第三十五話 コンセプトカフェ
その後、俺たちは、親父と別れ、近くのコンセプトカフェに行った。
「おかえりなのです」
そう言って出迎えられた。
しかし、かなりのコンセプトだ。
おかえりなのですって、アニメ感のある言葉で言われたし。
まあ、とはいえ俺たちのクラスも女装いている人(俺)がいたし、別にそこまで特殊なわけではないか
結構思いとは思うが、ここは違う意味ですごい。
「お兄ちゃん。ご注文は何にするのです?」
更にすごいコンセプトが来た。
お兄ちゃん+なのですか。
別に俺はそう言ったアニメ感が、そんなに好きなわけでは無い、が。
少し楽しいなと思う。
「じゃあ、私はこのカフェラテでお願いします」
そう、俺は朱里の声で言った。
笑顔で、店員さんは、一瞬固まった。
やはり、奏の状態で、朱里ボイスを出したのが違和感の原因か。
だが、高校生とは言え、このコンセプトカフェに参加した猛者。すぐさま、「分かったのです」と、元のキャラで言った。
流石だ。
「奏君。恥ずかしいよ」
「え?」
「やっぱり違和感凄いから」
奏が朱里の声で言うのが、という事だろう。
やはり、店員さんだけじゃなく、理恵子もそう思ったか。
やはり、しっかりと女装しないときついか。
「それはごめん」
「いいよ」
そう理恵子が笑う。
「でもさ、周り、すごいね」
「ん?」
「だって、どれもこれもアニメっぽい感じなんだもん」
「ああ、良くこんなのが企画通ったなと思う」
周りの景色も、アニメ感あふれる景色だ、
全部が全部すごい景色だ。
まるでコラボカフェみたいな感じだ。
しかも、そばに魔法の薬みたいなものもあるし、メニューも少しアニメに寄せてる感じがする。
とはいえ俺はカフェラテを頼んだし、アニメにそこまで興味があるわけではない。
ただ、人並みくらいだ。
しかし、こういった阿武根がおそらく守備範囲外だ。
しかし、メイドカフェもだいぶ行っている感じがするが、ここは凄いな。
ここのみんなはアニメみたいな格好して、「お兄ちゃんとかなのですとか、ツンデレキャラとかやっている。
恐らく、有志者だとは思うが、中々すごいと思う。
「よくこんなに自分を捨てられるな」
俺は思わず小声で呟いた。
「奏君もすごいと思うよ」
「あれは、楽しくてやってるから」
親父が乱入したせいでよくわからないことになったが。
「この人たちも楽しくてやってるんじゃないの?」
「そうかな」
「そうだよ」
俺からしたら恥を捨てているようにしか見えないこの行為も、俺の女装と同じことなのだろうか。
でも、確かに楽しそうには見える。
「理恵子、俺は少し迷ってることがあるんだ」
俺は理恵子にそう呟く。
「親父の事なんだけど」
「いやー俺にも茂木が来たかあ」
あ、と俺は思った。
噂をすれば、親父だ。
こうなってはこの話はできない。お預けだ。
しかし、今日は中々どうして親父との遭遇率が高いのだろうか。
しかし、これ。さっきは朱里の時だったからよかったものの、今回は奏としてだ。
中々気まずい。俺はこの状況どうしたらいいんだ?
「あ」
親父がこっちを見た。
終わったかもしれない。
そして一気にこちらのテーブルへと向かう。
「お前たち、今のは見たか?」
俺はどうするべきなんだ?
「はい、見ました」
理恵子が言った。
正直だ。だけど、これは良い逃れするべきではないと、理恵子が判断したのだろう。
「わしも、こういった高校生の乗りに参加するのは久しいから楽しいんじゃ」
そう言って豪快に笑う親父。
「あとで、朱里ちゃんに会えたらもう最高なんじゃけどなあ」
「それは……」
朱里はいつ戻ってこれるか分からない。トラウマでもう今日は出来ないかもしれない。
そう、親父には説明したが、諦められないらしい。
どうやら話によると、親父が文化祭に来れるのは今日だけらしい。明日は、親父はこれないという事だ。
「俺だって、接客してもらいたいけどさあ」
気が付けば俺の口からそう言った言葉が出てきた。しかも無意識に。
でも、朱里に接客してもらったら何と幸せな事なのだろうか。
俺は、朱里に接客してもらうことは出来ないのだ。
それは俺が二人になるということだから。
「なら一緒に行こうじゃないか」
それが無理なんだよ、という言葉は胸の内に抑え。
「戻ってくるかどうかわからないんだよな」
そう告げた。
俺としては戻りたいと思っている。
普通に朱里として褒めてもらうのが嬉しいのだ。
そう、接客が楽しいのだ。
「朱里ちゃんと私は普通に友達なんですよね」
理恵子がそう言った。
「だから、今日会えなくても、今度会えるかもしれません。あくまで、今日は文化祭だけなのですから」
朱里として断ればいいだけか。
そしたら、楽に収まる話だ。
「分かった。なら今度一緒に遊ばせてもらうとするかの」
「はい!!」
これで、ひとまず収まったか。
しかし、親父ともうこれ以上話したくはない。
帰って欲しい。明日は来れない的なことを言っていたが、どちらにしろ、もう今日は嫌だ。
とりあえず、親父を振って、早速俺は、店に戻った。
理由はただ一つ。
親父と会いたくないから、逆に女装していこう。
奏はどうするか。トイレに行ってると口裏を合わせてもらおう。
「お待たせ」
俺は理恵子に行った。
「奏君から朱里ちゃんになると不思議な感じがするね」
「私もそう思うわ。ふふ、不思議な感じね」
最悪親父に会ったとしても、あまり親しくしないようにする、
今できる対策はこのくらいしかないのだ。
「じゃあ、理恵子行きましょ」
「うん」
そして俺は理恵子と手を結びながら、歩いて別の場所へと向かった。




