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クラスの孤高の狼がなついているのは女装した俺  作者: 有原優


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第三十三話 親父との遭遇

 そして早速俺たちは、シフトに入った。理恵子が奥で料理を作り、俺が料理を運ぶのだ。


「お疲れ様です」


 俺がヒロイン含む曽於場にいた人たちに向かって挨拶をする。すると、交代の時間だと察したのだろうか、みんな俺たちに「後はよろしくね」と言った。


 さて、仕事の時間だ。


 俺は早速裏で引き継ぎの話をして、そして、さっそく会場の方に出た。


「お客様、ご注文はお決まりでしょうか」


 俺はできる限りの笑顔でそう言った。

 すると、みんなこちらを見た。

 俺の役割はひとまず注文を聞くことだ。

 今は忙しいから、それぞれで役割分担をしなければいけないのだ。


 なんだか照れるな、と俺は思う。

 何しろ、客の目線がかなりこちらに行っている。

 今までもそんな経験は何度もしたことがあるが、ここまで露骨なのは初めてだ。


 きっとこのメイド服のせいなんだろうな。

 だからこそ、見られているのだろう。

 正直気分がいい。

 朱里の可愛さをみんなに見せつけているのだから。


「えっと、オムライスで」


 そう言った客さん。それに対して俺は笑顔で、「かしこまれました。オムライスですね」そう笑顔で言った。


 だが、仕事は終わりではない。


 いったん裏に下がり、注文を伝えた後、また会場に出て行って次々に注文を聞いていく。


 分かってはいた事とは言え、かなりの重労働だ。


 正直、文化祭にしてはこの会場は盛り上がりすぎだ。

 まるで、ゴールデンタイムのファミレスかというくらいに盛況している。


 だけど、多分俺のせいなんだろうな。

 俺の宣伝効果が強すぎたのかもしれない。

 実際にポスターにメイド朱里の写真も載っているし。


 そしてしばらく働いた後、俺は休憩をいただくことになった。

 とはいえここでの休憩は五分程度だが。


 理由としては流石に俺だけが働き過ぎているから、という事だ。


「朱里ちゃんお疲れ様」


 理恵子俺にそう言ってくれた。


「ええ、流石に疲れたわ。今までで一番かも」


 まさかここまで重労働になるとは思っていなかった。

 所詮は文化祭レベルの規模なのだろうと思っていたのだから。


「理恵子はどうだった」


 理恵子も俺のついでに休憩を貰っている。


「疲れたよー。でも朱里ちゃんほどじゃないね」

「……そう」

「ところで朱里ちゃん。やっぱ思ったんだけど、奏君として私と回る事って可能だったりする?」

「え?」

「私と、いや俺と?」

「うん。やっぱりせっかくの文化祭だから奏君とも回りたいよ」


 そう言って「だめ?」と、上目使いで聞いてくる理恵子。

 ダメとは言えないな。


 正直、俺もその気持ちもある。

 やはり朱里だと、目立ちすぎてしまうのだ。

 そのせいで、中々落ち着くようなことは無い。


 回るなら、静かに回りたいのだ。



「いいわよ。どこかでそう言う時間を作りましょう」


 俺がそう言うと理恵子は生き返ったかのように、「わーい」と万歳をした。


 そして、休憩時間が終わった。


 さて、さっそく仕事をしょうと、さっそく注文が決まったお客さんのところに行く。


(は?)


 俺は驚いた。そこにいたのが、親父だったからだ。


(なんでここに居るんだよ)


 どういう顔をして会えばいいのか分からない。

 俺はずっと、女装していることをこの人にずっと秘密にしてきた。

 だからこそ、ばれるわけには行かないのに。


 きっとバレた暁には、もう、絶縁されるかも知れない。

 今まで文化祭なんてイベントには来たことが無かったから完全に油断していた。


「ご注文はお決まりでしょうか」


 俺はばれていないことを祈りつつ、親父に訊く。


「じゃあ、このカルボナーラをお願いします」


 そう、親父は言った。

 とりあえずはばれていないようでほっと心の中で一息吐く。

 とりあえず、俺は職務を全うしなければならない。


「そう言えばだが、俺の息子もこの学校に通っているんだ」

「そうなんですか」


 俺はそう返事する。

 正直さっさと戻りたい。だが、ここで半端な返事にとどめておくのもリスクがある。


「それで、僕の息子がどこにいるのか、知らないかい?」


 だったらメールで聞けよ。そう、朱里じゃなかったら怒鳴りたい。

 しかも、俺って言ってる。

 まさかいつもの一人称わしは、威厳を保つためにやっているのか?


