元聖獣、子守りを任される。
昨夜予約投稿ミスした分を先程投稿しております。
こちらは本日2話目なので、前話未読の方はそちらからお読みください。
よろしくお願いいたしますm(__)m
『…………はぁ』
………。
『…………はぁ』
………。
『…………はぁ』
………。
先程から室内に響くは自称・元聖獣のドーミィの溜め息である。
『…………はぁ』
はい、これで10回以上!
あなたからはもう10回以上もの幸せが逃げました!
溜め息つくと幸せが逃げるという迷信を信じている俺としては、なんだか勿体なく感じるわけだが。
それはさておき、なぜドーミィがこんなにも溜め息を吐いているのかというと、だ。
話は今朝に遡る。
★ ☆ ★ ☆ ★
「なるほどねぇ………つまりこのドーミィの声が、お前たち二人には聞こえるんだな?」
「うん!どーみぃじゃないっておこってるよ!」
俺の両手に乗っかっているドーミィを前に、興味津々な父と自慢気なクリスくん。
『その通りじゃ、小僧!もっと言うたれ!!』
目も耳も口もなさそうなのに、どっから喋ってるんだ、このふさふさ。
まことに不思議だ。
「でもなぁ、どっからどう見てもドーミィなんだけど」
「せいじゅーだって!」
『ん゛ん゛っ……元、な』
あ、ちょっと弱気になった。
「せいじゅーって、聖獣か!?」
父、目を見開いて驚いております。
やっぱり聖獣って滅多にお目にかからないとか、尊き種族とか、勇者にしか扱えないとか、そういうやつなのか?
俺、勇者だし。
「聖獣は勇者の仲間になる存在だぞ?こんなところにいるはずが……」
『わしは元聖獣。すでに今代勇者の仲間になる新しい聖獣は別におる』
だってさ。
クリスくんがちんぷんかんぷんで頭に?を飛ばしているので、かわりに俺が訳してあげた。
もちろん、子供らしくね!
「いまのせいじゅーじゃないって」
「え?どういうことだ?」
「まえはせいじゅーだったけど、いまはほかのこがせいじゅーだって」
我ながら雑な説明よ。
大人らしく言うとすれば、世代交代して引退した聖獣ってとこか?
「新しい聖獣が表れたということは、魔王復活も近いということか!」
うん、そっちに興味が移ったか。
『そうなると聖女も召喚されたに違いない……となれば勇者も誕生するはず…』などとぶつぶつ呟きながら、うろうろと歩き回り始めた。
聖女は召喚されたし、勇者はここにいますよー。
あなたの息子!勇者ですよー!!
言いたい!
言いたいが、まだ言えぬ。
しっかし、聖獣が仲間か~。
新しい聖獣にも元聖獣にも会えるとかなかなかレアなのでは?
「ところで、なぜ先代の聖獣がこんなところに?」
お、戻ったな。
『ふん、わしはわしの宿命を果たした。その後はなにしようとわしの勝手じゃわい』
お茶を濁した。
なにやら言いづらいらしいな。
「わかんない」
クリスくんと一緒になって首を傾げてごまかす。
「そうかぁ。うーん、でもそうすると、その先代の聖獣らしいドーミィはどうしようね」
『ドーミィなんぞではない!!それに、わしがなにをしようとわしの勝手じゃ!!』
元聖獣がなにやら言っているけど、残念ながら父にはな~んにも聞こえとらんがな。
「そのこは、ぼくがルイスにあげたの」
クリスくんがうるうるした目で父を見上げた。
可愛い……!!
うんうん、そうだよね!クリスくんが俺にプレゼントしてくれた子だよね!
でも!
悲しいかな、この生物には意思主張がある。
であるからには、うちのペットにってわけにもいかないんだよね。
「せいじゅーはうちにいるの、や?」
可愛すぎる!!
しょんぼりとして聞かれたら……!!
『ん゛ん゛っ…………いやではないぞ……しばらくここで世話になるのも吝かではなし!』
だよね!
落ちるよね!
さすがクリスくん!
「やったぁ!おとうしゃん、このこ、うちにいたいって!」
いたいとは言ってないけどね。
「え………ま、まぁ、先代の聖獣が良いと言ってるならうちは良いけど」
父が少しびっくりしている。
頬をぽりぽり掻きながら、ふさふさに向かって軽く会釈をした。
ふさふさに見えてるのかはわからんが。
そして、あ!と手を叩いた。
「先代とはいえ、聖獣は聖獣!うちの子達の近くにいてくれるのなら有り難い!これで俺もロレーヌも少しは気が抜けるな」
こうして、元聖獣のドーミィは俺とクリスくんの子守りを押し付けられたとさ。
ちなみに、ロレーヌとは俺達の母親のことね。
ありがとうございますm(__)m




