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新入神様との遭遇

よろしくお願いいたしますm(__)m

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…(無限ループ)」


 少女が目の前で土下座で謝罪をしていた。


 ……………いやいやいや、これどういう状況!?


 会社帰りにスーパーで買い物をして、まだ薄暗い空を見上げながら、あ~日が長くなったなぁ、春だなぁ、なんて思いながら家に向かって歩いていたところだったはずだ。


「あの…すみません」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…(無限ループ)」

「あの~」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…(無限ループ)」

「ちょっと、」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…(無限ループ)」

「ちょっと!!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…(無限ループ)」

「…………」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…(無限ループ)」

「おい聞けよ!!!」

「ッ!!!!!!」


 おっと失礼、思わずイラっとしてしまった。


 大声で怒鳴ったせいか、少女がびびびっと直立し、気を付けの姿勢で硬直した。

 …………金髪碧眼の美少女だった。

 金髪なのは土下座状態でも分かってたが。


「あの~」

「ッ!!!」


 声をかけた瞬間、美少女がびくっと震えてだらだらと滝のような汗を流し始めた。


 おーおー、毛穴なんてなさそうなたまご肌なのに汗なんてかくのか!

 汗腺ちゃんとあるんだな。

 毎日肌パックやら化粧水やら美白クリームとやらを欠かさず、美肌に苦心している姉が見たら『なにこのお肌すごっ!!!』と驚きそうだ。


 咳払いをして、俺は美少女に問うた。


「あのさ、これどんな状況?」


 辺り一面真っ白くて、床も天井もないもんだから正直上下もわからん。美少女と俺が立てているので、多分見えない地面はある。そして、勢いよく立ち上がった美少女に慣性の法則が適用されているならば、直立不動を保てていることからおそらく重力もあるのだろう。

 美少女は羽も輪もないが、天使っぽい白い装いで、金髪のツインテールとブルーアイがなければこの空間に溶け込んでしまいそうだ。

 反対に俺は黒髪黒目に黒スーツ。手には黒い牛革のビジネスバッグ。足元は同じく黒い革靴。ワイシャツ(薄ピンク)とネクタイ(水色とグレーの斜めストライプ)、あとはレジ袋が有料化したせいで持ち歩きが欠かせないマイバッグ(黄色)がなければ、美少女と真逆の黒ずくめである。


「俺、普通に道歩いてたはずなんだけど。一体これはどういうことなのか説明してほしいんですが」


 あれだけ謝ってたわけだし、この美少女に関わりがあるに違いない。


 固まったままだらだら汗を流し続ける美少女と、それをじっと見つめる俺。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「いや、なんか言えよ」


 体感時間1分ほどで我慢が利かなくなった短気な俺である。


「黙られても困るんだけどな……なにか知ってるんだよね、君」

「…………………………………………………………………………………………………………………ごめんなさい」


 長~い沈黙の後に、美少女はぽつりと謝った。また。


「もうそれは滅茶苦茶聞いたので、そろそろ別の言葉を聞きたいのですが」

「すみません。申し訳ございません」

「謝罪じゃなくて。状況説明をお願いします」

「………………………………………………あの、お名前は?」


 また黙りこくったと思ったらそれかよ!


 名前なぞ正直どうでもいいが、会話はキャッチボール。苛つきをぐっと堪えた。


「真島光太郎です」

「マシマ・コータローさん」

「はい」

「ワタクシはトーレニアと申します。先日、新たにこの世界の女神として赴任して参りました。この度は、若輩者のこのワタクシの落ち度で、貴方様を死に至らしめてしまいましたこと、誠にお詫びのしようもございません。つきましては、今後の貴方様の」

「ちょちょちょ!!ちょい待った!!」


 急に饒舌に喋りはじめたと思ったら情報過多!頭が追い付きません!


「えっと、トーレニアさん?」

「はい」

「よく理解出来てないんだけど、トーレニアさんは女神?で、トーレニアさんのせいで俺は死んだ?ってこと?」

「はい」


 美少女改めトーレニアさん、俺と一切目を合わさず。


「え、俺死んだの?」

「はい」

「いつ?」

「つい今しがた」

「ここにいるこの俺は?」

「魂です」

「……………………………………………」


 今度は俺が黙る番だった。


 なるほど、そういうことね。

 このトーレニアさんこと自称女神の美少女が、なにかやらかして俺を死なせたわけね。

 オーケー、理解したよ。ちょっと胡散臭いとか現実見ないとかは置いといて、君の言ってることはわかったよ。しかも頭の回転が速いとよく誉められる俺は先の展開まで読めたよ。アレね、よくある異世界転生ってやつでしょ。うんうん、神様の手違いで死んでしまった俺を別の世界に転生させるということね。


「………うん、わかりました。じゃあとっととやっちゃってください」


 頭の回転も速いが、切り替えも速い俺は先を促した。

 が。


「え、何をですか」


 トーレニアさんがきょとん、とした顔で俺を見る。初めて目が合った。


「何って、異世界転生だよ。神様の手違いで死んだから、そのかわりに特別扱いで異世界に転生させてくれるって話だよね、これ。まぁ殺された俺からしちゃあ何してくれとるんじゃって感じだけど、誰しも最初のうちは間違いもあるって。赴任したばかりって言ってたよね?ならまだ色々慣れてないんだろうし、やり残したこともそんなには無いんで、さっさと次行こう、次」

「……違いますけど」

「はい?」

「あの、すみません、そういう話ではないんです」


 んんん?


「どういうことです?」


 首を傾げる俺から目を逸らし、トーレニアさんは言った。


「その……貴方様はお亡くなりになられたので、このあとは生前罪の裁判を受けていただき、総合有罪なら地獄行き、総合無罪なら天国行きになります」


 ………………。


「ごめん、理解できなかったや」

「他の亡くなった方と同様、三途の川を渡って頂くということです。天国行きでも地獄行きでも、順番が来れば輪廻に戻されまた転生できます」


 完全ヨーロピアンな風貌から、和風な単語がぞろぞろと。


 え~と。

 ということは。


「つまり、特に異世界転生とかって話にはならないということ?」

「端的に申せば、左様でございます」

「え、じゃあなんで俺こんなとこいるの?三途の川は?」

「これから向かいます。本来は直接三途の川に行くのですが、この度はワタクシの責任問題ですので、こうして謝罪に伺いました。大変申し訳ございませんでした」


 待て待て、うっかりさっき聞き流した謝罪の典型文言的な“お詫びのしようもございません”は、文字通りお詫びのしようもないってこと?


「いやいやいやいや、社会人舐めんなよ?こんな人の命かかったレベルのミス犯して、菓子折りも代替案も弁償も無しに謝罪の言葉だけなんて許されないからな?まさか神だからって言うんじゃないだろうな」


 自分の米神がピクついているのが分かる。

 多少のミスなら笑って許してくれる器の大きな先輩、と後輩に懐かれている俺だが、これはいただけない。


「おい、新人女神。人じゃねえから新神だな。やらかしたからには、責任取れよ?」


ありがとうございますm(__)m

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