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クラスの孤高の狼がなついているのは女装した俺  作者: 有原優


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第45話 飛行機

 ついに飛行機に乗る。


「なんで、隣の席じゃないんだろうね」


 不満気に理恵子が言う。

 それは俺も思う。席くらい隣同士にさせてくれないだろうか。


 だけど、先生には席移動禁止と言われてしまった。


 移動をしたら、先生に怒られてしまうのは当然だろう。


「二時間くらいの別れだね」


 理恵子はそう言って軽く涙声になる。


「ええ、でも経ったの二時間だから」

「でも、経ったのに時間だから」

「経ったのじゃないよ」



 そう言って理恵子は少し不機嫌そうに言った。


「でも、もう乗らなきゃだね」

「ええ」


 俺は頷く。


 今俺たちは飛行機の待合席にいる。飛行機に乗れる時間になるまであと五分。そのための時間つぶしに用いられているのだ。

 そして、それは案の定で、先生が、



「そろそろ飛行機乗るぞ」


 と言った。

 ともなれば、いよいよ飛行機に乗らなければならない。


「私のこと忘れないでね」



 理恵子のその言葉。

 少し大げさだなあ、なんて思いつつ、俺は理恵子の言葉に「ええ、忘れないわ」と言った。



 飛行機の中、俺の座った席は、窓際の席。


 俺の隣に座ったのは、水川雪目さんだ。


 一緒の班ではない女の子だ。


「こんにちは」


 俺が声をかけると、


「どうも」


 と、一言言った、


 この反応は好意的なのだろうか、それとも好意的ではない反応なのだろうか。

 俺にはそれは推し量れないものだった。


 そもそも俺は水川さんとはほとんど喋ったことも無い。

 多分、この飛行機の旅の中で一緒に話すことも無いのだろうなと、一人思う。


 そして俺はイヤホンを耳につける。

 そして、テレビをつける。


 テレビがついてくれている点がありがたいところだ。

 何しろ、そのおかげで飛行機内の暇な時間をつぶすことができるのだ。



 そんなにありがたい事は他にはない。


 まあ、文句と言えば、彼女と一緒の席にしてほしかったという事か。

 だけど、それをあまり言っても仕方がない。


 まあ今回は諦める事とする。


 そして、見るアニメは、まあ、武美ちゃんが好きって言ってたあのアニメにしようか。

 布教されてたから、とりあえず暇つぶしのために見るか。


 そして俺はアニメを見る事にした。

 途端に、機内アナウンスが来た。


 その瞬間、アニメの放送が止まる。

 緊急血の脱出方法などが放送される。


 緊急時の処置を訊かないと、危険だから、アニメの放送は止められたのだろう。

 まあ、理恵子がいたらこの時間理恵子と話すことが出来て、楽しいだろうけれど、


 一人だから暇だ。

 隣の水川さんは、ちょっと気難しそうだし、

 そもそも、彼女も朱里アンチの可能性がある。

 ともすれば、あまりかかわるべきじゃないかもしれない。


 ふうと吐息を吐き、外を見る。


 外は、見渡す限りの平面な大地だ。


 ここを飛び立つんだなと、一人思考に励むと、


「あの」


 水川さんが話しかけて来た。


 意外だな、と思った。

 隣になったとは物の、一言も互いに喋らずに飛行機の旅を終える物だと思っていた。

 最近の俺は朱里にあまり自信が持てなくなっていた。特に女子相手に。


 勿論理由としては例のアンチくんだ。


「何かしら」


 俺は答える。


「朱里さんって……その」


 この少女は何を言わんとしているのだろうか。


「可愛い、ですよね」


 まさかそんな事を言われると思っていなかった。


「あの、山崎さんと、お呼びした方がいいのでしょうか」

「いや、朱里でいいよ。勿論奏の時は山崎さんと呼んで欲しいものだけど」

「分かりました、朱里さん」


 そして、彼女は拳をギュッと握りしめる。


「朱里さんの顔を眺めていてもいいですか?」

「え、ええ」


 そう返答したが、まさかの展開に、俺の心は置いてきぼりだ。


 彼女の顔は整っていると思う。

 メイド服は着ていなかったはずだけど、恐らく着てたらかなり映えていただろう。



 だけど、あの時の俺は別に帰宅はないと言っている人に無理に着せようだなんて思ってはいなかった。

 まあ、勿論それは今もだ。


 彼女は小動物系の可愛さだろう。

 童顔で、身長も150センチもない。

 どちらかというと、庇護欲を抱かせるようなタイプだ。


 だから彼女の性格的に、朱里の事は苦手なのだと思っていた。


「私はその間、何をしてたらいいのかしら」


 飛行機が、走り出す。

 そして、離陸のためのスペースへと移動を開始している。


「何もしなくても……いいです」

「はあ」


 何もしなくてもいい、なんて言われるのが一番困る。


「じゃあ、外を見てるわね」

「それでいいです」


 なんて言って、彼女は写真を撮る。

 飛行機の窓が映るように。


 俺は、そんな彼女の事は思考の外に追いやり、とにかく窓の外の景色を見て行った。


 電車のようにガタガタと走っていくが、その衝撃がバスに近しい物だった。

 段々と、速度を上げていくそれは、離陸の準備を今か今かと待ちわびているようだった。


 そして、いざその目的地に着くと、途轍もない速さで飛行機の機体が走っていく。

 遂に最高速に至った時、


 飛行機は地面を離れ、空へと浮かび上がった、


 俺はそんな外の景色を見て、いいなと思った。


 少しだけの気持ち悪さは感じたけれど、

 それでも飛行機は早さを増して、地面から離れて言っているのだ。



