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星月の蝶(修正版)  作者: 碧猫
3章 魔法具技師達の戦場
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11話 発表会


 試験が終わり、魔法具技師協会主催の大規模発表会の日となった。


「なんでこんなドレスを着てきれいにしておかないとなの。毎回思うけど、普通で良いと思うの」


「そういうものだって割り切りなよ。可愛いから」


「……みゅ。ゼロ、ずっと側いてね。一人だと不安だから。側から離れないでね」


「ああ。ずっと側にいる」


 控室の中で、エンジェリアは、ゼーシェリオンを隣に置いて暇を持て余している。


「……ひま」


「僕としては、この時間が好きなんだけどね。この開始前の時間で報告書の確認とかできるから。今まで、試験の準備とかで時間を作れなかったから」


「ゼロ、エレで遊ぶ事を許すの。存分に可愛がって良いよ。髪が乱れない程度でだけど」


「……お前ら、この時間で発表の練習をしろよ。そのための時間だぞ? 」


 開始前の控室にいる時間は、魔法具の最終確認等。暇を持て余す時間ではない。


 だが、エンジェリア達は


「台本あるから良いの」


「何度も確認してるから問題ない」


「報告書読まないと」


 と、発表前の準備をする気がない。それに、ゼーシェリオンが呆れた表情を浮かべているが、エンジェリアは、ソファに座って、足を上下にばたばたと振って遊ぶ。


「早く始まんないかな」


「ノヴェにぃを見習え。ちゃんとこの時間を利用して魔法具の……これ、植物図鑑じゃ」


「エレが渡したの。調合免許が欲しいらしいから。そのためのお勉強に」


 ノーヴェイズが、魔法具を勉強ではなく、植物図鑑で調合の勉強をしている。この控室では、誰一人として魔法具の事をやっていない。


 他から見れば異常な光景だろう。


「エレ、試験会場で面白いもの拾ったからあげるよ」


「ぷにゅ? なにこれ? 」


 真っ白い石。これのどこが面白いのか理解できない。


「魔法石。あるはずのない」


「ぷにゅ。これ使えるのかな? 今度別の魔法具で試してみるの」


「使えたら教えて。いくつか落ちていたから、調べてみる。一応、魔法具技師協会の方へ伝えたら、調べて欲しいって言われたんだ」


 エンジェリアは、真っ白い魔法石をじっと見つめる。一見、真っ白い以外はおかしなところはない。


「発表会に使わない魔法具で試してみる」


 エンジェリアは、収納魔法から適当に魔法具を取り出した。


 魔法具の中にある魔法石を取り替える。


「……これ……少し変えれば……できたの。使えるけど、少しだけ変えないとなの」


 真っ白い魔法石に変えたが、問題なく使える。


「フォル、これあげる。調べるのに役立てて? 」


「ありがと」


 エンジェリアが真っ白い魔法石を使っていると、発表会が始まった。


      **********


「この光魔法具の新しい点は、低コストで長持ちするための制作法です」


 エンジェリアとフィルの共同魔法具の発表。エンジェリアは、ゼーシェリオンと手を繋いで挑む。


 魔法具の紹介でどれだけ注目を集めるか。今まで以上にそれを意識しなければならず、緊張で、内容を忘れそうになりながらも続ける。


「簡単に手に入る素材で、低予算で作られておりますが、強度も十分あります」


      **********


 エンジェリアとフィルの共同魔法具の発表が終わった。注目はかなり集められていただろう。


「緊張したの」


「お疲れ様。次はノヴェの発表だから、映像を見よう」


 控室へ戻り、映像視聴魔法具で、会場の様子を見る。


「ノヴェにぃがんばれなの」


 ノーヴェイズが用意した魔法具は、水撒き魔法具。


「音があまり聞こえないけど、がんばっているのは見えるの。それに、いっぱい注目集めてる」


「ああ。エレとは違う方面の注目が多いな」


 今回エンジェリアとフィルの共同魔法具として発表したのは、庶民全般向けの魔法具。ノーヴェイズが発表しているのは、農民向けの魔法具。


「あの商人さんって、農業魔法具全般を扱ってるおっきぃ場所の人なの。ノヴェにぃがんばれー」


 聞こえる事はないが、エンジェリアは、必死にノーヴェイズの応援をする。


