表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスの孤高の狼がなついているのは女装した俺  作者: 有原優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/42

第十五話 お泊り

 

「お邪魔するぞ」


 俺は修平の家に戻ってきた。


「どうしたんだ一体」

「理恵子には寂しい思いをさせたからな。今から朱里として理恵子の家に行く」

「はあ?」

「だから更衣室として利用させてもらう」

「……ああ、そういう事か。俺にツーショットをまた撮れってことだな」


 ツーショット写真は、朱里と修平が一緒にいた証明になり、朱里と修平のデートが終わった証拠にもなる。


「理解が早くて助かるな」


 そして急いで着替えを始める。


 もちろんすぐにできるわけではなく、ある程度の時間がかかってしまう。


「よし、できたわ」

「おう、じゃあ撮るな」

「ええ、分かったわ」


 そして写真を撮る。そして修平に贈るのを頼み、急いで理恵子の家に向かう。決して汗を流さぬ程度に。


 インターフォンを押す。


「え、朱里ちゃん」 理恵子は驚きの声を出す。「デートは?」


「ちょっと寂しがってると思ってきたわ。山崎君からそんなメールが来たもの」


 そう言ってみせるのは実際に理恵子が寝てた時に仕込んでいたメールだ。


「朱里ちゃん、寂しかったんだから。ね、一緒に夕食とろ。今日両親と妹八時まで帰ってこないし」

「そういう問題じゃない気がするのだけど……」

「ねえ、一緒にパスタ作って食べよ」


 ま、それくらいなら構わない。


「分かったわ。作りましょう」

「ところで朱里ちゃん、なんだか久しぶりな気がするね」

「そうかしら、三日しか経ってなくない?」


 最後に一緒に遊んだ日から。


「でも、寂しいもん。一緒にいたいから」

「駄々っ子?」

「それで構わないよ。だって、朱里ちゃんが一番なんだから」


 やれやれ、実はほんの一時間ぶりなんだけどな。


「まあいいわ。一緒に食べましょう」

「うん!」


 そして、理恵子はパスタの麺を鍋に入れに行った。


「私も手伝うことはない?」


 パスタは簡単だが、面をゆでる間にグザイを痛めたりするのは難しいはずだ。


「じゃあ、これを痛めてもらおうかなー」


 それは、ベーコンとキャベツが用意されている。


「これを炒めろってことね」

「そう」


 そして俺はベーコンをカリカリに炒めてからキャベツをフライパンに加える。


 キャベツがかさばるけど、炒めていればすぐに小さくなっていく。ある程度炒めればあとは理恵子の麺のゆであがりを待つのみだ。


 そして、理恵子の麺が茹で上がったので、面を入れてもらう。後は火を消して、軽く味付け、そして混ぜれば完成だ。


「完成!!!!」


 理恵子ができたパスタのフライパンを持ってそう叫ぶ。


「よかったわね」


 俺は軽く拍手をする。


「うん。朱里ちゃんとの共同作品だし」

「パスタを炒めただけだけど……」


 でも、理恵子がうれしいのなら別に構わないのだが。


 そしてさっそく、実食。理恵子と一緒にパスタを食べる。


「美味しい」


 理恵子は一口食べるとすぐにそうつぶやいた。


「本当、朱里ちゃんが作ってくれたおかげだよ」

「私は別に炒めただけだけど……」

「こういうのは気持ちが大事だから」

「まあそうかもね」


 そして俺もパスタをすする。


「確かにおいしいわね」

「でしょー!!」

「ふふ、こういうの良いわよね」


 そして二人で笑った。



「ただいま、お姉ちゃん」


 そして二人で食べてると、武美ちゃんがそう言って帰ってきた。


「朱里ちゃんいるー!」


 そう元気よく言う武美ちゃん。


「え、今日来るの? だったら言っててよ」

「ごめんね。急に帰り寄ったの」

「でも朱里ちゃんと一緒に食べれるんだよね」


 あ、希望に満ちた目だ。だが、現実を見せなければならない。


「ごめんね、もう結構お腹いっぱいなの」


 そう言って俺はおなかを軽くさする。一緒には食べられない。


「そっか、でもまだいるよね」

「ええ、それは……」

「じゃあよかった!」


 そう無邪気に笑う武美ちゃん。本当にうれしそうだ。思えばタイミングが合わずあまり会っていなかった。

 今日は一月ほどぶりの再会となる。


「じゃあ、見てこの子」


 そして、武美ちゃんは俺にイケメンの顔を見せる。


「これはアクリルスタンドで、この子がすっごいイケメンなの」


 そういえばこの人、この前武美ちゃんが見せてきたキャラだ。


「ラクトが部屋にいてくれるなんて幸せだあ」

「そ、そうなのね」


 俺はもうそういう事しかできなかった。理恵子はそんな俺の反応を見たからか、「こら、朱里ちゃんが困ってるでしょ」と言って叱ってくれた。


