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アニマル・アパート・ファミリー  作者: アンテ・メーテ
腕利き料理人【コードネーム:ハイエナ】は、元殺し屋である
6/11

《1》

 早朝のまだ薄暗いキッチンで、奈菜(なな)は鍋の中の液体をかき混ぜていた。鍋の中には、薄紫色の液体が大量に入っている。


「よし!」


液体の出来に満足したように、彼女は上気した笑みを浮かべた。

 誰かが食堂に入ってきた。奈菜(なな)はその人物の影を見据えると、口を開いた。


「・・・・・・今日はアンタか。全く、早すぎるんだよ!もう少し遅く来い!皆はまだ寝てるんだぞ!」

「・・・・・・!」


入り口で足を止めた人物は、慌てて物陰に姿を隠した。


「何でコソコソしてんだよ!」


人物は奈菜(なな)の動向を伺うように立ち止まっている。


「こちとら人手が足りないんだよ!()()早く来たんなら手伝えよ!」


物陰から姿を現した(しゅん)は、頭を掻きながら照れ笑いを浮かべた。


「何でオレだって分かるんですか?」

「そりゃあ、長年の勘ってもんだろ。アタシは人の気配に敏感なんだよ。」

「今日はオレの負けですね。」

「何勝手に勝負してんだよ。するならアタシに言えよな!」


奈菜(なな)のツッコミは、少し論点からずれている。(しゅん)と言い合っている間も、彼女の手が止まることはない。流れるような手つきで野菜を切り刻んで、それらを鍋に流し込んでいく。


「で、何をしたら良いですか?」

「ん~、とりあえず食器を運んでくれない?さっき来たときにそこのワゴンに置いといたから、それごと運んでな。」

「あ~!今日は(しゅん)に先越された!」


広い廊下に足音を響かせて飛び込んできたのは舞桜(まお)だ。何故か彼女は悔しそうに地団駄を踏んでいる。


舞桜(まお)!まだ朝早いんだぞ!まだ寝てるヤツも多いんだから、もう少し静かにしてくれ!アタシも頭がキンキンする!」

「もしかして、私の美声を聞きすぎて耳と脳が肥えちゃった?」

「「それはない。」」


2人に同時にツッコまれたことによって大ダメージを負った舞桜(まお)は、涙目になりながらテーブルを台拭きで拭き始めた。

 そうこうしている間に、大食堂に人が集まり始めた。各々好きなことをしている。


奈菜(なな)さん。・・・・・・何ですか、これ。」


(しゅん)が顔を青ざめさせて奈菜(なな)に訊ねた。視線の先には、胴鍋の中に入った薄紫の液体。


「ヒィッ!魔女の薬品!?」

「んな訳ねえだろ。「紫芋のシチュー」に決まってんだろーが!」


鍋の中を覗き込んで悲鳴を漏らした舞桜(まお)を一蹴した奈菜(なな)は、カウンターから声を響かせた。


「朝飯出来たぜ!」


その一声に反応して、食堂にいる人がぞろぞろ動き出す。食堂には今日も活気が湧いている。



 皿を洗い終わってホットミルクを飲んでいる奈菜(なな)の元に、黒カーディガンの女性が現れた。目の下に隈を作っている。


亜澄(あすみ)!お前また徹夜してまで仕事してたのかよ・・・・・・。」

「ええ、少し立て込んでいまして。ブラックコーヒーを頂けませんか?」

「すぐ作るから、待っときな。その間に居眠りでもしとけ。」


亜澄(あすみ)は粉末のインスタントコーヒーではなく、豆を挽いて作ったコーヒーを好む。いつでも飲めるように、挽いた豆はストックされている。キッチンに香ばしいコーヒーの香りが漂う。


「お待たせー。って、寝ちゃってるか。」


奈菜(なな)がコーヒーを運んだ時には、亜澄(あすみ)は居眠りしていた。奈菜(なな)はテーブルにカップを置き、ブランケットをそっと亜澄(あすみ)にかけた。


(起きるのがもっと後になりそうだったら、また淹れ直そうかな。多分温かいのが好きだろうし。)


アパートで唯一料理人を務める奈菜(なな)は、住人の好みはあらかた知っている。ただ1人を除いて。


「やあ、久しぶり。元気にしてた?」


食堂にたった今入ってきた人物がそうだ。彼は、薄いジャケットを羽織っている。


光輝(こうき)・・・・・・!」


掠れ声の奈菜(なな)に呼ばれた彼は、満面の笑みを顔に浮かべていた。

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