10話 試験
試験開始前。
受付を終えたエンジェリア達は、試験開始前の確認をしていた。
「不正行為を防ぐために魔法具の用意もしているから、全部大丈夫なの」
「うん。試験用紙も人数分ある。あとは、試験開始を待つだけだね」
「魔法具の整備もできてる。問題も記入済み」
試験開始前の準備は万全。
エンジェリア達は、試験会場へ入る時間を待つ。
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試験開始時間。
試験用紙を全員に配る。試験注意事項の説明をする。
「それでは、魔法具技師免許試験を開始します」
試験開始の合図。その合図とともに、受験者は、筆を構える。
魔法具技師免許試験では、試験開始直後に、試験管の人数分の口頭問題が出される。その口頭問題に、エンジェリア達が事前に準備した魔法具が必要となる。
「口頭問題、問一。この魔法具に使われている魔法石の品質は、魔法具にどう影響しているか書いてください」
魔法石の品質は、玄人であれば気にするが、意外と、多くの魔法具技師に気にされていない。そもそも、魔法石の品質は知られていない。
魔法具技師を目指すのであれば、簡単な問題に思えるが、これは意外にも難しい問題だ。
「問ニ。この魔法具の設計図を描いてください」
魔法具技師ではなく、設計師の仕事だろうと思われる事だが、魔法具技師として、魔法具の製作だけできる魔法具技師は少ない。自ら新たな魔法具を生み出す魔法具技師は、自ら設計図を描くのが大前提だ。
エンジェリアも、設計師と言っているが、魔法具を作れないわけではない。そもそも、魔法具技師に設計師だけというのは、存在しないに等しい。
これは、魔法具技師として、自ら魔法具を生み出すのを目指すのであれば、必要な問題だろう。
「問三。この魔法具は、光魔法の応用で映像を拡大する魔法具です。魔法具の効果がどのようにして決まるのか書いてください」
これも、必要な事だが、こうすれば良いと、技術で覚えている魔法具技師がほとんど。説明できる魔法具技師は少ないだろう。
エンジェリア達が出す問題は、どれも他の試験では出ない問題。それを知らなくとも、魔法具技師としてはやっていける問題ばかりだ。
何人かは、筆が動いていなかったが、多くは筆を動かしていた。ゼーシェリオンも、迷わずに書いていたようだ。
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筆記試験終了。エンジェリア達は、問題用紙を持って、実技試験の会場へ向かった。
実技試験の説明を終え、試験開始後、試験管であるエンジェリア達は、受験者達を、映像魔法具で見ながら、筆記試験の採点をする。
「ゼロのだ……見た感じかなり良い感じ」
「……口頭問題は、全問正解」
「魔法石の質は、魔法具の性能に関わっているって、お手本みたいな解答なの」
「魔法具の効果の方も、魔法石と魔法式を使えば正解にするつもりだったけど」
ゼーシェリオンの解答用紙をフィルと一緒に見る。
筆記試験百点満点、実技試験百点満点、計二百満点中百点で合格。百八十点以上で、試験管の資格を与えられる。
ゼーシェリオンの筆記試験だけを見ると、試験管の資格を取得できる可能性は高い。
「模範解答すぎるの。これ、暗記でどうにかしてそう」
「昔からゼロは暗記得意だから、最難関試験で出てきそうな問題は全部暗記してたかもしれないね。それと、僕の方は全部終わったよ」
「エレ達もこれが最後。フィルに採点のやり方教わりながら」
エンジェリアは、採点に慣れておらず、フィルに教わりながら採点していた。
「フォル、本当に今終わったの? 」
「だいぶ前に終わってたよ? こういうのは仕事で慣れてるから。さっきまで実技試験の採点準備やってただけで」
「ぷにゅ。ありがとなの。エレ達もこれで終わり。ゼロは筆記満点」
