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星月の蝶(修正版)  作者: 碧猫
4章 管理者見習い
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エピローグ ご褒美に


 初仕事を終えたエンジェリア達は、まだ別荘にいた。


 各自のペアにここへいるように言われてここにいる。


「エレ、招待状」


「みゅ? 」


「みんなにもあるよ」


 ゼムレーグが、エンジェリア達に招待状を渡した。


 招待状には、場所だけ書かれている。宛名が書かれていないが、互いのペアで間違いないだろう。


「とりあえず行ってみるの。ゼム、お願いなの」


「うん」


 エンジェリア達は、ゼムレーグの転移魔法で書かれていた場所へ転移した。


      **********


 転移した場所は、フォルが好きそうな場所。暗い空は、星明かりで照らされている。暗い地面は、色とりどりに淡く光る植物達で照らされている。七色に光る蝶々が、周囲を照らしながら飛んでいる。


 ガーデンニングテーブルにガーデニングチェアが置かれている。


「待ってたよ。改めて、見習い試験お疲れ様。これは、君らへのプレゼントだ」


 エンジェリア達は、それぞれのペアから服をもらった。


「管理者見習いの制服。僕らで考えて製作依頼して作ってもらったんだ」


「……あのアンケート」


「うん。あれはこれのために書いてもらっていたんだ。君ら二人とも禁止指定魔法の取り締まりを希望していたから、動きやすさとか重視して。エレは別だったけど、動きやすい方が楽だと思うから。希望の仕事だけなんてできないからね」


 エンジェリアは、手に持っている制服を見つめる。


「着てみてよ。ここは僕ら以外誰もいないから、向こうで着替えきな」


「……エレはここで着替えるから、二人とも向こういって良いの。フォル、お着替え手伝って」


 エンジェリア達は、それぞれもらった制服に着替える。


      **********


「リボン可愛いの。エレはこっちなの」


 制服にはタイツが付いていたが、エンジェリアは、それを履かず、普段履いているニーソのままにした。


「俺らも着替えてきた」


「似合ってるよ。ルー」


「ああ」


 イールグがプレゼント箱とあるものを持ち、クルカムの前に立った。


「クルカム・レビーダ・ミンスト。貴殿を管理者見習いとして認める。これは、管理者見習いの証と俺からのプレゼントだ」


「ありがとうございます。これでやっと、姉上に近づけます」


「突然管理者になりたいと言ってのは、フュリーナ達を思い出しての事だったか。なら、ギュゼルとして共に動く事ができる日を待とう」


「……はい! 」


「エクランダで会った時とは別人だ。もう、あんな事言いそうにないくらい」


 フォルが笑顔でクルカムを見ている。


「はい。セイリション様やイールグ様が色々教えてくれたおかげです。ですが、それ以上に、そのきっかけをくれたお二人のおかげです。それと、フォル様、思い出した今だからこそ、言っておかなければならない事があります」


「……」


「ずっと、姉上達を想っていてくれてありがとうございます。思い出して、探してくれていると知って、本当に嬉しかったです。それと、ぼくも、関係者のはずなのに、全部忘れて背負わせて、しまいには、あんな言葉を言ってしまい、申し訳ありません」


 クルカムが深々と頭を下げた。


「……思い出した時、僕を恨まなかったの? って、こんな事言ってる時点でそんな事なかったのか……謝るのも礼を言うのも僕の方だ」


「そ、そんな事は」


「……約束する。今度は絶対にあんな失敗をしない。大切なものも、全部守れる選択を何がなんでも見つけ出すから。だから、またみんなで一緒に楽しも」


 フォルが、そう言って、どこか悲しげな笑顔を見せた。


「はい。今度は、ぼくもギュゼルの仲間入りして、みなさんの力になりながら楽しみます」


「楽しみにしてる。君らの活躍を()()しているよ」


「期待していてください」


「うん。フィル」


 フィルがゼーシェリオンの前に立った。イールグと同じく、手にはプレゼント箱と管理者の証を持っている。


「ゼーシェリオンジェロー・ミュード・アロジェーシンティード。貴殿を管理者見習いと認め、その証をここに」


「ありがと……」


「……管理者にすら入れたくない。そう言っていたのに、管理者見習いにする。しかも、ギュゼルに入れるチャンスをあげる。十分すぎる成果だと思うけど? それの結果はどうであれ」


