表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスの孤高の狼がなついているのは女装した俺  作者: 有原優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/42

第三十七話 演劇

 

 そして、俺はついに舞台に出る時が来た。


 どきどきする。

 こんなこと初めてだ。


 だけど、頑張って俺の役割をやらなければ。


 その前にだ。


『俺は、文化祭のシフトが合わさったから無理だけど、武村朱里さんが劇に出るらしい」


 そう、親父に伝えておく。

 俺は何をしているんだろうか。だが、もういい。


 俺は、嫌いなのに親孝行がしたいとでも思ってしまったのだろうか。




 劇の部台に立つと、そこには沢山の人が座っていた。

 100人は座ってるなと、概算で数えた。

 横九列で、縦に一五列くらいだ。


 ふう、と軽く息を吸い込み。俺の役目を務める。


「私はここに投獄されるのですね」


 そう、檻の前で言う。

 すると、看守役の人が「そうだ」と強く言い、俺の背中を押す。

 そして、檻をなじった部屋に閉じ込められ、檻の鍵を閉められる。


 そして裏のスクリーンが檻上の模様になり、一気に部台が檻とかした。


「私は邪魔なのですね」

「そうだな。ま、一つだけきおつけておけよ。暗殺にな」


 そう言って、男は去って行く。俺は手で顔を覆い、泣く演技をする。


「私は平穏に行きたいだけ。なのになぜ!!」


 強く言う。


「私は、この国のことが大好きで、放っておいても害はないはずなのに」


 檻をもした小道具を強くつかむ。


「私はこんなことなら、この国の王族になんて生まれたく無かった」


 そしてよろけて、その場に倒れ込む。


 これで、シーン一が終了だ。

 何とか、演じられた。


 セリフの抜けもたぶんほとんどない。

 ほとんどないと言ったのは、少しセリフが間違ってるかもしれないからだ。

 だが、大まかなセリフの意味とかは間違っていないだろう。


 その間に俺もすることがある。

 次のシーンのために、ぼろぼろの衣服を着る。

 最初のプリンセス衣装から、囚人服に変わったことを示唆するために。

 そしてすぐにメイクも質素なものにした。



 そしてその裏では、第一皇子と、第一王女の話し合いが行われている。


 二人の王族の言い合いの応酬だ。

 その中で力のない第二王女が、投獄された、という設定なのだ。


 そこでは二人で手を組んで邪魔ものを一人投獄できたと高笑いしている。

 そして王位継承権争いについての言い争いをしている。



 そして次の俺の番が来た。


 ここは、俺の独壇場にしたいところだ。


 俺はこの役のことは好きになってきている。

 というのも、朱里要素を少なくとも持っているのだ。


 いや、それは俺が朱里風に演じたから、そう思っただけかも知れない。

 ただ、俺はこの役のことを誇りに思う。


 普通台本というのは最初から通しで読むことが多い。

 そう言う訳で俺は最初の方のシーンには自信がある。逆を言えばあとのシーンになるほど自身が喪失するという事だ。


 とはいえ、二時間のみだが、練習はしっかりと出来た。


 ここでは王子様が助けに来るシーンだ。



 まず、俺の自分語りから始まる。

 暗転の中でだ。


「私は、それからも、絶望の淵に立たされた。あれからという物、食事はわずかで、服もぼろぼろの布着を着させられ、さらには、衛生状況の悪さ。ッコホ。明らかに私を尊重していないという事がいともたやすくわかるものだ」


