7話 アジト内
アジトの中には、ヒュヒューオの仲間が見張っている。簡単に奥には進めないだろう。
「……面倒に一票」
「エレもなの」
フォルが花を創る。
「そのお花」
「これで眠らせる。面倒ごとは避けるに越した事はないから。これである程度は眠ってくれる」
「便利すぎるの。普通に睡眠魔法かけるより効果が高いだけじゃなくて、気づく事ができない便利さなの」
一輪の花がアジト全体に睡眠効果をもたらす。見張りが次々と眠る。
「これで隠れる必要はないよ」
「ぷにゅ。ゼロ達も早く行くの」
「俺の要塞攻略……」
「そんなものないの。エレのフォルらぶが最重要なんだから。それに、こんなところゼロをいさせたくない」
かつての後悔をまたするかもしれない。そう思ってしまうような場所からゼーシェリオンを外に出したい。
エンジェリアは、そのためにも、早く奥へ進もうとしている。
「……エレ、今度はオレ達もいるから、自分だけ背負わないで」
「エレは、守り手を信用できない? おれはそうでもないけど、ゼムは本当に強いから弟の事くらい守れる」
「それって僕は守ってくれないって事? にぃ様」
「そうは言ってない」
エンジェリアが不安に思う事などない。そんな事は理解している。だが、一度目の前で起きてしまった過去の恐怖心を拭う事ができない。
「……エレ、もし怪我してもエレが面倒見てくれんだろ? それならそれで良いから、気にすんな。って信じてもらえねぇよな。あの時の事は本当に悪かった。あんなのただの八つ当たりだ。お前は何も悪くねぇよ」
「違うの。エレが守れれば……エレのせいで」
「……そういう事か。エレ、君がほんとに恐れているのは、ゼロが怪我する事じゃないよね? ゼロに拒絶される事。大丈夫だよ。そんな事起きないから。あの時って、まだ記憶もなく幼かったらしいから、自分の無力さを自分の中だけで止められなかったんだろう」
かつて、エンジェリアを守って怪我をしたゼーシェリオンは、エンジェリアのせいだと責め、エンジェリアが側にいる事を拒絶した。
ゼーシェリオンが怪我をした事自体耐え難いものだったが、それもあり、余計に安心などできない。
「……ああ。本気であんな事思った事ない」
「信じろっていうのは難しいだろうね。でも、それを証明する機会くらいあげても良いんじゃない? 君はその原因を作った相手とゼロが出会って、おんなじ事になればまたと思っているようだけど」
「……それもそうだけど、でも、でも、なんかやなの。いさせたくないの」
不安以外にもエンジェリアも理解できない感情がある。ゼーシェリオンが要塞攻略を楽しそうにしているのを見ていると、なんとなく嫌な感じがする。
エンジェリアは、早くヒュヒューオを探そうと、すたすたと歩く。
「ゼロがこういう危険行為に楽しいがやなの。きっとそうなの」
「エレ、多分こっちだと思う」
エンジェリアは、フォルと手を繋いだ。
エンジェリアでは迷子になるだけだろう。フォルについていく。
**********
「ぷにゃ? みんないないの。エレとフォルだけなの」
エンジェリア達がヒュヒューオを探していると、ゼーシェリオン達がいなくなっていた。
エンジェリアは、ゼーシェリオンと共有を使っているため、安全であるという事だけは分かるが、詳しい居場所は分からない。
「フォル、フィルは? 」
「場所は分からないけど、何もないと思うよ」
「……こうなったらエレ達だけで行くの。ゼロが知らないうちに全部終わらすの」
ゼーシェリオンがヒュヒューオのところへ行かなければ安全だろう。そう考えたエンジェリアは、ゼーシェリオン達と合流するより、フォルと二人だけでもヒュヒューオのところへ行く事を選ぼうとする。
「……合流した方が良いんじゃない? 君と一緒にいた方が安全だと思うんだけど。一人でいさせるよりも」
「でも、なんかやなの。エレはゼロが要塞攻略とか言ってるのがやなの」
