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星月の蝶(修正版)  作者: 碧猫
3章 魔法具技師達の戦場
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エピローグ お祝いの魔法具


 エンジェリアは、原稿を書き上げると、フォルに預けた。


 確認作業をしたあと、本ができるまでの間は、エンジェリアは、何もする事がない。この空いている時間に、ゼーシェリオンの魔法具を進める。


 フォルとフィルの手を借りたかったが、二人とも、本の方で忙しい。


 エンジェリアは、ノーヴェイズとルーツエングを誘い、魔法具の制作に励んだ。


「エレとフォルの魔法具があるから、多少は楽だけど、やっぱりむずかしいの」


「これ、俺に手伝える事ある? 」


「制作技術に関してはノヴェにぃの方が高いの。エレ一人じゃ形にもならないかもだから、お手伝いはあるの。ルーにぃもだよ? ルーにぃは、とっても器用で、魔法の扱いが上手だから、実験とかもできるの」


 エンジェリアが作りたい魔法具は、耐熱性、耐水性などを確認しなくてはならない。いつでも使う連絡魔法具だからこそ、いつでも使えるよう、どんな環境でも壊れないようにするのが目標だ。


 かつて、自分用とフォル用に作った時は、フィルが手伝ってくれていたため、あの耐久ができていたが、フィルがいないとなると、何度も失敗するだろう。


「フィルは、耐性を作るためのコツを知っているけど、エレは知らないの」


「設計図に秘密があるとかじゃなくて、フィルの腕だったんだ」


「設計図もあるけど、そもそもそれを再現できるのがフィルとフォルだけなの……エレが描く設計図を形にできる人、少ないの」


 知識量の違いだろう。


 エンジェリアは、この回以外の世界の知識まで持っている。それは、エンジェリア以外には、ゼーシェリオン達だけだ。


「……俺が形にする。だから、エレは自分が思うように設計して。魔法具設計師にとって、形にされない事が何よりも悲しい。俺が大好きな本に書かれていたエレの言葉。俺は、そんな悲しい思いを魔法具設計師にさせたくないから」


