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エピローグ side-N

 教室に到着したと同時に、俺は自分の席に座った。疲れた。何だか、岩崎に元気を吸い取られたようだ。


「おはよ」


 隣の席の住人、真嶋が声をかけてくる。


「何でそんなに疲れているの?」

「いろいろあったんだよ」


 説明するのも面倒臭いね。説明したとして、どうせ理解できまい。俺とて、未だによく解らないのだからな。解るのは悪夢にうなされていたということだ。俺がな。


「真嶋さんおはようございます!」


 自分の席に荷物を置いてきたのだろう。岩崎が俺に遅れてこちらへ来る。


「おはよ。岩崎さん元気になったみたいだね」


 元気になりすぎだ。


「はい。昨日はすみませんでした。携帯を忘れて外出してしまって。大変心配かけました」

「岩崎さんが元気でよかったよ。それで、どこに行っていたの?」


 当然の質問だとは思うが、それは口に出してはいけない疑問だぜ、真嶋。


「はい、治療を受けていました」

「ああ、病院かぁ」


 いけしゃあしゃあと嘘をつくなよ。俺はそう思ったのだが、


「いいところでした。かなり手厚く看病していただきました。とてもいい気分で過ごせました」


 それは嘘というより、岩崎流の感謝だったかもしれない。


「へえ。そんなところあるんだ?場所はどこ?」

「近いですよ。真嶋さんも病気になったら行ってみて下さい。真嶋さんもきっと気分よく病気を治せると思います。ただし、そのときは私も同行させていただきますが」


 岩崎は人のよさそうな笑顔を浮かべているが、きっと心では舌を出しているに違いない。


 真嶋は理解できない、といった感じで首をかしげている。


「俺がそこに行ったらどうなるんだ?」

「成瀬さんが行ってもこれといった利点はありません。別のところに行くことをお勧めします」


 やっぱりか。そうだと思ったよ。


「そこってどういうところなの?人によって対応が違うわけ?」

「そうです。人によります。でも真嶋さんなら大丈夫ですよ」


 俺は、不安そうな真嶋とかなり楽天的な発言をする岩崎の声を聞きながら、机に伏せた。身体がだるいし、眠いし、極度に疲れたしで、今日は最悪だ。授業中耐えられるだろうか。俺は嫌な予感に襲われながら、目を閉じた。何度も言うようだけど、俺の嫌な予感はよく当たる。




 俺が自室のベッドで目を覚ますと、時刻は午後四時。


 どうしてそんな時間に自室のベッドで目を覚ましたのかというと、早退したからだ。


 自分の異常に気が付いたのは、三限が終わったときだ。朝にいろいろあったからとは言え、身体がだるすぎる。晴れているにもかかわらず、俺はとても寒かったし、だんだん頭が重くなってきていた。そこでようやく考えたのだ。俺は風邪なのではないか、と。


 保健室に行って、体温を計ってみたら案の定熱があった。三十七度九分。保健室で休むという案もあったのだが、どうせならゆっくり眠りたい。俺は帰る選択をした。


 家に着いて体温を計ってみたら三十九度にも達していて、すぐさま着替えて、倒れこむようにベッドについたというわけだ。


 そして、今は四時。普段なら今頃部室で雑誌でも読んでいる時間だ。だが、今日部活はないだろうと、ある意味確信に近い予想をする。別に熱のせいで未来予知ができるようになったというわけではない。あくまで予想だ。さらにその予想に付け加えるとしたら、きっとTCCのメンバーはすぐさま帰宅しているだろう。


 俺はおもむろにベッドから這い出て上着を羽織る。キッチンに行き、一口水を含むと、今度は玄関へ向かった。


 先ほどの予想にもう一言加えよう。もうすぐうちの玄関チャイムが鳴らされる。鳴らす相手はもちろん、こいつ以外にいないだろう。


「成瀬さーん、来ましたよ!調子はどうですか?」


 やれやれ。つまり、今日は俺が魔法にかかり、夢を見る番らしい。今回は悪夢でないことを祈るぜ。





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