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クラスの孤高の狼がなついているのは女装した俺  作者: 有原優


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第三十話 ショッピング

 まずは理恵子の服を選ばなければならない。

 理恵子に似合う服を考える。これはまた楽しい事だ。

 何しろ、いつもと違う視点で考えなければならない。

 理恵子に似合う服は朱里とは違う。

 朱里は大人っぽい服が好ましいが、理恵子は可愛らしい系の服が好ましいのだ。

 それに何より、理恵子は素材が良いのだ。


 理恵子には少しベンチで休んでもらい、理恵子に似合いそうな服を考える。

 そう言えば千恵子と出会った場所は服屋さんだったなと、初めて会った時を懐かしむ。

 さて、思い出にふけっているだけではいけない。早く服を選ばないと。

 慎重に理恵子に似合いそうな服を考えながら、一着ずつかごの中に入れていく。


 そして、ようやく十着もの服を選んだ。


「理恵子お待たせ。さあ、試着タイムよ」


 そう言って服を見せる。


「うん! 分かった」


 理恵子はそう言って笑顔で試着室の中へと入っていく。


「ねえ、武村さん」


 そんな時に店員さんの木村さんが話しかけてきた。


「来てくれてよかったわ。正直もう来ないかと」

「え? どうしてですか?」

「最近来てなかったし、それになんか気まずくなったのかと思って」


 気まずくなった。……それはおそらく、俺が木村さんに女装のことを話したことだろう。

 それがいわゆる俺の決別宣言の様な物だと思ったのだろう。


「そんなことは無いですよ。私にとって初めて女装をして外に出た場所が、ここなのですから」


 そうだ。俺はこの服屋さんで服を買うのをやめることなんて無い。木村さんは親切だし、品ぞろえもよく、値段もそこまで高くない。

 逆にここで買わないで、どこで買うんだという話だ。


「そう、ありがとうね」

「ええ。そう言えば最近木村さんに服を選んでくれることもなくあんりましたね」

「そりゃ、武村さんが服を選ぶのが上手くなったから、あまり私を必要としなかったからよね」

「ええ。あ、でも私今度木村さんに服を選んでもらってもいいですか?」

「え、急にどうしたの」

「私、女性服には興味があるのですけど、男性服にはあまり興味が無くて選べないんですよ。……今まではそれでいいと思ってましたけど、これからは彼女……理恵子とデートしたりするので、必要になりますので」

「なるほどね、じゃあ今度はお姉さんに任せなさい」

「はい」


 ありがたい事だ。

 そもそも俺は中学生になってから奏として、外出することが、学校に行くとき以外はほとんどなかった。それに学校へは、制服で行く。つまり、男性用の私服を切る必要がなくなってしまったのだ。


