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クラスの孤高の狼がなついているのは女装した俺  作者: 有原優


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第46話 ナンパ

 飛行機から降りると、そこで鈴美の姿を見つける事が出来た。

 その瞬間、俺は兎に角安心した。

 俺は今すぐに理恵子の元に向かいたくなったが、一旦それはストップした。

 流石にそれは節操がなさすぎる。


 とりあえず飛行機から降り、そのまま1か所に集まった。

 そこで理恵子の場所へと向かった。

 幸いにも、全体集合で、班集合ではなかったのだ。


「理恵子」


 そう、俺が名前を呼ぶと、


「寂しかった」


 と、理恵子が泣きそうな顔を見せる。


「もう、そんなんじゃこれから耐えられないわよ」


 俺がそう言うと、


「朱里ちゃんだって寂しかったんでしょ」


 そう言われた。

 事実だ。俺は少し寂しかった。


 理恵子の隣の席じゃなかっただけで、理恵子を求めてしまう。



 俺は無言で理恵子に出を差し出す。


「やっぱり」


 理恵子はそう言って俺の手を取った。

 その後はバス移動だ。

 飛行機とは違い、席の指定はされていなかった。


 俺は理恵子の隣に座った。


「さて、朱里ちゃん」

「はい」


 改まった様子で、理恵子が言う物だからドキッとする。


「私の隣に座った感想は?」

「え?」

「だって、ずっと寂しかったんでしょ」


 何を言っているんだ。


「それは私のセリフよ。理恵子はどう思ってるの?」

「私は嬉しいよ」

「なら、それと同じね」


 そして俺は理恵子のひざ元に手を置く。

 理恵子がその手を軽く触る。


「うん」


 そして、俺たちは手をつなぐ。


 バスが動き出した。

 バスの車体がガタガタと音を鳴らす。

 正直慣れない。


 ドキドキをする。


 だけど隣に理恵子がいるのが正直嬉しい。


 理恵子と一緒にバスに乗れているのが。


「これがらどこに行くんだろうね」

「旅の栞見たら書いてあるよ」

「そういう話じゃないの」


 そう言って俺は目っとした。

 今はそういう話をするんじゃなくて、


「ねえ、理恵子」

「なに?」

「チャンスがあったらグループを抜け出さない?」


 それは俺のある種の希望だ。


「私はあのグループで上手くやっていける自信はないのだから」

「それは私も一緒だよ」


 理恵子は静かに言った。山本さんがいたはずだけど。



「抜け出したいね」


 そして笑ってそう言った。その言葉に俺も頷いた。


 理恵子と二人で回りたい。

 勿論そこに修平がいたとしてもいいけれど、

 でも、気心の知れた仲同士で回りたいのは正直なところなのだ。


「怒られないかな」


 理恵子が不安そうに言う。

 その言葉に対して俺は、


「それこそ、修学旅行の醍醐味でしょ」


 と言った。怒られてなんぼだろう。

 理恵子はそれに頷いた。


 そこから、二人で色々と話した。

 これからたぶんグループごとに回ることになる。

 そしたら、まともには話せなくなる、

 だからこそ今、二人で修学旅行の雰囲気を味わっていく。


 どうせいつかは終わるバスの旅。だからこそ、今楽しまないといけない。

 そして、三十分ほど進んだ先、ついに最初の目的地へとついた。


 首里城公園だ。

 後から知ったが、首里城は行く場所だったらしい。

 つまりあの日、俺はもう行く場所を調べていたという事だ。

 空港からも近いらしく一つ目の目的地としてふさわしいだろう。


 理恵子とは暫しの別れだ。

 バスから降りた後、俺は理恵子と軽く抱き合った。

 今、理恵子の熱を軽く帯びておきたいのだ。

 二時間ほど回る。

 だからこそ、今二時間分理恵子を味合わないといけない。


 すると修平に、「いちゃいちゃは大概にしろ」と怒られてしまった。

 別にいいだろと思う。



 俺は理恵子をどう思っているのだろう。

 理恵子の事は恋愛感情とかはよく分からないが、俺にとって親友という価値観だろう。

 正直それは正解だ。何しろ、理恵子と一緒に居る時が一番幸せなのだから。

 前までは修平が(女装の事は知らなかったが)一番の親友だったが、今は違うらしい。



 そして回っていくが空気は悪い。

 一応一緒にはいるが、話しかけてこないで感がすごい。

 なんなら渋沢くんは俺と一緒に居たくないみたいで、俺と少し、いやかなり分かりやすく距離を取っている。


 そんなに俺と一緒に居るのが嫌なのか?

