表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エッセイ

虫除け担当のオニヤンマさん

作者: 歌池 聡


 嫁の実家に転居して、三ヶ月ほどが経ちました。

 これまでの団地住まいから一軒家の暮らしになったわけですが、色々と勝手が違って慣れるまでが大変そうです。

 今までより便利になったこと、不便になったこと、それぞれある程度は予想していたのですが、実はもうひとつ気づいていなかった重大問題がありました。


 ──この辺りって、カラスと虫がとにかく多いっ!


 何しろ郊外のニュータウンなので、遊歩道なども整備されていて、自然が多いと言えば聞こえはいいのですが──そこに住む生き物のことまでは想像が及んでいませんでした。






 普通ゴミの回収の日ともなれば、もう朝っぱらからカラスたちは興奮状態です。隙あらばゴミを漁ってやろうと、街の上空を飛び交っています。

 プラゴミなら中身が無いから大丈夫だと油断していたら、一度荒らされてしまいましたよガッデム。


 庭にはハチやカ、クモなんかもいっぱいいて、家の中にまでアリが入り込んできます。

 ようやく青空駐車から屋根のあるガレージに愛車を駐車できるようになったと喜んでいたのも束の間、ガレージの天井にハチが巣を作り始めやがりましたよチクショウ。

(そちらは駆除済み)


 ──まあ、カラスにうかつに手を出すと怖いらしいので、そちらは地道に警戒を続けるしかないのですが、虫の方は何とか少しぐらい減らしたいものです。

 かといって、やたらに強力な薬剤を撒くのも考えものですしね。

 色々と考えていた時にふと、少し前にTVで観たある情報を思い出しました。


 ──虫除けには『オニヤンマ』が効果的らしい、と。






 オニヤンマは日本最大のトンボで、スズメバチすら捕食するほどの昆虫界最強のハンターです。

 そのオニヤンマの実物大フィギュアを身につけていると、他の虫が怖がって近づいてこなくなると、どうやらアウトドア愛好家に人気らしいのです。

 ──実は、工事現場でよく見かける黄色と黒のロープ(通称・虎ロープ)も、オニヤンマのカラーリングと似ていて、多少の虫除け効果はあるようなのですが、庭のあちこちに虎ロープをぶら下げるというのも見栄えがよくありません。


 さっそく通販サイトで調べてみたところ、けっこうな数の商品がヒットしました。お値段も一匹あたり数百円程度なので、ダメ元で購入してみました。

 届いたオニヤンマさんは4匹。羽根も透明で、なかなかリアルな仕上がりです。

 ストラップのように吊るしたり、安全ピンで服などにもつけられるようになっています。

 これは、何となく効果がありそうな気がしてきました。






 まず、一番気になっていたのは玄関先。夜になると、カナブンのような虫が執拗に電灯に体当たりを繰り返しているのをよく見かけます。

 それが家の中に入って来ないように素早く出入りするのって、ちょっと面倒なんですよね。

 そこで、玄関の電灯の近くにオニヤンマさんを吊るしてみたところ──効果覿面!

 カナブンやクモ、カを玄関先で見かけることはほとんどなくなりました。






 その結果を踏まえて──嫁が日よけの帽子にオニヤンマさんを取り付けて、庭の草むしりに出かけていきました。


「オニヤンマさん効果で、カとかブヨが寄って来なくなるといいなー」


 そんなことを言って、嫁はいそいそと出かけていったのですが──程なくして血相を変えて戻ってきました。


「あかん! これ、あかんわ!」

「えっ、どないしたん?」

「カラスたちが、めっちゃ大騒ぎして集まってきたんよ。たぶん、コレを餌だと思ったんと違うかな。

 凄い殺気を感じたわ!」


 ──ああ、昆虫界では頂点に君臨するオニヤンマさんですら、カラスから見たらただのエサにしか見えないんでしょうか。






 そんなわけでオニヤンマさんたちは、上空のカラスから見えにくい軒下や木の下で今日も風に揺られながら、じっと虫たちに睨みを効かせてくれているのです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] フィールドワークによく行く知り合いの話ですが、蚊と蜂は寄ってこなくなるけど、アブは平気でやってくるらしいです。 カラスのお話は予想外でした!“生態系“っていう感じですね。そのうちカラスを狙…
[気になる点] ちなみに、ですが。 少し前、カメバチと思われるハチのナワバリに迷い込んだアキアカネさんは、警戒していたカメバチ二匹にビシバシと弾かれて逃げ去っていきました。 やはり、オニヤンマさん…
[良い点] おにやんま君グッズ、めっちゃ気になっていたら、こちらのエッセイを教えていただきさっそくやってまいりました! …! カラスに…狙われる?? なんて弱肉強食の自然界! でも虫は避けれそうなので…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