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初めての実践訓練・1

 本日は晴天なり。

 絶好の野外学習日和である。


「よーし、全員揃ったな?それでは説明を始める。まずは事前に決めた二人組で、レッサースライム一匹と戦う。お前たちは低学年で筋力では勝つのは難しい。よって、これまでに習ってきた魔術を中心として戦略を練ること。では、呼ばれたら来るように!」


 言うまでもなく、俺はセシルくんとペアだ。


「おい、ルイス」

「へい、なんでしょか」

「レッサースライムは通常のスライムを弱体化させた人工の魔物らしいぞ」

「うん、そだね」

「ということは、火炎系魔術に弱いのではないだろうか?」

「さすが、セシルくん!分かってるね〜」

「と、当然さ!私は日々勉学に励んでいるのだ」


 えへん、と胸を張るセシルくん。

 だが、問題はそこじゃないんだな〜。


「セシルくん。火炎系の魔術は何が使える?」


 俺は大賢者を目指しているので、知識だけはしっかりある。ただ、本物の魔物相手に放ったことがないので、効果の程はわからない。なにしろ、勇者の“スペア”なもので、魔力にも魔術適正にも制限がかかっているから。

 なので、少しでも不安要素を減らすべく、セシルくんの力量も知っておきたいというわけ。


「もちろん、今までに習った火球・炎熱・燃焼は完全に習得している」

「そっか、それは頼もしいよ」

「そうだろう!遠慮なく私に頼るといい」


 ううむ、その三つだけか。

 いや、悪くはない。悪くはないんだけど、まだ子供の魔力じゃ放てる回数も心許ないからなぁ。


 ちなみに俺はそれ以外にも初級・中級の魔術は大体網羅した。使えるかは別なのが痛いけど。


 ギルドでアデルさんたちに話を聞いてからおよそ二週間、ふさふさにアドバイスを貰いながら、暇さえあれば学院の図書館でありとあらゆる文献を読み漁っている。

 その甲斐あって、今では魔術だけじゃなく、召喚術や精霊術も初級編は学習済みだ。

 もう一度言うが、俺は勇者の“スペア”なわけで。本物の勇者であるクリスくんよりは現状遥かに劣ったステータスだけども、でもクリスくん同様ほぼすべてに適正があるのだ。つまり、無駄になる知識はない、というやつさ。大賢者になるにはむしろ習得しなきゃならないものだしね。


「とりあえず、まずは俺がスライムの注意を引きつける。セシルくんはその隙に、出来る限り火球を連射して」

「わ、わかった。任せておけ」


 握った拳が震えてるぞ、セシルくん。


 指摘したら武者震いだと言いそうなので、見ないふりをしてあげた。



「次!ルイス・セシルペア!」


 順番が回ってきたので、セシルくんと一緒に先生の元に向かう。


「準備はいいか?」

「はい!」

「もちろんだ!」


 俺達の返事を聞いて、先生が手に持っていた紫色のガラス玉みたいなものを地面に投げつけた。

 玉が割れて靄が漂う。


「プキューーーーー!!!!」


 ちびっこの俺が両腕で抱えられるほどの大きさの、まるっこいぶどうゼリーが現れる。

 うまそう。

 ていうか、ポ○モンかよ。

 思わず突っ込みたくなったけど、どうせ誰にも通じないからやめた。


「じゃ、セシルくん、頼んだよ!」


 ぶどうゼリーが動き出す前に、俺は携帯していた木刀で先攻。


「キューーーー!!!!」


 ぶどうゼリーの色が濃くなって、紫色の粘液を噴射してきた。

 間一髪でそれを躱し、俺は再度木刀でぼっこぼこにぶん殴る。


「いくぞ!火球!!火球!!火球!!」


 俺の打撃でぶどうゼリーの形がひしゃげたところに、セシルくんが火球を三連発。見事に全弾直撃だ。


「ブギュ、ギュゥウ〜〜〜」


 奇声を発しながらぶどうゼリーがねちゃねちゃ動き出す。


「火球!!火球!!」


 もう二発、セシルくんが追撃した。

 じゅわぁっと表面が溶け始めている。攻撃がちゃんと効いているらしい。


 にしても、見た目はぶどうゼリーなのに匂いはアンモニア臭だ。くっさい。

 横目でセシルくんをチラ見すると、すごく嫌そうな顔をして鼻をつまんでいた。


「二人共、気を緩めるなよ」


 横から先生に注意された瞬間、びちゃびちゃっとさっきより粘度の低い液体が飛んでくる。


「うわっ」


 慌てて後ろに飛び退ったが、靴にちょっとかかってしまった。


「うげぇ……」


 それがかかった箇所に穴が開いた。


 なにこれ、酸?酸なの?

 こっわ。レッサースライムなのにこんなもの吐き出すの?


「セシルくん、いくよ!!」

「ああ!!」


 息を合わせて、打撃・火球・打撃・火球のコンボを食らわせてやった。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 魔力切れでセシルくんが肩で息をし始めたので、交代して俺が火球をぶつけ、セシルくんが打撃。


 火球・火球・打撃ポコン・火球・火球・打撃ポコン……


 いや、セシルくん。ちょいと軽すぎやしませんかね。

 腕の力だけで殴ってるからだよ。俺みたいにもっと全身でがっといかないと。


 授業終わったら教えてあげよう、と思いながら俺は火球を連続で打ち込み続け、なんとかレッサースライムを倒すことが出来た。


 にしても、レッサースライムでこんなに時間かかるのか。魔力もかなり消費するし、このままじゃ冒険者になるまでに何年かかるんだ?



お読みくださりありがとうございます。


面白いと思っていただけたなら、☆5評価やいいね、ブクマなどよろしくお願いいたします!


感想もお待ちしております。


引き続き読んでくださると嬉しいです(*^^*)


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