「ねえ、今日も泊まっていくでしょ?」

「え?」

「だって、この時間にいるってことはそうじゃないの?」


 そんなつもりはない。今日はパスタを食べたら変えるつもりだった。


「ねえ、お願い。泊って行って」

「ごめんなさいね。今日はそんなつもりで来たんじゃないから」

「ねえ、お願いってばあ」


 参ったなあ。別に止まって悪いことはないんだが。あくまでも気持ちの持ちようがな。


「分かった。泊るよ」

「え、いいの?」

「朱里ちゃん、いいの?」

「こうまでねだられたら仕方ないわ。もちろん。お風呂一緒にとかはだめだけれど」


 そして、その日は理恵子の家に泊まった。

 とはいえっても理恵子の家でお風呂に入って寝るだけだが。


 さて、困ったのは、武美ちゃんが俺と一緒に寝たいと言ったことだ。

 理恵子とも一緒に寝た手前断るわけにはいかない。

 というわけで一緒に寝ることとなった。だが、理恵子も一緒に寝たいという事で。


 こうなった。


 え、どうなったって?

 理恵子と武美ちゃんに囲まれる形で寝ることになったのだ。

 畜生。何もかもが想定外だ。

 あくまでも俺は男子なんだよなあ。

 それを言っていない俺が完全に悪いのだが。

 とはいえ、一緒に寝ることに何か問題があるかと言われるとまったくもってない。


 ただ、ハーレムっぽい感じになってしまったなあと思うだけだ。


 ただなあこいつら俺が男だつぃらないんだよな。少しだけ罪悪感を感じる。


「ねえ、朱里ちゃん。抱っこしていい?」

「いいわよ」


 そして、武美ちゃんは抱きしめてくる。


「武美ずるい」


 理恵子も俺に抱き着いてきた。

 うん、これすごい状況になっている。


 勿論今更照れたりなんてしないのだがな。


「あなたたち……くっつきすぎよ」


 そう、ため息とともにいう。さすがにこうも抱き尽きられたら、女装という事がばれそうだ。

 単に暑いし。


「いいじゃん、朱里ちゃん!!!」

「まあ、いいわ……」

「それで、朱里ちゃん。少しいい?」


 理恵子がそう言ってきた。


「私、恋しちゃったかもしれない」


 は?


「私ね、今まで恋とかには興味なかったの。でも、今日山崎君、いいえ奏君がすっごく優しかったの」

「え、お姉ちゃん。恋しちゃったの?」

「分からないけど、落ち込んでる私に、優しく接してくれて、少しドキッとした」


 やっぱりか。

 面倒くさいことになりそうだ。


「お姉ちゃん。百合展開はどうしたのよ」


 いや、どっちも俺なんだけどな。


「勿論朱里ちゃんも好きよ! さっきも朱里ちゃんが一番って言ったし。でも、これは異性の話なんだから……」


 言いにくそうにする理恵子。


「ええ、私もそれは分かってるわよ。それで、山崎君のことが好きになったってこと?」

「うん。多分」理恵子は顔を赤くしている。「でもね、私が寝ちゃったときに、彼は何もしなかったの」

「寝ちゃった?」


 聞き返す。朱里としては初めて聞く話だ。


「うん。疲れて。でも、彼は私を襲うことなく放ってくれたの」


 まあ、そりゃな。


「それがうれしい反面、少しだけもやもやしてて」


 ん?


「私に魅力がなかったのかなって思っちゃって」


 いやいや、手を出した時点で犯罪だから。


「多分。山崎君は理恵子の信用を損ねないようにそう行動したんだと思うよ。何しろ、寝ている所を襲われるなんて犯罪なのだし」

「山崎君と同じこと言うね」


 げ、やらかしたか?


「でも、きっとそうだよね。うん、今度またデートにでも誘おう」

「それがいいわ」

「私は百合展開見たかったのに……」


 そう、残念そうに武美ちゃんが言った。

 どれだけ百合展開が好きなんだよ。


「そういえば、武美ちゃんは好きな人とかいたりするの?」


 正直気になる。


「三次元にはいないよ。だって、私二次元で生きてるから」


 そう、武美ちゃんが言った。そういえばこの子、そういう人だった。


「そう……じゃあ、二次元でもいいから」

「朱里ちゃん……後悔するよ」

「え?」


 何を後悔するのかは分からなかったが、その理恵子の真剣そうな表情を見て、今自分がしたことが地獄につながると理解した。


「えっとね、ラクト君はね、黒髪短髪で、王子様系なの。普段から俺様に従えみたいな態度のせいで味方組織からも浮いてるんだけど、でも、戦いになると強くて、トップスリーに入るの。それでね……声優さんもイケボで有名な長谷川さんだし、決め台詞とかがあって、しかもそのセリフを放つときが大体女性が襲われてると欣男。そして、彼には頼れる相棒もいて……」


 ああ、そういう事か。

 やめとけと言ったのは、推しトークになると長いからなんだな。


 そしてそれは理恵子が「長すぎる」と、止めるまで五分くらい続いたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