 そして、暗転が開かれる。


 その片方に俺、そのもう片方に王位継承者候補たちの姿がある。


「あの妹の処遇はどういうつもりなの?」


 王女は机をトンと叩き、声を発した。


「全然死なないじゃないの」


 事故を装って、殺そうとしているのに、その肝心の妹が全然死なないのだ。


「こうなったらいいわ」


 王女はそう呟き、


「あたしが殺しに行く」


 そう、強い決意尾を込めた。

 さて、このシーンも大変だ。

 俺は、セリフ無しの時間を作らなきゃいけないのだ。


 もう一方のシーンが動いている間にも。


「さあ、あたしの守護聖獣よ、あいつを殺しに行きなさい」


 王女がそう告げ、王女はすたすたと、掃けていく。


 次は、王子が俺を助けに行くシーンだ。

 正直これが、メインのシーンの一つなんだが、ココの演技が難しい。

 求愛されるシーンだ。


 朱里として求愛されることは多々ある。

 しかし現実、俺は男だから何か理由を付けて断って理宇。

 しかし、ここは非現実(ファンタジー)、断ることなどない。

 しかし、ココはむしろ男子で良かったのかもしれない。

 だって、変なテレが生まれることなどないのだから。


「あれは、」


 俺は呟く。

 守護聖獣だ。三人くらいで必死に動かしている。

 名あkの一人理恵子がいる。

 蒼自摸劇に参加してたのあk。


「ついに命を奪いに来たのですね」


 俺はそう呟いた。

 暗殺者として守護聖獣を解き放ったのだ。


「私は、そう簡単にやられなどしません!!」


 俺はそう呟き、守護聖獣に立ちはばかろうとする。そんな時だ、


「おい、何をしている」


 俺の前に一人の男が現れた。

 王子様役だ。


 彼は俺をお姫様抱っこした。

 いやいや、セクハラお構いなしだな。

 とはいえ俺が男だから別に関係ないけど。

 台本にはお姫様抱っこすると書いてあったから、元々こういうストーリーだったのだろう、


 そして彼は、俺をそっとおろして、


「大事丈夫ですか? オーリン姫」

「ありがとうございます。……えっと」

「ルクセンだ」


 そして、ルクセンは敵を一刀両断にした。


「私はオーリン姫、貴方を私の妃に迎えたいと思っています。よろしいですか?」

「え、えっと、その」


 戸惑いの感情を出す。


「この国にいても未来はない。しかし、私の国に来れば、私が守ってあげる。オーリン姫、貴方の命を奪わせはしない。……好きだ、オーリン姫」


 プロポーズ。


「はい。ついて行きましょう」


 俺はそう覚悟を決めた声で言った。


 これでシーンは半分近く終了か。

 結構な疲労感だ。

 劇なんて出るのはほとんどないからな。


 そして、またまた第一王女たちのシーンだ。

 このシーンは休めるから楽だ。

 俺は、水分補給とばかりに水を飲みだす。


 美味しいなと思う。


 思ってた以上に水分を失っていたみたいだ。


 そして俺は次にシーンのためにセリフを頭に叩き込む。


 後はどの動きをすればいいのかも。

 なんだか少しづつ楽しく位なってきた。


 だが、恐らくこの劇が終わったら、俺は疲れて倒れるのかなとも思う。


 しかし、練習期間2時間弱でよくもまあ、こんな頑張ったなと思う。

 何しろ、リハ映像を一度見ただけだし。

 そう言うには、最後まで失敗しないでやったらいいんだが。



 ふう、そして六分程度の休憩時間は終わりを告げた。

 また、働く番だ。


 そして次のシーンで俺は王宮にいた。


 王宮で美味しい食事を食べるシーンだ。


「それでこれからのことなんだが」

「私、復讐がしたるです」


 俺はそう告げた。


 ここから、復讐へと走るのだ。

 そして、物語は後半戦に。


 しかしやっぱりこの台本。

 部長が書いたとは聞いていたが、やはり小説の好みにかなり影響されている気がする。



 そして、物語は重要なクライマックスシーンへとはいる。


 作戦会議だ。


「私はぜひ、祖国を取り戻し、私の愛する民たちを救い出したいです」


 そう俺がいい、王子役の手を取る。


「こんなことを頼むのもやぶさかではないですが、お願いできませんか?」


 演じている俺が言う事なのかは分からないが、あまりにも図々し過ぎるお願いではないか、と思う。

 地味にこの前のシーンで、国民たちが貧困にさいなまれているシーンがあったのだ。


 この後に、


「成功した暁には、必ず借りを返しますから」


 そう言うが、はっきりと国同士のやり取りなのだから、しっかりと詳細に話し合った方がいいと思う。



 俺は別に歴史好きとか、会おう言う小説を読むとかは無いが、それでも俺は矛盾があるなと思う。

 勿論こんなの、愛の力、なんていえば万事解決だし、そもそもプロの台本ではないのだが。


「お願いします」


 そう言って俺は頭を下げた。

 それを見て王子はそっと椅子に座る。そして一瞬の間を持ち、「分かった」そう言った。



 そして、暫くの休憩時間がある。

 とは言っても次の出番まで10分も無いが。


「疲れた」


 俺はぼそっとぼやいた。

 流石にハードすぎる。

 精神的に疲れてきた。

 二時間弱しか練習もしてないのに、よくもまあ、俺はここまで演じられるわ。

 俺ってもしかして演技の天才なのでは?