 そして、木村さんは付け加えるように「男性としての武村さんも気になるしね」と言った。


 そして、そんなことを話していると、理恵子が試着室から出てきた。


「朱里ちゃんどう?」


 そこにはかわいらしい服を着た理恵子がいた。中々似合っている。


「ええ、可愛いと思うわ」


 でも、


「もっと似合うのがあるわね」

「そう言うと思った。朱里ちゃんには者足りないだろうって」


 自分で分かっていたのか。


「ええ、このくらいでは満足できないから」

「じゃ、次の着てくる」


 理恵子は俺が写真を撮るとすぐに、試着室の方へと戻っていく。

 さて、この十着に理恵子に似合う服はあるのだろうか。

 だが、ちゃんと理恵子も楽しんでいるようでよかった・


 そしてその光景を木村さんが笑顔で見ている。

 お母さんみたいな顔で。


 まあ、だが朱里という人物を形成するうえで、一番関わってるのは、両親ではなく、木村さんだと言えるだろう。そう言う意味では、第二の人格形成の母ともいえる。



 そして、理恵子の試着は長きに及び、十二着目で、終了した。


「はあ、つーかーれーた」


 そう、椅子の背もたれに頭をつけ、疲れている理恵子。

 こんな長い時間着せ替え人形になったのだから当たり前だ。


「少し休憩しましょうか」

「うん!」


 俺の提案に理恵子が元気よくうなずいた。


 そうして三十分後。理恵子による服選びが始まった。



「朱里ちゃんだから、あまり変な服着せたくないよね。朱里ちゃんってこれNGとかある?」

「そうね……」


 俺は少考する。


「私的にあまり子供っぽいのはだめね。例えばこういうのとか」


 そう言って俺は国民的人気キャラクターの絵が印刷された服を指さす。

 こういうのは、おどけなさが残る。

 俺的に朱里は妖艶な大人の感じを出したい。現にメイクもそう言う感じにしているしな。


「分かった」

「それと出来れば、大人っぽいのでお願い」

「はーい!」


 理恵子は元気よく言って服選びに入る。俺はその間、ベンチで休憩だ。

 ベンチから、理恵子の選んでいる様子を見やる。

 結構苦戦している様子が見える。


 今思えば、俺が五着くらい見繕ってきて、理恵子にその中から選ばせるのでもよかったな。


 でもそれだと、買った服を、理恵子が選んだ服としてか、俺が選んだ服としてか、どちらの視点で見たらいいのか分からなくなる。

 だから、理恵子が全部選ぶ、今の形式の方が結局いいのだろう。


 そして、理恵子が選ぶ光景をスマホを見ながら見ている事三十分。ついに理恵子が、


「選んだよ」と、ぜいぜい息を切らしながら言った。その様子を見るに、よほど選ぶのに苦労したようだ。

 その服を見ると、中々よさそうな服がいくつもあった。


 早速、一択試着する。


 そのために、試着室で服を脱ぐ、そして出てくるのはピンク色の下着だ。勿論、女性ものの。

 流石にブラジャーはつけないが、下着を制服の下に着ているのだ。

 俺的には最初はこれが似合う女性になりたかったと思っていた。だけど、今は正直別の気分だ。

 元から女性になりたかったわけでは無い。ただ、憧れを持っていた。

 しかし、今は男でよかったと断言できる。

 理恵子とのデートの最、男にも女にも成れる、今の状況が最高なんだから。



 「この下着可愛いなあ」


 俺はそう呟いた。

 俺は正直最近この下着しか着ていない。

 無論朱里の時だけだが。

 そして下着の上から、理恵子が選んでくれた服を着る。おっと、これはスカート型の服のようだ。

 まあ、制服もスカートだしな。


 そして、着て、理恵子の前に出る。


「……どうかしら?」


 そう理恵子に問う。おrはまだ鏡を見ていない。俺の感想よりも先に、理恵子の感想を聞きたいのだ。


「うん、可愛い!!」

「そう」

「でもね、なんか違うの」


 理恵子はきっぱりとそう言った。その言葉を受け、俺は鏡を見る。

 確かに似合っている。だが、理恵子の言う通り何かが違う。


「それは、朱里ちゃんも感じてるでしょ?」

「ええ。そうね」

「だから別の服も試してみて」


 そう言って理恵子は俺に二着目を差し出す。


「……そうね。でも、その前に写真でしょ」


 後で決めるために一応写真は撮っておいた方が良い。たとえ、買わないだろう服でも。


「分かった」


 そう言って理恵子が写真をパシャリと撮った。


 そして俺は次の服を着る。

 さて、残り十着ある。そろそろ時間も時間だし、巻きで着なければ。

 俺は別に夜ご飯は何時になっても気にしないが、理恵子は一人暮らしじゃないのだ。流石にあまり遅くなってしまったら色々とよろしくないだろう。それに、俺とは違って肉体も女性である理恵子を夜遅くに一人で帰らせるのは少々問題があるからな。


 そして二着目も来た。

 だが、二着目も満場一致で、違うとなった。

 それが、三着目、四着目と続く。

 だが、それが当たり前だ。服を選ぶ際にしてはいけないのは妥協なのだ。

 あくまで予算は限られている。生活費の中から、衣服代を算出しなければならないのだ。だから無駄に中途半端な服を選ぶわけには行かない。


 そして結局十着全部来てみても、ダメだった。似合うと断言できる服はない。全部何かが足りなかった。


「私のセンスがなかったのかも。ごめん朱里ちゃん」


 そう言って理恵子は謝ってくる。

 だが、理恵子だけが悪いわけでは無い。

 俺も服を選ぶ際に中々良いのが見つからなくて、困る時もある。

 それに理恵子は妥協を許してないだけで、そこそこにあっている服もある。


「別に構わないわ。時間もないし、この中から決めましょう」

「いや、まだ諦めたくない」

「時間は?」

「大丈夫。門限解かないし」


 理恵子は諦めていないようだ。

 確かにそうだ。

 服を選ぶのに妥協はいけない。それはそうだが、その理由が一つある。それは服が本当に似合うかどうかは着るまで分からないという事だ。

 服を何十着も、何百着も着てきた俺には分かる。

 似合うと思っていた服が似合わないこともあれば、似合わないと思ってた服が、意外に似合うという事もあるのだ。


 服を選ぶというのは、服屋さんの片隅に潜んでいる秘宝を探す行為と同じなのだ。



「ねえ、朱里ちゃん。もしかしてこれに会う?」


 そう理恵子が一つの服を指さした。それはキャラクターが印刷されていないものの、フリフリしていて、かわいらしい系の服だ。

 これは本当に似合うのだろうか。

 だが、それは来てみないと分からない。

 それにこれは、俺を除いた中で、俺の事を一番知っている人が選んでくれたのだ。

 信じないわけには行かない。

 それにこれが、片隅で輝く真の秘宝かもしれないのだ。


「来てみたわ」


 そう俺は言って、理恵子の前に出ていく。


「どうかしら」


 そう俺は効く。すると、理恵子が「すごくいいよ、朱里ちゃん!!」と言った。

 俺はそれを聞いて、背後を見る。すると、中々良い感じだった。

 俺の今のメイクが、大人向けメイクなので、そこまであっていないが、メイクさえ変えれば、それこそ似合ってくるだろう。

 なるほど、こう言う系は考えてなかったな。

 ここらで新しい世界を開くのもよさそうだ。


「決めたわ、これにする。……でも、もう一着くらい考えたいわね」

「そう、ならこれとかどう?」

「いいわね。着てみましょう」


 その後は買い物がはかどり、結局可愛い系の服を三着買うことになった。


「いや、今日の買い物はよかったわ」

「そう、やった!!」

「そんなに嬉しいの?」

「嬉しいに決まってるよ。だって、朱里ちゃんの服を選ぶことが出来たんだから」

「そう」


 確かに。

 理恵子は朱里ラブだから嬉しいという事か。


「じゃあ、今度こう言う系の服を着て、デートしましょう」

「っやったー!!」


 理恵子はそう万歳をした。

 それを見て俺は微笑むのだった。


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