《3》
戦闘員およそ80人に向かって突進したパンダは、まず先頭に並んでいた10人を、左脚を軸に放射線状に蹴散らした。体制を立て直すためにパンダと戦闘員の間隔が開いた所にオウルが駆け込み、そのまま姿を消した、様に見えた。倉庫の天井に飛び上がったのだ。鉄筋に掴まりながら拳銃をセットしたオウルに見向きもしないパンダが、叫ぶ。
「オウルさん!銃はダメだよ!」
「うるさいな。安心しろ、殺しはしない。それにコイツらに撃ったとして装備が硬すぎるさ、私が使うのはゴム弾だからね。」
まるで歌うようなオウルの呟きは、パンダには聞こえていない。
戦闘員達から雨のように浴びせられる弾丸を楽々避けるパンダは、パンチやキックを彼らに叩き込んでいく。オウルは、パンダの背後に回る戦闘員を狙ってゴム弾を撃ち続ける。
「ただ、これは長丁場になりそうだねぇ!」
いくらパンチやキックを食らわしてもすぐに復活してくる戦闘員集団を相手にするのは、非常に効率が悪い。
「オウルさん、ちょっと片付けたいからあれお願い!」
「はいはい。落とすよー。」
オウルは、下で戦っているパンダに向かってヌンチャクを落とした。それを左手で見事にキャッチしたパンダは、持ち変えると戦闘員達に向かって一振りした。その途端、倉庫に一陣の風が吹く。その風圧で何人かが吹き飛んだ。
「な、何だ!お前が使ったのはただの2本の棒だろう!」
「2本の棒?馬鹿にしないでくれる?これ、特注の竹双截紺なの!めっちゃスゴいんだよ!」
「パンダ、自慢も程々に。時間がないことを忘れないでくれ。」
「はーい。でもこれ、スゴいでしょ!」
オウルに注意されて大人しく返事をしたパンダはまたヌンチャクを構えると、背後から迫る戦闘員をなぎ払った。彼は可哀想なことに、倉庫の外まで吹き飛ばされた(その直後、海に何かが落ちたような音がした)。
「えっ・・・・・・?」
戦闘員が水音の意味を理解する間に、パンダはパンチやキックを繰り出しながらヌンチャクを振り回し、ほぼ全員を気絶させた、ただ一人を残して。
「おい、パンダ。そのガキ残して何しようとしてるんだ。」
「ねえボク、本当にレザールの戦闘員なの?」
彼女はオウルのぼやきを無視して、ただ一人残した少年に話しかけた。もちろん少年は警戒して、拳銃を構え直した。
「そいつと対等に戦えると思うなよ、レザールのガキ。そいつはアニマル・ファミリーのスパイなんだからな。」
「オレはガキじゃねえ!オレはガキなんかじゃ・・・・・・、」
姿が見えないオウルの言葉に反発しながら、少年は気を失って倒れてしまった。
「倒したのか?」
「馬鹿言わないで!この子が勝手に倒れたの。私、何もしてないんだから。」
「・・・・・・早く引き上げるぞ。また応援が来るかもしれない。」
「この子も連れていこうかなー。」
オウルは、何か得体の知れない生き物を見るかのような目でパンダを蔑んだ。
「クロウからの伝言だ。「情報屋達と合流しろ」。お前が何を考えているのか知らんが、首領への報告無しでそんな身勝手が出来ると思うなよ。」
「もちろん報告はするよ。」
「そんなに弱い戦闘員のガキを連れ帰って、仲間に出来ると思うのか?」
「何で弱いって思うの?この子も戦えてたじゃん。」
「お前が私と会話しながら手を抜きながらでもレザールの戦闘員と渡り合えていたからな。」
「なんか意地悪!」
「それがマフィアというものだ。」
月明かりに照らされたオウルの顔は、不敵に笑っているように見えた。




