エレなの」
『エレ、元気にしてる? 発作でてない? 』
「ふにゅ。ノーズねぇとヴィジェにぃの居場所が分かったかもしれないからお知らせなの。あのね……なんだっけ? 氷の蛇さん? の儀式殿って場所なの。行き方は、ローシャリナ王宮地下なの」
『蛇氷種? ローシャリナって言えば、君達が……大丈夫? 無理にその扉で行かなくても他を探せば良いから』
神獣の情報網だろう。エンジェリアとゼーシェリオンの過去に起きた事を知っているようだ。
「大丈夫なの。それに早く会いたいの。だから、エレの事はお気になさらず、一緒に行くの。えっと、えっと、明日? 明日なの? 明日なのかな? 」
『……エレ、今どこにいる? 』
「知らない場所。フォルの別荘で管理者見習い試験中なの。場所は……知らないの」
「……シュリュフェズの奥地だ」
エンジェリアに任せていられないとでも思ったのだろう。ゼーシェリオンが代わりに答えた。
『あそこ治安悪いって有名だよ? 』
「だろうな。つぅか、有名でなんで知らねぇんだよ」
『フォル? フォルのようにそういう場所に身を置いていると、このくらいは日常茶飯事で危険だって思ってなかったんじゃないかな。とりあえず、明日そっちへ行くから、詳しい話はそっちでするで良い? 』
「リミェラさ……リミェラ、あそこへ行くのに念のため防御魔法具でも持っていた方が良い。この時期だ。念には念をというだろう」
御巫が各地へ訪問する期間。エンジェリアも、会ってはいないが、職人街にいる時、御巫の訪問を聞いている。
エクシェフィーの御巫夫婦の訪問期間は、神獣達が各所に警戒網を張っている。エンジェリアが動くには勧められないような時期だ。
「……」
「幸いにもローシャリナに訪問予定はねぇよ。だから、自由に動いても大丈夫だろ」
「……ねむねむさん」
「そっちか。そうだな。そろそろ寝るか。今日もみんなで一緒……フォルいないけど誰か結界魔法使ってくれる優しいゼムとかいるか? 」
フォルが使っていた結界魔法具はもう効果が切れている。今晩は、誰かが結界魔法を使って寝るしかない。
誰も結界魔法具を持っていなければの話だが。
「その前に誰か結界魔法具持ってるか聞くの」
「……持ってたら昨日の時点で名乗り出るだろ。だから、どっかの優しいゼムとかが結界魔法を使ってくれたら良いんだが」
「なんでオレ限定? 結界魔法苦手って言ってたと思うんだけど」
エンジェリアとゼーシェリオンは、じっとゼムレーグを見つめる。
「ゼム、この際氷で別荘全部覆えば良いと思う。結界魔法を使うよりもゼムはそっちの方が得意だろうから」
「うん。そうする。エレとゼロの期待を裏切りたくもないから。これなら、期待を裏切らずに、侵入も防ぐ事ができる。知り合いが来たら扉を開くようにしておけば、リミェラとかが来ても大丈夫だから」
ゼムレーグが氷魔法を使う。窓から外を見ると氷で何も見えない。
エンジェリアは、ゼーシェリオンと抱き合い、ゼムレーグを見る。
「天才なの。ゼムすき」
「すごいの。ゼム好き」
「……調子良すぎるでしょ」
「ぷにゅ。これでねむねむできるの。おやすみなさーい」
ゼムレーグの氷魔法のおかげで、今日も何も気にせず眠る事ができる。エンジェリアは、自分の布団だけを出して眠った。




