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「召喚魔獣」

司令部馬車の扉を開けると、騎士アークス、オーリアとヴォルカ、弓兵4名が揃っていた。

弓兵はもう矢を撃ち尽くし、全員がショートソードを抜いていた。

オーリアとヴォルカも、もう矢は撃ち尽くしていた。


彼らは迎撃してきた敵の魔物部隊を撃退し、迅代の合図で司令部馬車まで進出してきた。

その上で、司令部部隊を襲っていた残りのゴブリンも殲滅していた。


迅代はアークスにボーズギア皇子の状態を話し、今後の行動を検討する。


「ジンダイ様、私はボーズギア殿下の護衛騎士でもあるので、殿下を守らないといけません」

アークスは迅代に告げる。


「そうですね、では、司令部部隊を守備しながら、周囲の残敵掃討と負傷者を助けて下さい」

「そして戦力が整ってきたら、支援部隊の救援計画を立案してください」

「私は今から魔法支援部隊のほうに救援に向かいます」

そう言う迅代にアークスは言う。

「オーリアとヴォルカを連れていきますか?」

「彼らは良く私を助けてくれました」

迅代は笑って答える。

「二人は兵員の救助に役立てて下さい。彼らはクロスボウが使えないと戦闘できないんです」

「そ、そうなんですか・・・結構、度胸は有ったのですが・・・」

アークスの言葉に迅代は苦笑いをする。


「本当は・・・」

アークスは何かを言いかけて、言いよどむ。

「はい?」

「本当は、ジンダイ様の言う通り・・・」

迅代は、アークスの雰囲気から、戦闘前に問い詰めていた件だと察する。

「お話は後で聞きます」

言いよどむアークスの言葉を遮る。

「今は、一刻も早く、魔法支援部隊の救援をしてきます」


「そ、そうですね、ご武運を!」

「はい」

アークスの言葉に返事をすると、迅代はバトルナイフを構えながら、魔法支援部隊のほうに駆けて行った。


その頃、魔法支援部隊のアリーチェが乗る馬車の前には、黒い大きなオオカミのような魔獣が戦闘態勢で威嚇していた。


その魔獣には槍や矢が何本か刺さっているが、周囲には、数多くの魔物の死体が散らばっていた。


その魔獣こそ、アリーチェの召喚魔獣「グリム」である。


アリーチェの乗る馬車の周囲には、魔物がぐるっと取り囲んでおり、馬車に近づく魔物をグリムが一体で始末して回っていた。

ある程度、魔法支援部隊の被害が少ないのは、このグリムのおかげであった。


グリムが守る馬車にはアリーチェとジェーナが乗っているが、ジェーナはアリーチェに抱かれてぐったりしていた。

ジェーナは魔物の襲撃で腹部に傷を負い、意識が朦朧としている状態だった。


魔法支援部隊にはヒーラーの部隊もあるが、魔物たちに各馬車が分断されていて、各自自分たちの乗る馬車を守るのに精一杯だった。

部隊を護衛する兵士たちも徐々に討ち減らされ、攻撃を支援していた魔術兵士も消耗していた。

「ジェーナ、起きて、ジェーナ」

アリーチェは治癒魔法をかけながら苦しむジェーナに声をかけるが、返事は無い。

治癒魔法は見よう見真似でかけているもので、本来アリーチェが会得したものでは無い上に、アリーチェの魔力も消耗していた。

そのため、効果が弱くかろうじてジェーナの息をつないでいる状態だった。


当初の評価では召喚魔獣グリムは勇者と同じぐらいの戦闘力を持つと評価だったが、発揮できる能力は、アリーチェの魔力残量に比例する。

大規模魔法「スレッジャーギーム」を放った直後で、ジェーナの治癒も行っており、グリムはかなり力が制限されていた。


それでも、数多くの傷を受けながら、主人であるアリーチェを守っていた。


そこに、牛の頭を持ち、大型の戦斧を肩に抱えた魔王軍の兵士が前に進み出る。

ミノタウロスだ。

攻撃部隊の戦闘に参加していたが、魔法支援部隊が持ちこたえているでの、増援で派遣されたのだった。


ミノタウロスは戦斧を構え、魔獣グリムに向かう。

グリムはミノタウロスの気配に気づき、相対する。

そして「グルルルゥ・・・・」と低い威嚇の声を上げる。


グリムのほうも、このミノタウロスが今まで相手にしてきたオークやコボルドと比べ、はるかに強い事を感じ取っていた。

周囲に居たオークやコボルド、そしてゴブリンは、馬車とグリム、ミノタウロスを遠巻きで囲い「ウォ!」「ウォ!」と武器を空に掲げ、声を上げる。

1対1の勝負を見守るようだ。


グリムの口に青白い炎が纏わりつく、瞬間、「グオン!」グリムが口から青い火炎を吐く。

その火炎をミノタウロスはジャンプして避ける。

「グアァァァ・・・」

ミノタウロスの後ろに居た、オークやコボルドは火炎にさらされ黒こげになった。


ジャンプしたミノタウロスは、そのまま戦斧でグリムに斬りかかる。

グリムはその攻撃をぐるりとその場で回って避け、今度はミノタウロスに嚙みつこうとする。

「ガツン!」

グリムの顎が空で閉じられる。

ミノタウロスはぐるりと身をかわし、戦斧を横殴りでグリムに斬りかかる。

「ザザッッ!」

グリムの長い鼻先が戦斧によって切り裂かれる。

「ギャゥ!」

グリムはダメージを追い、一歩下がる。


「ウオオオォォ!」「ウワァァァ!」

周囲を取り囲む魔物達から歓声があがる。


グリムは負った傷と、アリーチェの魔力不足により、フラフラとなっていた。

アリーチェも馬車の中からグリムを見守るが、どうする事も出来ない。

「グリム・・・ごめんね」

アリーチェはグリムの悲壮な姿に涙を浮かべる。


そんな時、アリーチェの馬車の後方から、魔物たちの悲鳴が響く。


「ガァッ!」「グォォ!」

ある魔物は電撃を浴び、ある魔物は火炎に包まれ絶命する。

そして、時折、オークやコボルドの手足が斬られて宙を舞っている。


異様な光景に、ミノタウロスは、グリムを置いて、そっちを見る。


魔法士と護衛兵士を引き連れた、迅代がそこに居た。

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