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「ミノタウロス」

馬車の周囲を取り囲んでいた魔物は、すぐさま迅代たちの一団に襲い掛かる。

しかし、迅代は正面の魔物を切り刻み、その周囲の魔物は魔法士が攻撃魔法を撃ち込む。

魔力が尽きた魔法士は、ヒーラーの手によって、回復魔法で魔力を回復する。

すばしっこく回り込んだゴブリンが攻撃を仕掛けたが、護衛兵に阻まれ打ち取られる。


ひとしきり魔物を倒すと、今度はミノタウロスが出てきた。

魔獣グリムは馬車の前から動かないと見透かした上での行動だ。


その動きに対して、迅代が一人、ミノタウロスに相対するように前に出る。


迅代を見て、ミノタウロスが荒い息を吐く。

そして、戦斧を両手で持ち、構える。


『こいつは・・・ミノタウロスか・・・』

魔物の軍隊の戦士級の兵士と聞いていたことが有った。

戦闘力は、皇国軍の騎士に相当するほどとか。


迅代はちらりと馬車の前を守る、魔獣グリムを見る。

槍や矢が刺さって、鼻先を負傷している。

正に満身創痍の状態だった。

『だが、魔獣が居るという事は、勇者アリーチェは健在という事か』

そう考えながら、迅代は、キッとミノタウロスを睨む。


「ザッッッ!」

ミノタウロスがダッシュし、瞬時に迅代の前に現れる。

そうして、大きく振りかぶった戦斧を振り下ろす。


迅代は加速ダッシュで瞬間で左側に避け、そして、バトルナイフを突き出しミノタウロスの左脇腹をかっさらうように振り切る。

しかし、ミノタウロスは左腕を瞬時に突き出し小手にナイフのは先に当てて、切っ先をかわす。

「ギギッ」

小手の金属部分とナイフがこすれて異音が響く。


ミノタウロスは、正面に振り切るはずの戦斧を右腕だけで方向修正し、迅代に横殴りで斬りかかる。

恐るべき筋力である。

その動きに迅代は対応し、再び加速ダッシュでミノタウロスの後方に移動する。

ミノタウロスは、右手の戦斧の振りの勢いと、右足を軸に回転し、後ろに回った迅代と相対する体勢に持ち込む。


今度は、迅代がバトルナイフを順手に構え直し、ミノタウロスの正面から突っ込む。

それを見たミノタウロスは、右手だけで戦斧を振りかぶる。

左腕で迅代の動きに対応して、反撃する構えだ。


「サンダーボルト!」

迅代は電撃魔法を発する。

戦斧を振り上げたミノタウロスの右手に電撃が集中する。

「グオオオォォォ!」

ミノタウロスが目を剥いて声を上げる。

振り上げた右手は電撃に弛緩し、戦斧を直ぐに振り下ろせず、一瞬の隙が生まれる。


のけぞった状態のミノタウロスが、迅代の突進に、左腕を振り、脇からパンチを振るう。

その拳を、迅代はバトルナイフの切っ先で払う。

小手で防御されているが、それを突き抜けてバトルナイフが拳を切り裂く。

「グフッ!」

痛みに顔をゆがめるミノタウロス。

そして迅代の左腕からはサブナイフが繰り出され、戦斧を持つ右手の脇付近の隙間に差し込む。

「グウッ!」

左右の腕がダメージで使えないミノタウロスは、後ろに数歩引く。

そこを、更に、迅代の加速ダッシュで瞬時に距離を詰め、ミノタウロスの胸当ての下の接合部分にバトルナイフを力いっぱい突き込む。

「グオオオオァァァァ!」

ミノタウロスは深く差し込まれたバトルナイフに絶叫し、口から血泡を吹きだした。

差し込まれたナイフの切り口からドクンドクンと血が噴き出す。

そして、ゆっくりと後ろに倒れ込む。


迅代の勝利だった。


「うわぁぁぁ!」

人間側の兵士や魔法士が歓声を上げる。

それと同時に、魔物たちがばらばらと逃げ出す。


ミノタウロスを倒す事によって、魔法支援部隊の脅威は去ったのだった。


「・・・アリーチェ様?」

うっすらと目を開けたジェーナは、目の前にいるアリーチェの顔を見て呟く。

「ジェーナ!良かった!」

そう言いながらアリーチェはジェーナに抱き付く。


魔王軍の部隊は去り、本職のヒーラーによって、ジェーナの治療が行われ、意識を取り戻したのだ。

ジェーナはぐるっと周囲を見渡す。

そこし見慣れない血まみれの兵士を認め、つぶやく。

「勇者、ジンダイ様?」


「緑の勇者の人が助けてくれたの」

「わたしも、ジェーナも、グリムも」

アリーチェはジェーナに説明する。

「そうですか、ありがとうございます、ジンダイ様」

ジェーナは迅代に対して礼を言う。


うなずく迅代。

「動けますか?」

迅代はジェーナに聞く。

「ええ、動けます」

それを聞いて迅代は申し訳なさそうに言う。

「回復直後で申し訳ないのですが、攻撃部隊の勇者たちがまだ苦戦しています」

「魔法支援を実施したいのですが」


その言葉にジェーナはアリーチェを気遣う。

「アリーチェ様のほうの回復は・・・」

「ヒーラーに魔力回復をお願いし、済んでいます」

アリーチェはジェーナの顔を見て言う。

「もう、大丈夫だよ、わたしも、グリムも」


ジェーナは優しい目をして、アリーチェを見る。

「アリーチェ様、ご無事で本当に良かった」

「では、魔物たちに仕返しに行きましょう」

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