「あっ、ノヴェにぃの発表終わった。これは、手応えありだな」


「ふみゅ。帰ってくるのを待つの」


 エンジェリア達は、ノーヴェイズが控室へ戻ってくるのを待つ。


      **********


「お疲れ様」


「うん。エレ達も。やっぱりすごいよ。エレ達の注目には敵わなかった」


「そんな事ないの。需要があるかどうかも関わってくるから……そう言えば、フォルいない」


 エンジェリアは、ノーヴェイズが控室に帰ってきてもいないフォルを探す。


「ふぇ⁉︎ こ、こんな事が……どうして参加者は終わったら控室なのー! 」


「エレ、見えない」


「ぷにゅぅ」


 エンジェリアは、ソファに座った。


 映像視聴魔法具にフォルが映っている。エンジェリア達に内緒で参加していたようだ。


「ふぇにゃ⁉︎ こんな魔法具が」


「これ出して大丈夫なのか? 」


「フォルならぎりぎりを攻めてそう」


 ノーヴェイズの時と同じく、発表の声は聞こえない。だが、魔法具を見れば、何かは分かった。


「結界魔法と癒し魔法……回復魔法かなと音魔法と幻覚魔法と浄化魔法を詰め込みなの。ベッドにつける用っぽいから、エレが欲しいの」


 最高の睡眠を与えてくれる魔法具。

 かつてないほど、注目を集めている。


「負けたの。フォルの発表目の前で見たかったのに」


「技術的に作れるのか? 」


「かなり簡単に作れるの。そういうふうに考えられてる。でも、なんでこんなぎりぎりを攻める魔法具を」


「……もうバラして良いか。エレにプレゼントするために作ったって本人が言ってた。エレがいなかったらこんなもの作ってないとも」


 エンジェリアのため。だからこその、睡眠用の魔法具なのだろう。


「フォルだいすき。発表終わったらぎゅぅするの」


「発表終わったら、売り込みな? 」


「むにゃ⁉︎ 思い出させないでよ。エレは、それが苦手なんだから」


 発表は、挨拶のようなもの。この後が本番と言って良いだろう。


 だが、その本番はエンジェリアが苦手とするもの。


「人見知り発動して何も喋らないはやめろよ」


「き、気をつけるの」


「おれもついているから大丈夫。エレは、挨拶とかだけすれば良いから」


 フィルもついているというのは、かなり安心できる言葉だ。エンジェリアが、説明せずとも、フィルが全部やってくれる。フィルに頼れば良いと思えるのだから。


「フィルって、交渉得意だったか? 」


「フォルほどではないけど」


「ゼロがやれば良いでしょ。初めからそのつもりでついてきてるんじゃないの? 」


 発表を終えたフォルが、控室へ戻ってきた。


「エレが頼むからついてきてるんだが? つぅか、なんでフィルがやらせない方が良いんだよ」


「フィルは、交渉はできても、適正な値段とか全然分かってないから。君ならそれを理解できているでしょ? 僕が散々教えていたから」


「ああ。今回の発表に向けて、エレが寝てる時に、どのくらいの値段とか全部教えてくれたからな。あれ試験にも役立てられたから、そのためだと思ってた」


 魔法具技師免許の試験には、素材の適正価格の問題も何問か出されている。そこに役立ったのだろう。


「違うに決まってんじゃん。君が、エレとフィルの代わりに交渉してもらうためだよ。僕は一緒にいれないから。あっ、それと、あの魔法具、帰ったらベッドにつけて一緒に寝よ」


「ふにゅ。一緒にねむねむなの。楽しみ。早くねむねむしたい。でも、まだやる事が残ってるの。離れるのやだー」


 エンジェリアは、駄々をこねる子供のように、フォルの腕にしがみつき離さない。


「やだー。離れたくないー。エレを側に置いて? エレがいなくてもあっちはどうにでもなるから。ゼロとフィルがいればどうにでもなるから、エレをこっちに置いて? 離さないで? 」


「……エレ、ちょっと良いかな? 」


 フォルがエンジェリアの額に触れた。


「やっぱり……熱出てる。ここに置いておくのも……ゼロ、ちゃんと面倒見といて。無理させないように。多分、最近忙しくて疲れてるだけだと思うから」


「ああ。面倒見とく。エレ、ずっと抱っこしといてやる」


「みゅ。それならフォルの会えないのも我慢するの。ゼロもだいすき」

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