表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスの孤高の狼がなついているのは女装した俺  作者: 有原優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/42

第二十四話 姉ちゃん

「ねえ、奏君。突然で悪いんだけど、女装道具持ってる?」

「ん、持ってきてないけど」


 あくまでも今日は奏としてデートに臨んでいるのだ。

 それに、諸相道具は服とかも入ってるから地味に重い。

 女装予定のない日に持ってくるようなものではない。


「そっか。ちょっと今度頼みたい事があるんだけど」

「どうした?」

「思えば朱里ちゃんと一緒に夏祭りに行ったことは無いと思って」

「確かにな」


 俺は一応一度だけ理恵子と夏祭りに言った。

 その時は、デートだけのつもりだったので、朱里とか修平は来てなかったのだ。


「でももう夏祭りとかはないだろ?」


 流石に九月にはないだろ。

 プールとは異なり開放するだけじゃなく、みんなで屋台を出す必要もある。

 それに花火だってある。


「その場合には私の家でやるから大丈夫よ」

「理恵子の家で?」

「そ、花火セットあるから」


 なるほど。それならば九月でも可能か。


「分かった。それでいつやる?」

「今日でもいい? 急だけど」

「急だな。どうして?」

「なんか思いついちゃって」


 なるほど。だが、別に今日は嫌とか言う理由もない。


「じゃあ、分かった。今日花火しよう」

「やった」


 そう言って無邪気に喜ぶ理恵子。


「後、浴衣来てほしいんだけど、いい?」

「いいぞ。俺持ってるから」

「持ってるの?」

「そんなに驚くことか?」


 過去に着てみたくなってきてみたことがある党だけだ。


「じゃあ、五時くらいに一旦解散して、そのあとに私の家に来て」

「分かった」


 そして、そのあとはクレープ屋さんに行った。


「ここ来たかったんだよね」

「そうか」


 そう言えばここ、姉ちゃんに奢ったところだ。


「ここは、前に来たな」

「そう。何がおすすめ?」

「姉ちゃんはバナナクレープが美味しいって言ってたな。俺はカスダートクリームクレープが好きだけど」

「姉と行ったんだ。ふーん」


 そう言いながらクレープを選ぶ理恵子。


「まあ、私も来れてるからいいんだけどね」


 なんか対抗心を抱いていないか?


「それで、今日浴衣姿の朱里ちゃん見れるの楽しみだな」

「さっきからそればっかりじゃ無いか? まあ俺も浴衣をいるのは久しぶりだが」

「そう。だってさ、朱里ちゃんって可愛いから、浴衣来たら絶対可愛いと思って」

「そうか」

「というか、私は本当は朱里ちゃんに水着も来てほしかった。絶対に会うし」

「それは無理だな。胸がないからただの変質者だ」


 胸がないのにビキニを着るやつは、ただの変態とか、芸人とかくらいしかいないだろう。


「分かってるよそれは……奏君に胸があったらなあ」

「それ、暗に俺に手術を受けろって言ってないか?」

「それもありだね。タイとかに行ってきてよ」

「それは無理だ。俺は生まれつきのこの性別を変えるつもりなんてないんだから」


 俺は女性になりたいとは思っているが、男という性別にも誇りを持っている。

 完全に男を捨てたいわけでは無い。


「そう……」


 理恵子、なんでお前は悲しがっているんだ。

 本気で俺を女にしようとしてたのか?