「ノヴェにぃ……うん。そっか。ノヴェにぃは、とってもすごい魔法具技師なの。だから、エレの設計図を形にしてくれる。エレが知っている事は教えるの」


 エンジェリアは、ノーヴェイズの言葉に喜んでそう言った。


 エンジェリアの持っている知識を知り、その域に辿り着くのはかなり困難な道のりだろう。


「エレが設計図を描きながら教えるの。ルーにぃも聞いてると良いの」


      ***********


 設計図が描き終わる頃、ノーヴェイズは、エンジェリアの説明を全て理解したようだ。


「うん。これなら作れそう」


「ぷにゅ。エレもできる限りお手伝いするの」


「うん。一緒にゼロに最高のプレゼントをあげよう」


      ***********


 設計図が完成してから十日。エンジェリア達は何度も試行錯誤を重ね、ようやく完成した。


「さすがなの。こんなに早く覚えるなんて。ノヴェにぃに任せて良かったの」


「ゼロに渡し行く前に、少し仮眠したらどうだ? 十日間ずっと寝てなかったんだからな」


「ぷにゅ。魔法具と徹夜はセットなの。ゼロが喜ぶお顔早く見たい」


 眠気は限界だが、眠気以上にゼーシェリオンに連絡魔法具を渡し、喜んでもらいたい。早くその顔を見たい。


 だが、ベッドに今すぐにでもダイブしたいとも思ってしまう。


「ねにゃいの」


「エレ、寝な」


「ぷにゅぅ……ぷにゃ⁉︎ フォル⁉︎ いつからいたの⁉︎ 」


 エンジェリアが寝そうになっていると、フォルが部屋を訪れた。


 エンジェリアは、フォルに抱き上げられ、ベッドに連れてかれた。


 エンジェリアは、ベッドの上で、重い瞼を必死に開いている。


「ゼロに喜んでもりゃうの」


「そんな眠そうにしていたら、喜ぶもんも喜ばないんじゃない? 自分のせいでずっと寝れてないんだって。だから、ゼロのためにも寝な」


「……ねむねむなの」


 エンジェリアは、ゼーシェリオンに喜んでもらうためにも、寝転んだ。


「おやすみ。僕のお姫様」


 フォルが、エンジェリアの頭を撫でる。エンジェリアは、頭を撫でてもらいながら、瞼を閉じた。


      ***********


 エンジェリアが起きると、日付が変わっていた。

 ゼーシェリオンにバレないように張っていた結界が解かれていたからだろう。フォルだけでなく、ゼーシェリオンも一緒にいる。


 エンジェリアは、急いで連絡魔法具を用意する。


「ゼロ、改めて、魔法具技師免許試験合格おめでと。エレ達からのプレゼント受け取ってくれる? 」


「ああ。ありがとな。エレ」


「うん。ゼロ、エレは、ゼロに喜んでもらえて嬉しいの」


 エンジェリア、喜ぶゼーシェリオンを見て、満面の笑みを浮かべた。


 ゼーシェリオンが、連絡魔法具を使っている。


「……さすがだな。これ、ノヴェと作ったんだろ?」


「そうなの。ノヴェにぃはすごいの。昔の名のない魔法宮技師さんみたいに。エレは本でしか見た事がないけど」


 前回の世界で生きていたとしても、記憶は残らない。ノーヴェイズが、名のない魔法具技師の生まれ変わり、もしくは転生者ではないとは言い切れない。


 エンジェリア達が言い分けているだけだが、転生者は、同じ名を持って生まれ、同じ人物として生きる事。生まれ変わりは、別の名で別人として生きる事。


 イールグは、この基準だと転生ではなく、生まれ変わりと言って良いだろう。


「名前がないから、転生か生まれ変わりか分かんないけど、あるかもしれないの」


「そうだね。あっ、そういえば、本できたよ。あとはこれを配るだけ……エレ、本の事がある程度済んだら、話があるんだ」


「フォルのお話なんでも聞くの。でも、むずかしいやだ」


「難しい事はあるかもだけど、話だけなら難しくないよ。君らには、嬉しい話かもしれないね」


 フォルが笑顔でそう言った。エンジェリアとゼーシェリオンが嬉しい話。フォルと一緒にいるだけでも嬉しいが、それ以上に嬉しい話だろう。


 エンジェリアは、ゼーシェリオンと顔を見合わせた。


「フォルのエレって事かもなの」


「フォルのゼロって可能性も」


「何言ってんの? そんなわけないから。でも、それくらい嬉しいんじゃないかな? まだ準備段階だから何も言えないけど。本がある程度配り終わるまでに、最低限の知識と実践経験を積むのは難しいけど、魔法をすぐに使えるようにしな」


 魔法と勉強が必要な嬉しい話。その心当たりはエンジェリアにはない。


 ゼーシェリオンにはあるのかと思い、ゼーシェリオンを見ると、ふるふる首を横に振られた。


「それと、またしばらく忙しくて一緒にいられる時間が減るけど、今日は一緒にいる」


「嬉しいの。一緒にいれなくなるの寂しいから、今日はずっとぎゅぅってしているの……だめ? 」


「良いよ。それで一緒にいれない時間、寂しいのを我慢してくれるなら。夜には帰ってくるとは思うけど、帰れない日は、必ず連絡するけど、それだけだと君は寂しいだろうから」


 フォルが夜帰ってくるというのは、エンジェリアが寝る時間くらいになる事が多い。そういう時は、高確率で朝エンジェリアが起きると、フォルはいなくなっている。

 連絡も、メッセージでのやり取りの方が多い。通話の時もあるが、時間はかなり短い。エンジェリアの寂しさを紛らわすだけのものではない。


 それを我慢するためにも、今日一日、エンジェリアは、フォルの側で甘えまくる事にする。


「ゼロはどうするの? エレと一緒にあまあまさん? 」


「そうだな。フォルがしばらく帰ってこないかもしれないから、エレと一緒にあまあまさん。それで、フォルがいない間は、俺がエレの面倒全部見る」


「そしてエレがゼロの面倒を見るの。だから、そのご褒美の前借りもやるのー。なでなでとか、すりすりとか、それに、管理者の箱庭どうなったかのお話も聞かせてもらうの」


 もうそろそろ管理者達の長期休暇は終わるはずだ。その前に、どこまで復旧が進んでいるかは気になるところ。


 フォルは、オルベア達に管理者の拠点の方は任せているが、定期的に様子を見に行っている。どうなっているかは把握しているだろう。


「分かったよ。昼食当番だから、それ終わったら話すよ」


「みゅ。ならエレは、お掃除して待ってる」


「なら俺は、エレの代わりに掃除して待ってる」


 自室の掃除は各自でやる。エンジェリア達は、共同で部屋を使っているため、部屋の掃除も一緒にやる事が多い。


 フォルの部屋だけは、仕事関係のものがあるため掃除できないが、エンジェリアとゼーシェリオンは、フォルが昼食作りを終えて戻ってくるまでの間に、自分達の部屋の掃除をした。

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