3話 別荘
見た目はかなり綺麗な場所だ。別荘の外観も、白く、美しい。
これはフォルが買いたくもなると外観だけで思えてしまう。
「これは仕方ないの。とってもきれいだから欲しくなるのも分かるの。エレもここに住みたいって思うの」
「ありがと。エレなら気に入ってくれると思ってたんだ」
「危険性を見なければ良い場所だな」
「……早速中に入ってよ。エレが気に入りそうな家具とか集めておいたんだ」
フォルがいつも以上に楽しそうだ。
エンジェリアが、室内へ入ろうとすると、突然、矢が飛んできた。
「またか。ここに来るとこればっかなんだ」
「これが日常なんてやなの」
「これが日常だからこそだ。管理者……ギュゼルに入りたいなんて言う愚かなお姫様に、僕らの日常を分からせるためには」
矢はエンジェリアに当たる前に、ゼーシェリオンが凍らせた。
エンジェリアとゼーシェリオンの目標は、フォルを一番近くで支える事。そのためにも、ギュゼルに認められる。
と決めてはいたが
「何もない時くらいはゆっくりしていたいのー」
すでに心が折れかけている。
「エレ、俺もゆっくりしたい」
「仲間。仲間。クルカムはどう? 」
「正直に申しますと、休みたいです。そろそろまともな休みが欲しいと思ってるんですが……あそこの方が休める気がします」
管理者の拠点は休めるはずなのだが、クルカムは、管理者の拠点にいる間も休めていなさそうだ。
「……僕らと同等の教育を受けさせてって言ってたから」
「管理者に関わると休める時間ねぇな」
「エレは休みたいの」
「結界魔法でも使っていれば休めるんじゃない? 」
試験者三人の中で、結界魔法が一番得意なのはエンジェリアだ。結界魔法を使っていれば、ゆっくりと休む事などできない。
ゼーシェリオンかクルカムに使ってもらうか、魔法具に頼るか。両者も、エンジェリアが結界魔法を使うよりは、効果が下がる。
「……ゼムに頼るが良いかも」
「オレ、結界魔法得意じゃないよ? 氷で部屋を覆うならできるけど」
「この際それで良いの。ちょっと不便かもしれないけど」
氷で覆えば、外に出れなくなるだろう。だが、その不便さより、安全の方が大事だ。
「……君らが寝てる時間だけ結果魔法を使うよ。初めの頃だけ」
「ぷにゅぅ。フォルすきなの。早く入るの」
エンジェリアは、ゼーシェリオンと手を繋いで、室内へ入った。
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広いリビングは、エンジェリアが気にいるようにか、ふかふかなソファが置かれている。
エンジェリアは、ソファのふかふかさを直で確認するため、早速ソファに座った。
「ふかぁ。とってもふかぁ」
エンジェリアがふかふかなソファを堪能していると、突然、目の前の机が爆発した。
側にいたエンジェリアは、ゼムレーグの加護により、爆発による怪我はないが、爆発に驚き、ソファから落ちた。
「足痛いの」
「大丈夫? まさかここに爆弾が仕掛けられてたなんて。ほんと悪趣味」
「ぷにゅぅ。泣くの」
エンジェリアは、ゼーシェリオンに抱きついた。
「痛かったな。回復魔法使うから少し我慢してくれ」
「ぷにゅぅ。机さんが飛び散ったの」
エンジェリアは、ゼーシェリオンに回復魔法を使ってもらった。ソファから落ちた際に、足を捻っていたが、回復魔法で痛みが和らいだ。
「ありがと。ゼロもだいすき」
「……フィル、ゼムと一緒に三人の面倒見といて。僕はルーと一緒に夕食作ってくるよ。エレ、少しだけ待っててね」
「ぷにゅ」
フォルが、エンジェリアの頭を撫でてから夕食を作りに向かった。
エンジェリアは、安全のためにもゼーシェリオンから離れないようにする。
「ぷにゃ⁉︎ 矢の次は短剣が大量に……ぴにゃぁ」
「暗殺者にしてはお粗末だな。本業なら殺気を隠す。それに、こんな方法を取らない。もっと確実で、存在をバラさない方法を取る」
「いやがらせじゃないの? 」