「でもね、男としての奏君ももちろん好きだから」

「そうか、ありがとう」

「でもさ、奏君と朱里ちゃん、両方ほしいよ」

「俺が分裂ってことか」


 確かに思うよ。俺が奏と朱里

 両方の性質を持っていたらって。

 朱里の時だけは、生物的性別が女になったらって。

 でも、そんなことは不可能なのだ。

 だからこそ、可能な範囲で人生を楽しまなくてはならない。


「理恵子も変な奴を好きになったもんだな」

「それは私も思うよ。でも好きになったものは仕方がないから。私は朱里ちゃんも奏君も好きだし」

「そう言ってもらえてありがたいよ。いやしかし」

「どうしたの?」

「俺は嬉しいんだよ。理恵子が朱里を俺の女装時の姿だと知りながら愛してくれるのが」

「当たり前だよ。朱里ちゃんは可愛いんだから」


 そう言って俺たちは笑った。

 そして、その間にクレープの順番が来た。

 俺たちはクレープを注文する。

 俺はバナナクリームクレープ。理恵子はカスダートクリームクレープだ。


 そしてクレープはすぐさま出来上がり、俺たちはそのクレープを受け取り、席に座る。


「美味しそうだね」

「だな」


 そして俺たちは無言でクレープにかじりつく。


「「美味しい」」


 俺たちの声が重なった。

 その事がうれしくて、思わず「ふふ」と笑ってしまう。


「なんだか、カップルっぽい」

「カップルだろ。今までデート何回してきたんだよ」

「そうだけど、でも奏君が女装ばれしてから一番デートぽいって」

「それはそうかもしれんな」


 確かに、今日のデートは学校で朱里として登校するお詫びみたいなものだが。それでも女装ばれした日以降は初めてと言っていいデートだ。


「楽しいな」

「うん」





「ちょっと待って」


 向こうから声が聞こえてくる。

 何だろうか、と思ってみると、そこにいたのは姉ちゃんだ。


「どうしてここに奏が?」

「それはこっちのセリフだ。なんでいるんだよ」

「そりゃあ、クレープ会にでしょ。この前のクレープ美味しかったし。というか奏こそ、もしかしてデート?」

「ああ、そうだ」

「へー」

「ていうか、奏君。そっちの女性って奏君の姉だよね」

「そうだな」

「あ、もしかしてそっち残って、私が奏のふりしてボーリングとか言った時にいた子?」


 おい、姉ちゃん。それは……


「それってどういうこと? 初めて会いますよね」

「え?」

「え?」


 しまった。女装ばれしたという事は言ったが、理恵子はまだ姉ちゃんが朱里を演じていた時が合ったという事は言ってないんだった。

 


「すまん、俺が話すわ」


 そして俺はあの日の朱里が実は姉ちゃんだったという事を告げた。


「じゃあ、あの日の朱里ちゃんは奏君じゃなかったんだ」

「ああ、そうだ」


 くそっ、話しとくべきだった。

 理恵子は自身の髪の毛をさすりながら考えるそぶりを見せる。


「そっか、確かに思い返せば少し変だったかも。顔もそうだし、なんだか、自信満々だったような……」


 言われてるぞ姉ちゃん。


「今考えたらなんで気付かなかったんだろ……奏君ごめん」


 そう言って理恵子は俺に頭を下げた。


「いやいや下げるべきは俺だろ。騙してたんだから」

「確かにそれはムカつくけど。あのときに言づけなかった私が悪いから」


 いや、なんだか俺が悪いのに謝られてるのが、もやもやする。


「いや俺こそごめん。騙してて。俺が謝るべきことなんだし、理恵子に謝る理由なんてないよ」

「でも……」


「二人ともストップ。仲いいのはいいけど、めっちゃみられてるから」


 その姉ちゃんの言葉で周りを見ると、確かに結構見られている。

 あ、恥ずかしい奴だ。



「それに私が真実を言っちゃったのが悪いからさ」

「確かにな。姉ちゃんが悪い」

「ダチ〇ウ倶楽部!?」






 そして姉ちゃんもクレープを買ってきて、俺他tのテーブルに加わった。


「そう言えば奏君のお姉さんは、女装を前から知ってたんですよね」

「ええ。あの子こっそりと女装グッズを買ってたみたいだから、私が隠したの。だって、パパにばれたら絶対に怒られるもん」

「そんなに、厳格な人なんですか?」

「そうね。すぐに手が出るタイプの昭和のパパよ」

「なるほど」


この場合、悪い意味でという事だ。

多様性などという言葉を知らないような父親だからだ。


「だから私が隠してたの。だって奏の女装姿可愛いんだもん」

「そうだよね。話が合う……」

「ちょっと二人とも、俺の話で盛り上がるなよ」


 本人がいるのにさ。


「いいじゃん奏君。せっかく奏君のことを知ってる人がいるんだよ。しかも女装していることを知ってる人で」

「いや、もう学校に結構いると思うけど」

「いや、そうじゃなくて、奏君の過去の諸相を知っている人がこの人しかいないってこと」

「……あ、理恵子ちゃん、奏の昔の女装を見る?」


 は? 何言ってるんだ?