「なんという名前なのでしょうか」

「奏だ。山崎奏だ」


 まあ、ここで言ってくるのはその名前しかないよなあ。


「確か、他のクラスを回っていると思います。でも、それ以上は……」


 すみませんと、頭を下げた。

 すると、「構わないよ」と言って親父もまた頭を下げた。


「それにしても美人さんだね、がんばってね」


 裏に下がろうとする俺に対して親父がそう言った。

 正直言って意外だ。

 だって、親父は基本厳格だ。

 無論、女に可愛いねなんて言う言葉は、姉ちゃんにも母さんにも聞いたことが無い。


 俺はそれを聞き、無言で裏に下がった。


「ねえ、理恵子訊いて」


 俺は理恵子を捕まえる。


「どうしたの、朱里ちゃん」

「親父が来てた」

「親父って、朱里ちゃん、いや、奏君の?」

「ああ、そうだ」


 そう敢えての奏口調で言う。


「だから、あの男について考慮して欲しい」

「うん。分かった」


 理恵子はちゃんと俺の意思をくみ取ってくれたのだろうか。


「それにしても、朱里ちゃんの姿で奏君が喋ってたらなんとなくすごい」

「はは、そうか」


 俺はそう言って再び持ち場に戻った。


 だが、直ぐ後に悲劇が起きた。


「ねえ、君美人だね。僕とこの後回らない」


 今日、メイド服を着ることになった時点でこうなることは予測している。

 何より、今までナンパされた回数なんて何度もあるのだから、


「ごめんなさい。私は誰とも一緒に回るつもりが無いので」

「でも、俺はさ、お金持ってるぜ。ご馳走してやるから」

「ごめんなさい。シフト中なので」


 あくまでも無理だ。

 折れるわけには行かない。


「なんでだよ」

「こらっ!!」


 その瞬間、大きな声が会場宙を包み込んだ。その言葉を受け、会場内が一瞬静かになる。

 その声の発信元はというと、俺の親父だった。


「彼女が困っているだろうが。君は、人を困らさせるような人なのか。その程度の男なのか?」


 親父が起こっている。しかも真剣に怒りをぶつけている様子だ。


「君は最低な人間だよ」

「なんだとー!!」


 男が起こる。そこに二人の男子生徒が割り込んできた。


「朱里さんを守るのが」

「俺たちの仕事だ」


 勿論朱里親衛隊の二人だ。


「ありがと」


 俺はお礼を言う。

 正直、男だからいざ殴られそうになっても、抵抗することはできる。

 だが、ありがたい。

 親父がいる前で下手に抵抗するわけには行かない。


「ふう」


 俺はため息をつく。


「大丈夫ですか」


 親父が俺に声をかける。


「ええ」


 俺はそう返事をした。

 でも、大丈夫ではない。

 親父とこの状況になってること自体がきついのだ。


 ここは、少し無理を言わせてもらおう。


「ごめんなさい、少し休んでもいいかしら」


 俺はそう言って後ろに下がった。

 ナンパの傷というよりも親父にこれ以上関わりたくなかったから。


 そしてその残り時間で休憩をいただくことになった。

 というより、この文化祭の日程が俺達二人に集中的に疲労が行くようになっている。


 そのため、休憩があっさりと受け入れられるようになっていたのだ。


 それに、もう一つの問題があった。

 それは在庫が思った以上に早くなくなって行っていたという事だ。

 そのため少し消費量を抑えなくてはならない。

 だからこそ、ここで二人のメイドエースがいない時間を作りたかったそうなのだ。


 そして俺は理恵子協力の元、メイド服を脱ぎ、さっそく奏に戻った。


「それじゃあ、理恵子行こうか」

「うん!」


 理恵子は笑顔で頷き、俺たちは早速他教室を周りに行った。


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