「ああ。これに塗ってある毒は、暗殺者が使うものなんだ。素人が作れるようなもんじゃない」
ゼーシェリオンが、短剣に塗ってある毒の解析をしている。
短剣に塗ってある毒は、かなり調合が難しいものだ。素人が作れないというのは、調合の難易度から考えても納得できる。
エンジェリアは、収納魔法から瓶を取り出した。ゼーシェリオンに、瓶の中に探検を入れてもらう。
「これで毒を活用するの。やられるだけじゃないのがエレなの」
「そうだな。有効活用させてもらうか。クルカム、調合免許持ってるか? 」
「持ってます。ですが、エレ様のような知識はありません。試験で出るような調合はできますが」
エンジェリアは、ゼーシェリオンと一緒に、瓶にどんどん短剣を入れては、毒だけをとっている。
「これを大量に貰っておいて、とっても良いお薬にするの。毒はお薬の元になるんだから。どんなお薬を作ろうかな」
「……寝なくても疲れが取れる薬。これ一択だろ」
「ぼくもそれが良いと思います。寝れそうにないので」
「ぷにゅ。やってみるの。今持ってる素材はないけど、きっとできるの……ゼム、何か良い素材持ってない? 」
ゼムレーグが、素材を確認している。
「今はこれくらいしか」
「ぷにゃぁ。ありがと。これだけあれば、疲れが取れるお薬も作れるの。ここ以外と便利かも。自分の身を守る事ができれば、いろんなものが無償で手に入るから」
短剣に毒が塗られているため、毒を手に入れただけではなく、大量の短剣まで手に入れている。
エンジェリアは、その事に気づき、大喜びしている。
「机どうしましょう」
「それこそエレにお任せなの。ふっふっふ、天才魔法具技師のフィルと、お手伝いしたエレを敬うの」
エンジェリアは、収納魔法から、魔法具を取り出した。
エンジェリアとフィルが昔作った、復元魔法具。
「復元魔法具で、机さんと爆弾さんを元に戻すのー」
「エレ? 気のせいか? 」
「気のせいじゃありませんよ! 今言いました! 爆弾も戻すと言ってました! 」
エンジェリアは、楽しげに魔法具を起動させる。
爆弾も机と一緒に元に戻した。
「あとは、この爆弾の活用させてもらうの」
エンジェリアは、爆弾の機能を停止させた。
「……ふにゅふにゅ。なんだか、パッとしないの。どっかに売ろうかな? ……何かあった時に使えば良いかな? 」
爆弾は、魔法具技師が見れば誰でもお粗末と言いたくなるようなものだ。
ゼーシェリオンの言っていた方法と言い、相手は素人の可能性が高い。
「……ゼロ、この爆弾あげるの。ゼロが自分の身を守るために使えば良いの」
「いらねぇよ。自分で使えば良いだろ」
「ふにゅぅ。ふにゃ⁉︎ 」
突然窓を突き破り、覆面の男達が押し寄せてくる。
エンジェリアは、爆弾を咄嗟に投げた。
「……不発弾じゃないけど、威力低すぎなの」
「そうだな」
エンジェリアは、ゼムレーグとフィルの側で防御魔法をゼーシェリオン達に使う。
押し寄せてきたのは十人ほど。全員暗殺者だろう。だが、エンジェリアですら、素人というのが分かる。
「……これ、あそこの」
「ぷにゃ? 」
「どうしますか? 無力化するだけで良いんですか? 」
「……ゼロ、ゼム、いつも通りに」
「ああ」
「うん」
目に見えない氷の粒が部屋の中に舞っている。
突然、押し寄せた男達が膝をついた。
「きれい。ゼロとゼムの共同っていうのが良いの」
エンジェリアは、ゼーシェリオンとゼムレーグが使った魔法に見惚れている。
麻痺系の魔法と似ているが非なる効果の氷の粒。その粒が光を反射させている。
「君らは誰に雇われてる? 」
「……」
「答えるわけないか。エレ、悪いけど、あそこの結界張ってくれる? 」
崩壊の書にも載っていた、神域とも呼ばれている結界。エンジェリア達を守るためのものだが、その結界は、フォルの力の負担を限りなく減らしてくれる。
エンジェリアは、収納魔法から宝剣を出し、結界魔法を使った。




