13話 おでんたい焼き(油断大敵)
颯、カンナ、リュウク、そしてミアは、ついに試練をクリアし「英雄の証」を手に入れた。彼らは疲労困憊ながらも達成感に包まれ、ドルチェへと戻る道を急いでいた。
「いやー、なんとか試練を乗り越えたな!英雄の証もゲットしたし、これで俺たちは一歩最強に近づいたってことだ!」颯は満足げに笑いながら、手に持った証を高く掲げた。
「ええ、でも油断は禁物です。まだ帰り道がありますから」カンナは冷静に言いながらも、少し微笑んでいた。
「今夜はギルドで祝杯でもあげようぜ!」リュウクも満足そうに笑い、ミアも優しい笑顔で彼らの疲れを癒していた。
しかし、その帰路の途中、森の暗がりから突然何者かの気配が現れた。
「気をつけて…誰かいる」カンナが静かに警戒を促した瞬間、彼らの前に黒装束の集団が姿を現した。
「やれやれ、英雄の証を手に入れたばかりの冒険者が、こんなところで無防備に歩いているとはな」その集団のリーダーと思われる男が、冷たい笑みを浮かべながら現れた。
「誰だお前たち!?」颯がすぐに槍を構える。
「俺たちはただの通りすがりの盗賊さ。だが、ここはお前たちには少し危険な場所かもな。英雄の証を持っているとなれば、狙われるのは当然だろ?」盗賊のリーダーは指を鳴らし、部下たちが彼らを囲むように配置に着いた。
「盗賊か…なるほど、そういうことか」リュウクは大剣を手に取り、戦闘態勢に入った。
「この証が欲しいなら、簡単には渡さないぞ!」颯が叫び、盗賊たちに挑むように突進しようとしたが、リーダーは笑いながら手を上げた。
「そう焦るな、坊や。私たちはお前たちを殺そうとは思ってない。英雄の証さえ渡してくれれば、お前たちには手を出さないでやる」
「そんな脅しに屈するわけないだろ!」颯は怒りに燃え、盗賊に向かって槍を振りかざそうとしたが、その瞬間、何かが彼の足元に落ちた。
「くそ、煙だ!」突然の煙幕により、視界が一気に遮られた。
「リュウク、カンナ、ミア!気をつけろ!」颯は必死に仲間たちの居場所を確認しようとするが、煙の中では敵も味方も見分けがつかない。
「颯、後ろだ!」リュウクの声が響き、颯はとっさに振り返り、槍で盗賊の一人の攻撃を受け止めた。
「ちっ、こういう卑怯な手を使う奴らは嫌いだ!」颯は盗賊を突き飛ばしながら呟いた。
その一方で、カンナは魔法で煙を払おうとしていたが、視界が悪い中で次々と盗賊たちの攻撃が飛んできた。
「氷の壁!」カンナは魔法で自分たちを守りながら、ミアを護衛する。
「ミア、大丈夫?何かあったらすぐに癒しをお願い!」カンナがミアに指示を出す。
「わかった!でも、人数が多いわ…!」ミアは不安そうに呟きながらも、彼女の癒しの魔法で負傷した仲間を回復し続けた。
リーダーの盗賊は、颯たちを嘲笑するように言った。「煙幕で目が見えないだろう?戦うだけ無駄だ。今のうちに英雄の証を置いて、さっさと消えな!」
「くそ…でも、そんな簡単に引き下がれるか!」颯はそう言いながらも、状況が不利なことを理解していた。このままでは長引けばこちらが不利になる。
だが、その時、リュウクが大声で叫んだ。「颯!時間稼ぎをしろ!俺に策がある!」
「分かった!」颯は盗賊たちの気を引くために、次々と攻撃を繰り出し始めた。
「ふん、そんな無茶な戦い方をしても…」盗賊のリーダーが言いかけた瞬間、リュウクが背後から突進してきた。
「これで終わりだ!」リュウクは大剣を振り下ろし、リーダーを吹き飛ばした。
「リーダーがやられた!?おい、退却だ!」盗賊たちは慌てて退散していった。
「ふぅ…なんとか撃退できたな」リュウクが肩で息をしながら、大剣を地面に突き立てた。
「助かった…さすがリュウクだ!」颯は感謝しながら、仲間たちに視線を向けた。
「でも、これからもっと警戒しないと。英雄の証が狙われるということがよく分かった」カンナが冷静に言った。
「そうだな。次からはもっと注意しなきゃな」ミアも心配そうに言った。
「まぁ、俺たちならどんな敵でも乗り越えられるだろう!」颯は笑って言ったが、その心の中には新たな不安が芽生えていた。
こうして彼らは盗賊の襲撃を退けたが、これが彼らの旅に新たな試練をもたらす前兆であることにまだ気づいていなかった。