 そして、地面から離れ、ごみのように小さくなった時、


 外の景色は似たようなものになり、飽きた


 俺は彼女の顔をじっと見る。


「な、何ですか」

「何もない」


 その窓の外の景色に飽きただけだけど、

 まあ、その中で水川さんの顔を選んだ理由は彼女の顔をしっかりと、眺めていたい、というのがあるんだけど。


 それを素直に言うのは何となく違う気がした。


 だけど、一つだけ言える事は。


 彼女の顔は少しだけ勿体無い事になっているという事だ。


 というのも。服が少し勿体無いのだ。彼女の小動物的な顔を邪魔している。

 多分、自分の顔に自信がないのだろう。

 だから、大人っぽく見えるファッションを目指しているのだろうけれど、その方向性が間違っている気がするのだ。

 多分大人っぽく見えたい、と思っているのだろう。

 だけど、それが変に暴走して、顔と服があまり合っていない。


 しかし、理恵子の時みたいにそれを言っていいのか、指摘してファッション指南をした方がいいのか。

 非常に迷っている。


 俺はその気まずい空気を何とかするべく、イヤホンを耳につけ、アニメを見た。


 多分、今の俺には理恵子が必要なのだろう。

 理恵子と離れてからはそこまでの時間は経っていないのに、求めてしまっている俺がいる。


「理恵子」


 小さく俺は呟き、慌てて首を振った。

 今はそれを考える時じゃない。

 違うのだ。


 そして、アニメに没頭しようとするが、


 集中が出来ないので、俺好みのアニメに切り替える。

 アニメというよりも映画だけど。



「あの」


 その途中で、水川さんに話しかけられる。


「どうしたのかしら?」


 俺は平常を表に出して聞いてみる。


「朱里さんにとって今のわたしってどう見えますか?」


 唐突な質問だ。

 俺は軽く首をかしげる。

 だけど、いまするべきことは違う。首をかしげては水川さんを不安にさせるだけだ。



 理恵子の見た目は可愛らしい。だけど、今日のファッションとしては、美人を意識している。

 だからこそ、首をかしげては不安にさせるだけだ。

 ;

「なんでそう訊くのかしら」



 俺はそう訊いた。


「私の服装があっているのかが不安で」


 そう小さな、消え細りそうに言った。


「大丈夫」


 と、俺は言った。


「大丈夫だから、不安な気持ちを聞かせて」


 にっこりと笑いながら、彼女の不安な気持ちを出させないようにして聞いた。


「うん」


 そう、静かにうなずき、


「私は、自分でもファッションが下手だと思うの」


 下手だと思う。

 確かにそんな感じがする。

 底は否定しない。


「この前のモデル誌見ました。かわいくて憧れました。だから、どうしたら、貴方みたいになれるのかなって」

「分かったわ」


 俺は頷いた。

 そして、俺はうんうんと頷き、


「私が今から指南してあげる。この飛行機の時間を使って」

「ありがとうございます」


 そう言って水川さんは頭を下げる。

 だけど、問題点もある。


 この飛行機の時間、ネットが使えない。

 だから、口頭でしか伝えられない。


「水川さんが良ければだけど、」


 俺は腕を組む。


「後で、連絡先交換しない?」


 俺はそう言った。


「いいんですか?」


 目が輝いている。


「え、ええ」


 俺がそう言うと、「ありがとうございます」と、再び頭を下げられた。

 勿論連絡先交換は今は出来ない。

 QRコードでの交換が主流な現在。ネットを使わないと無理なのだ。


 そして、その飛行機の中で、俺は彼女に色々とファッション講義をした。とりあえず似合いそうな服や、逆にあまりお勧めしない服などを必死に伝え続けた。

 その説明を聞いた後、彼女、水川さんは少し残念そうな顔を見せた。

 というよりも、率直に言うと、顔を真っ赤にしていた。


 今着ている服が少し気に入らなくなったのだろう。

 俺も大分言葉に気をつけながら伝えたのだが、それでも、事実を突きつけられるのはきつかったらしい。


「大丈夫よ。そっちの方がいいだけで、そこまで悪い訳じゃないから」


 そう、俺が言うと、彼女は静かにうんと頷いて見せた。


「好きな人でもいるの?」


 俺は意を喫して、彼女にそう告げた。


「好きな、人?」

「ええ」

「いません、けど」

「いないんだ」


 俺が言うと、


「逆にいるように見えます?」

「それ、答えるの難しくない?」


 俺がそう言うと、笑って「ですよね」と答えた。


「……本当の事、言った方がいいですか?」


 ほんとうの事、それは半分自白みたいな物。

 さっきああはいったけれど、実はいるんだ。


「それは、お任せするわ。無理に聞き出す物でもないしね」

「ありがとうございます」


 そう言って、背中の椅子に体重をかける。


「寝てもいいですか? 眠たくなってしまったので」

「ええ、いいわよ」


 俺は言った。


 すると、「ありがとうございます。では、言葉に甘えて」


 そう言って眠った。

 俺はそんな彼女の姿を軽く眺めた後、


 壁に頭を支えてもらい、


 アニメをBGM代わりにして、俺も目を静かに閉じた。




 早く到着して、理恵子とゆっくり喋りたい。

 そうは思いつつ、暫く経ったら、また離れ離れになるんだな、なんて思う。

 勿論団体行動だから、いきなり離れるわけではないけれど、

 でも観光地についたら、班行動で回るのだ。


 あ、でも、バスでは隣同士で座れるのか。

 それならば少し安心だな。


 そんな事を考えながら眠りについた。



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