「うん。それは良いから、ゼロの安全が第一でしょ。探して安全を確認した方が良いんじゃない? 」
「それは……そうなの。がんばって探すの」
エンジェリアと一緒にいた方が安全。それは否定できない。
ゼーシェリオンを守るためにも、エンジェリアは、ゼーシェリオンを探す。
「ゼロ、探すの。きっとこっち」
「うん。君に任せるよ」
エンジェリアは、勘を頼りにゼーシェリオンを探す。
「エレ、処理能力がなくても使える魔法って知ってる? 」
「そんなのあるの? 魔力にお話するとかはエレできないから」
「そんなんじゃないよ。魔法を使うのにも維持するのにも相当な処理能力を必要とする。魔法は情報の集合体のようなものだから。その辺は理解できてる? 」
エンジェリアは、こくりと頷いた。
「魔法は情報の集合体。その情報をずっと処理し続ける事で魔法を維持する。なら、どうしてずっと処理し続けなければならないか」
「魔力に命令し続けないといけないから? ……でも、今はそうするしか」
「そうしなくて良い方法があるんだよ。あそこと同等とまではいかないけど、処理なんてなしに魔法を使う事ができる方法。かつての魔法とおんなじだよ。ある程度知識さえあれば誰でも使える魔法なんて君に必要ないだろ? 」
かつての魔法の使用方法。現在は、魔法の知識を学び、魔力の扱いさえできるようになれば誰でも使用できる。だが、かつての魔法は、そうではなかった。
その方法は、大量の知識と想いが必要となる。だが、それさえできれば、現在の魔法のような処理能力など必要がない。
「その手があったの。フォル、いつもこれでやってたの? 」
「うん。僕の場合は、自然から魔力を使いながらだけど」
「……ずるいの。でも、そんなフォルもだいすきなの」
エンジェリアは、そう言って、フォルに抱きついた。
「それなら、エレがみんなの居場所を探せるの」
エンジェリアは、探索魔法を使った。だが、どこにゼーシェリオンがいるか分からない。
「……エレはフォルに任せる事にした」
「……探索魔法だと難しいと思うよ? 基本的に魔力を探知して探すだけだから。それより、適当に探してみればきっと見つかるよ」
「ぷにゅ。フォル、エレは適当に探さないの。というか、考えてみたんだけど、エレが探すんじゃなくて、みんながエレのところへ来る方が良いと思う」
エンジェリアは、ゼーシェリオン達ジェルドの王に声を届ける事ができる。一定の範囲内だけだが、このアジト内であれば余裕で届けられる。
「ゼロ、早く来るのー! こなかったら、フォルのらぶをエレが独り占めするのー! 」
「……エレ、他のみんなも呼んで」
「フィルとゼムも来ないとだめなのー! こなかったら……こなかったら……何かするのー! 」
エンジェリアは、ゼーシェリオン達を呼ぶと、その場で座って待つ。
「エレ、そんな場所で座って待たないで。せめて立って待って」
「見つけたぞ! 侵入者だ! 」
「ぷにゅんにゃ⁉︎ 」
ヒュヒューオの仲間の男がエンジェリア達を見つけて叫んだ。
「にゃんにゃんなのー! 」
エンジェリアは、咄嗟に光魔法でハンマーを創り出し、振り下ろした。
ハンマーが偶然、男の頭部に当たった。
「ぷにゅぅ」
「これはしばらく起きそうにないね。今のうちに離れる? 」
「ふにゅ。離れるの」
エンジェリアは、フォルと一緒に人の気配がない場所まで走った。
**********
人の気配がない場所で、エンジェリアは、特製栄養ドリンクを取り出した。
「これに何かあった時のために、種を入れておくの。そうしたら、種が育つの」
「それやったら今育つだけじゃないの? 」
「……それもそうなの。大人しくゼロを待つ事にする……みゅ」
アジトに魔物がいるようだ。魔物の魔力を探知した。
「魔物なの。これは敵タイプ」
「そうだね。浄化魔法使うよ」
フォルが浄化魔法を使い、魔物と遭遇する前に魔物を浄化した。