「眠たい。くそ、ここまで大変だとは」

「朱里ちゃんなのに奏口調……」


 理恵子がそう呟くも、今の俺には関係が無い。

 ここで朱里体力を貯めなくては。

 いや、朱里体力ってなんだ?


 まあ、細かいことはどうでもいい。

 思考が回らない。


 そんな時、口に物がぶち込まれた。

 チョコレートだ。


「美味しい」


 俺はそっと呟いた。


「疲れた時には当分だよ。どう、朱里ちゃん元気でた?」

「ああ、少しな」

「また、可愛らしい王女朱里ちゃん見せてね」

「ああ」


 出番はもうすぐだ。


「さあ、私あっちが受けた報いを今ここで晴らしてあげる。あはははははは」


 俺の正直な感想、姫様どうした。だ。

 なんだか、キャラ崩壊している気がする。


 それだけ恨みに思ってるという事なのだろうか、それとも。

 まあ、そんなことはどうでもいい。


 俺は俺の演技をするまでだ。


「おいおい、そんなことを言って、戦うのは俺たちなんだぞ」


 王子が言う。ごもっともだ。


「分かっております。ただ、姉さまたちが地獄に落ちるのが見たいだけです」

「実は性格悪いな。まあ、そんなところに惚れちゃったんだけどな」


 そう言って王子が適役のモブ兵士を倒していく。

 てか、あれ欲見たら理恵子じゃね?

 理恵子結構劇に出てないか?



「姉さま、兄さま、あなた達の治兵は終わりです。私がこの国を本来あるべき姿に戻します」

「小娘があああ」


 そして最終決戦だ。姉と最終決戦。

 剣で戦う演技をする。これもなかなか大変だ。

 俺は一応男だから、向こうよりも力は強い。だから力を抑えめに闘わなくてはならない。


「あんたなんて、あんたなんて」

「黙って」


 そして俺は一気に踏み込み、剣で切り裂いた(演技)をした。


「これですべて終わりですね」


 俺はそう呟いて、剣を柄に収めた。


「あらためてありがとうございました」


 俺はそう頭を下げた。王子に向かって。


「私たちのために、ここまで尽力していただいて」

「いや、いいんだ。その代わり」

「代わりに?」

「俺の妻になってくれ」


 急展開過ぎるだろ。思わずそう突っ込みたくなった。

 元々結末を知っていたがそれでもだ。

 だが、まあこれは異世界恋愛を主軸とした台本だから、こうなることは当然なのだが。


「私は、この国の王になります。だから受け入れられないです」

「いや、それについてはいい考えがある」


 そして、共和国位となり、姫は王子に嫁いでハッピーエンドとなった。

 なんか、最後無理やり感がすごかったが、気にしない。



 そしてカーテンコールがあって、俺は演劇終わりに、観客がすべて吐けたのちに、イスに座った。



「もう限界」


 疲れすぎてやばい。

 劇自体は三十分程度だったはずなのに、まさかここまでつかれるとは思っていなかった。

 俺の体力をほぼすべて出し切ったかあっちとなる。


「じゃあ、片付けとかは私たちでやってるから、休んでいて」

「ええ」

「後、本当にありがとうね助かったわ。穴埋め以上のことをやってくれたと思ってるし」

「それは良かったです」


 そんな時メールが来た。

 どうやらメイドカフェの方で朱里を出せと、軽い暴動?みたいなのが起きているらしい。


 俺の仕事は終わらなさそうだな。

 それに、親父関係の出来事を軽く心の中で払拭できたし。


 行くか、と俺はメイクをメイド朱里に戻して、教室に戻る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