エンジェリア達が採点を終えると、ゼーシェリオンが、魔法具を持ってきた。
「一着なの。おめでと。でも、早さは採点基準じゃないの」
「そんなの知ってる。これが俺が作った魔法具です。試験管様」
「ふにゅ」
なんの変哲もない、水を出す魔法具。
起動確認は問題ない。だが、これだけでは満点とはいかない。
「フォル、準備が良いの。バケツのおかげで、エレが濡れない。それと、ゼロの魔法具は、もう少し何かあれば満点だったの」
「本当か? エレ……試験管様がそういうと思って、このボタンを押すと、水が凍るようになってる」
ゼーシェリオンが、起動ボタンの隣を押すと、フォルが用意してくれたバケツの中に入っている水が凍った。
自分で出した水を自分で凍らせる事もできる。この短時間でこの効果は、満点に値するだろう。
「おめでとなの。ゼロは満点合格。後で高得点合格者の説明を受けるように」
「エレがしてくれるのか? 」
「ふにゅ。その時の試験管がする決まりだから」
エンジェリアがそう言うと、ゼーシェリオンが、嬉しそうにしていた。
「よろしいですか? 姫……エレ試験管」
「ふにゅ。そういえばユグベーズもいたの。魔法具できた? 」
「はい。これです」
空間魔法具だ。この短時間で空間魔法具を作る事自体も難しい事だが、この魔法具はそれだけではない。
「すごいの。空間魔法具の中で、自分が歴史に残る人になれるなんて」
歴史を記録するユグベーズだからこそ、この短時間でこの魔法具を思いつき、作れたのだろう。
「これは文句なしの合格」
「ふにゅ。フィルに同意」
「筆記はケアレスミスで満点ではなかったけど、高得点合格者に入ってはいるね。ユグベーズも、高得点合格者の説明を受けて」
「はい」
その後も、受験者達が続々と魔法具を持ってきたが、
合格者はゼーシェリオンとユグベーズを除いて一名。
高得点合格者はゼーシェリオンとユグベーズだけだった。
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説明会も終わり、エンジェリア達は、試験管の仕事を全て終えた。
「ぷにゅぅ。がんばったの。ゼロ、もっとぎゅずして良い? 」
エンジェリアとフォルは、今までゼーシェリオンに会えなかったため、ゼーシェリオンに抱きついている。
「……これ何のご褒美だ? 俺が満点合格したから? 」
「寂しかったそうだ。昨日も、ゼロがいないと嘆いていた」
「ずっと会いたかったの。寂しかったの。ゼロがいると安心なの」
「うん。エレだけじゃなくて、ゼロも一緒にいないと寂しい。だから、一緒にいれなかった分、今こうして一緒にいる」
エンジェリアは、ゼーシェリオンに、行動で寂しさを伝えるため、腕に顔を擦り寄せた。
「ゼロ、説明ちゃんと理解できた? 難しくなかった? 」
「ああ。分かりやすかった。良く頑張ったな」
「ふにゅ。がんばったの。でも、でも、ゼロの方がいっぱいがんばった。だから、ご褒美にエレがなんでも買ってあげる。もう少しだけ時間があるから。行くの」
発表会の準備のためにも、早く帰らないとだが、ゼーシェリオンが一人で試験勉強をし、満点合格をした褒美を与える方がエンジェリアには優先すべき事だ。
「……なら、俺のために、なんでも良いから魔法具を作って欲しい。それはだめか? 」
「ぷにゅにゅ。おかしゼロなの。魔法具技師免許の試験を受けたのに、エレに魔法具を頼むなんて。良いよ。エレがゼロのためだけに魔法具を作ってあげる。フォル、フィル、手伝ってくれる? ノヴェにぃにも手伝って欲しいの」
エンジェリアは、ゼーシェリオンの頼みに、喜んで応じた。
「じゃあ、もう帰る? 用事も済んだから。免許も渡したから」
「そうだな。帰って、お祝いして欲しい」
「ふみゅ。ユグベーズ、また今度なの。試験合格おめでとなの」
「はい。また」
試験が無事終わり、エンジェリア達は、転移魔法でエクリシェへ帰った。