 地味に傷つくんだけど。


 だけど、かと言ってこちらから距離を近づけに行ってむしろ反感を買うのは避けたいところだ。

 せっかく一人なんだから、一人で楽しく見ていよう。


 そんな時、向こうに鈴美たちの姿が見えた。ここから抜けて鈴美と合流できないかな。

 そんな事を考えていると、


「ねえ」


 と、後ろから肩を叩かれる。


 俺は後ろを振り返る。


「俺たちとお茶しない」


 そこには明らかなチャラそうな男がいた。

 ああ、周りと距離を取っているからか。



 だから、修学旅行生だと気づかれなかったのだ。

 いや、もしかして気づいていてやっているのかもしれない。見た感じ大学生っぽいし。

 

 はあ、全く面倒くさい。俺にとってナンパされることはステータスだ。俺の女装で人の好意を引き立たせたのだから。


 だけど、今は違う。明らかに違う。


 こういう場合、どうしたらいいのだろう。


「すみません、あなたたちはタイプじゃないので」


 俺は言った。

 すると、


「何だと」


 そう言って俺の方を真っ直ぐに見る男。


 そして、俺の腕を軽くつかんだ。

 ああ、そういうタイプか。ナンパには二通りがある。気がないとみればすぐに引き下がるタイプと……

 ――こいつらみたいに引き下がらないタイプだ。


「何をするんですか?」


 俺が叫ぶと、


「女が、オレ様に逆らうんじゃねえ」


 そう叫ぶ。

 はあ、俺は男だって言うのに。

 いやこの場合は、男尊女卑をするこの男が問題とするべきか。

 とりあえず、


 俺は手に力を込める。


 だけど、振りほどけない。

 俺は男だけど、力はそこまで強くないことを忘れていた。

 たぶん目の前の男たちは体育系の部活で運動をしているのだろう。



 このままではまずい。


 ――そう思った瞬間だった。


「何をしているんですか?」


 そう、男に割り込みを入れる人が一人。理恵子だ。

 安心した、と思った。

 一人なら弱いが二人なら強い。


 一人の女(俺は男だが)なら、懐柔できるかもしれない。

 だけど、二人目が出てくれば一気にナンパの難易度が上がる。

 それに今この男たちがしているのは、ナンパに近いのだ。


「私の彼女に何をしているんですか?」


 そう、語り掛ける。

 理恵子、そこは私の友達と言ってくれ。

 話しがややこしくなる。


 そして案の定。


「彼女って、まさか百合カップル? ここはマンガじゃねえんだぞ。下らねえ」

「多様性」


 理恵子は小さくそう言い放つ。


「多様性という言葉を知ってますか? 差別ですよ。それに女同士は百合じゃなくて、レズです」


 そう言って俺に抱き着く。


 この場合、俺が男だと明かしたほうが話が早い気がする。

 だけど、理恵子は理恵子独自の方法で蹴散らそうとしたのだろう。


 結果として男たちはそのまま逃げだした。

 決まりが悪くなったのだろう。周りからの衆目も集め始めていたわけだし。


「ありがとう理恵子」


 そう俺がお礼を言うと、


「どういたしまして」


 そう、言われ、

 そしてもう一度ハグを舌。


「じゃあ、一緒に行こうよ、ナンパ阻止のために」


 そう、理恵子は笑って俺に言う。


「なんでよ」


 俺は言った。なぜこの流れで。


「班は一緒じゃないし」

「ばれなかったらいいじゃん。それに最初提案したの朱里ちゃんでしょ」


 確かに。ならいいか、と納得しかけた時だった。


「だめよ」


 そこに山本さんが来た。


「でも私も彼氏と一緒に回りたいって気持ちは分かるけどねえ」

「でしょ!!」


 理恵子は調子がよさそうに言う。


「単独行動してなかったら、文句言われないと思うし」

「うーん」

「お願いします」


 理恵子の押しが強い。

 そして観念したように、


「まあ、いっか」


 そう言って山本さんは笑う。

 そして、俺は理恵子に吸収されることとなった。


 ちなみに、水木さんに一応許可を取った。

 水木さんは特に何も言わずに、


「そう、分かったわ」


 と、二言で了承した。


 その言葉にはどういう意図が詰まっているのだろうか。

 その答えを俺は知ることは出来ないだろう。


 そして、あっけなく理恵子と二人きりのデートがかなった。


「良かったね、許可貰えて」

「先生にばれたら大問題だけどね」


 そうなったら大変なことになるのは言わずもがなだ。


 いわば単独行動ではないけれど、グループを離れて行動をしている訳だ。精製からしたら、きっと好ましくない行動だろう。

 だけど、そのおかげで、理恵子と二人きりに成れたのだからそこは喜ぶべきなのだろう。


「ねえ。理恵子」

「なに?」

「さっきはありがとう」


 俺は理恵子に感謝の気持ちを伝えた。

 理恵子は「どういたしまして」と返された。


「今までもあったの?」

「あるわよ。というか、理恵子と一緒の時にもあったと思うけれど」

「あったかなあ」

「あったわよ」


 確かにあったはずだ。プールでの出来事だ。


「その度面倒だったけれど、嬉しくもあったわ。だって、それは私が美人である証拠なんだもの」


 俺自身の容姿が認められている。それほどに嬉しい事は他にないのだ。


「でもさっきは、面倒なお方だったから安心したわ。理恵子が助けに来てくれて」

「どういたしまして」


 そう言って理恵子は胸を張った。

 その表情は誇らしげな物だった。


 そして、そのまま俺たちは回っていく。たまにナンパに会う事もあったが。そのたびに、理恵子が俺を守ってくれた。そのたびに百合カップルだと思われた。

 しかし、目立ち過ぎたからか、最終的にばれてしまった。


 先生に軽く怒られ、「班行動をちゃんとしてね」と、言われてしまった。



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