「え? 見せてくれるの?」


 理恵子も食いつくな。


「いいよ、ほら」


 そう言って姉ちゃんはスマホの奏ちゃんアルバムを開く。


「おい、やめろって」

「いいじゃない」

「昔の女装は、なんというか」

「いいじゃん」


 そして俺の昔の女装写真が開かれてしまった。


「わあ、可愛い」

「……」


 昔の俺の女装は、少し違うんだよ。

 なんというか、子供だから、かわいらしい女装なのは違うが、単に俺の顔の中性さを使った可愛さなんだよ。


「見られたくなかったな」

「なんでよ」

「今の俺の女装の方が可愛いから。昔はさ、ノーメイクで女装してたから」

「え? そう言う問題?」

「ああ」


「偏屈だよね。今も昔もいいでいいのに」



 そう、理恵子に耳打ちする姉ちゃん。



「聞こえてるぞ」


 聞こえないとでも思ったのか。


「聞こえるように言ったのよ」


 ああ、そう。


「まあ、もう好きにしてくれ」


 そう言って、残ってたクレープを食べる。


「ありがと」


 そう姉ちゃんと理恵子が話し続ける。もう、止めたって無駄なのだ。

 そして、暫く立ち、二人の話の盛り上がりもようやく収まったようだ。


 正直、俺がいる前で昔の話されるのは応える。


「次は、ゲームセンター? 理恵子ちゃんに取ってほしいものがあるんだけど」

「任せて」


 そして近接しているゲームセンターへ行く。


「そう言えば、奏君は?」

「俺はそこそこ、姉ちゃんのほうが上手い。あ、でもボウリングは俺の方がうまいぞ」

「え?」

「姉ちゃんがダメダメプレーしてたからな。それが俺の実力だと思われたらやってられん」

「そう言う話」

「ああ」

「負けず嫌いなんだね」

「うるせえ」


 そしてゲームセンター。

 姉ちゃんは理恵子にたくさんの物を要求してきた。

 というより、これ目的で俺たちに近づいたのかと疑ってしまうほどだ。


 だが、実際に理恵子は姉ちゃんの望むものをどんどんと釣り上げていく。


「やっぱり理恵子すごいな」

「えへへ、奏君の彼氏としてこれくらいはできないとね」

「俺の彼女は照合なのか」

「そうだよ。だって、奏君はすごいんだから」

「……おう」




 不意打ちでほめられて少しムズかゆい。

 さて、


「俺もこれをお願いしたいな」


 姉ちゃんのが終わっあ他と、俺は少し頼みたいものが出来た。

 というのも、この中のアニメのグッズが欲しくなったのだ。


「朝飯前だよ」


 そう言った理恵子は頑張って、義理ぎ衛を狙い、八〇〇円で取って見せた。


「ありがとう」

「どういたしまして。でも、その代わり」


 そして連れてこられたのは、カラオケだ。


「奏君の歌が聞きたーい!!」


 理恵子は大盛り上がりだ。


「本当は朱里ちゃんモードで歌ってほしいんだけどね」

「今日は残念ながら持ってきてないからな。ただ、それも今度やろうか」


 確か、文化祭の打ち上げは代々カラオケでするという事になっている。という事は、多分朱里としてみんなの前で歌唱を披露することになるだろう。


「まあでも、理恵子のリクエスト通り、女声で歌うか」

「やったー!」


 女声と言っても、本当に女の声が出る訳じゃない。

 普段は何とか地声の高さと裏声でごまかしているだけだ。

 流石に歌だとぼろが出る。


 さぅそく選んだのは演歌だ。


「奏、やっぱり選曲が渋いね」

「うるせえ姉ちゃん」

「えー。誉め言葉なのに」


 女声で歌おうと思ったら一番歌いやすい曲がこれだったというだけだ。


「じゃあ、歌うわ」


 奏で、朱里口調したら、なんとなく気持ち悪い。


 そして、がんばって高温の演歌を歌い切った。


「はあはあ、疲れたわ。演歌って大変……」

「奏、その顔で朱里をやるのは違和感ある」

「ぐっ、まあ、俺も思ってたけど」


 確かに、俺も歌いながら変な感じだと盛ってた。


「それに奏は奏のままうたった方が上手いしね」

「それもそうだと思う。二曲目以降は本気で歌っていいからね」

「はいはい」


 そして俺は思う存分歌いまくった。



「はあ、疲れた」


 結局俺の歌唱祭見たくなっていたな。理恵子も姉ちゃんも一曲も歌っていない。


「やっぱり奏君の歌は最高だよ」

「そう言ってもらえて俺も嬉しいよ」

「えへへ」


 そしてそのあと軽くショッピングしたら一時解散の時間となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