「……ああ」


 ゼーシェリオンが、管理者見習いとして認められたのに俯いている。


「……」


「……ぷにゃ⁉︎ ゼロはエレの事見てるだけで良いの! というか、エレは一度もそういうの望んでないの! 守れなくても、弱くても一緒にいてほしいだけ。王はエレのなんでしょ? だったらエレの事を聞いてれば良いの。他は気にしないで良いの」


 世界を滅ぼすような力なんて、なくて良い。それは、絶対に言わない。たとえゼーシェリオンを慰めるための言葉であっても。


「……フィル、ゼロに愛姫らぶが一番大事なんだって教えてあげといて……押さえ込んでいるだけで、本当は強いの知ってるのに……」


「分かった。ゼロ、邪魔にならないところで、教える」


 フィルがゼーシェリオンを連れて離れる。


「……エレ、ほんとに良いんだね? 」


「ふにゅ。エレはみんながみんなと一緒にいるためにも、これが良いから」


「分かった。エレシェフィール・ノーヴァルア・シェルシェヴィレーヴィッド。君を管理者見習いとして正式に認めよう」


 エンジェリアは、フォルから管理者見習いの証とプレゼントを受け取った。


「ふにゅ。ありがとなの」


「……そう言えば、君らはこれの使い方知ってる? どんな場所で使えるかとか。知らないなら教えるよ」


「知らないの。身分証になるって事なら知っているの。それ以外は知らないの」


 管理者の証。それをフォルが身分証として使っているのは見た事があるが、それ以外に使っている姿を見た事はない。


 エンジェリアは、不思議な表情で管理者の証を見る。


「管理者の管轄下にある場所でこれを見せると割引とか、情報提供してくれるとか。その他諸々詳しくは今度教えるよ。基本的には身分証として使うから、ちゃんと持っておく事」


「ふにゅ……これこうして身につける事できるの。初めて知ったの」


 管理者の証を見ていると、小型化し制服のリボンにつけておく事ができる。


 エンジェリアは、リボンに管理者の証を取り付けた。


「これで持ち運びが楽なの。フォルはどこにつけてるの? 」


「ギュゼルの制服の時はリボンだよ。昔君にもらった、ね。そんな事より、こういう話は終わりにして、君らの事を祝わせて」


「……お祝いぎゅぅなの? エレ的には嬉しいけど……エレは嬉しいけど……にゃん? 」


 フォルに抱き寄せられたエンジェリアには、この褒美は嬉しいが、それはエンジェリアだけだろう。ゼーシェリオンももしかしたら喜ぶかもしれないが、クルカムには、これが褒美とは思えないだろう。


 そう思いながら目の前のガーデニングテーブルを見ると、いつのまにか食事が置かれている。


 エンジェリアが大好きなフルーツタルト。ゼーシェリオンが大好きな紅茶とアップルパイ。クルカムが大好きな激辛料理各種。


「エレ達がすきなのばかりなの」


「これがご褒美。気に入ってくれた? それと紅茶は僕が淹れる? ゼロに淹れてもらう? 」


「ふにゅ。気に入ってくれたの……フォルも良いんだけど、ゼロなの。ゼロお願いなの」


 エンジェリアは、ガーデンチェアに座った。


「……ここ、とっても落ち着くの」


「今まで忙しなかったから、こういう落ち着く場所の方が良いかなって。明日からは、正式に管理者見習いとして働いてもらうから。今は神獣達の事もあって、かなり忙しくなると思うけど、頑張ってね」


「ふにゅ。がんばるの。今日は楽しむの」


 エンジェリア達は、今までの試験の話をしながら、楽しい時間を過ごした。


 木々がざわめき、何かを伝えている事を気にしながら。

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