「共闘」
「弓矢が来る!急いで遮蔽物へ!」
迅代は声をかけて、コボルドの弓矢の射線を遮る遮蔽物、元隠れていた場所である何本か立っている木を指さす。
迅代とアークスは弓矢の盾となるべく、コボルドとの射線に立ちふさがり、飛んでくる矢を叩き落す。
矢を撃って来ているコボルドは3体だった。
弓兵は負傷した仲間を抱えて、木の陰に移動する。
オーリアとヴォルカもそれに続く。
馬は騒ぎでどこかに走り去ってしまった。
全員が木陰に退避した後、迅代とアークスも木陰に移動する。
「なぜ、あなたが!?」
アークスは迅代に向かって問う。
「そんな事、言っている場合じゃないでしょ」
「弓兵は、弓を撃って来ているコボルドに対応してくれ!」
「あなたは私と、オーリア、ヴォルカと一緒にあっちです」
迅代はアークスにそう言って、トロールのほうを指さした。
トロール達の魔物は、こちらの姿を認め、包囲するように広がって走って展開している。
距離は30メルト※ほどまで近づいている。
※約18m
「アークス、ヴォルカ、二人で1目標を狙い援護射撃だ」
「トロールは無視しろ、この矢では効果が薄い」
「それと、俺と、この騎士様には当てるなよ」
矢継ぎ早に命令を下す。
「了解です!」
オーリアは元気よく返事をする。
ヴォルカは右手を上げただけだった。
早速二人は目標に向かって狙いを付ける。
「騎士様、オークは殺れる自信は有りますか?」
迅代は、アークスに聞く。
「い、1体相手なら・・・」
あまり頼りにはなりそうにないように思えたが、迅代はその言葉に応える。
「上出来です」
「トロールは動きが遅い、先にオークを倒します」
アークスは首を縦に振る。
オークは1体は棍棒、1体は装飾の付いたメイスを持っていた。
「では、右側の、棍棒のオークを頼みます」
「こっちはメイスのオークを殺ります」
説明をしている間に、オーリアとヴォルカ、そして弓兵が射撃を開始していた。
「オーリア、ヴォルカ、騎士様の援護を頼む」
「了解!」
オーリアの声を聞いて、迅代は、左側へ走り出す。
魔物たちは、ひとり突進してきた迅代を見て、メイスのオークと、コボルドが3体が包囲するように囲う。
「騎士様、行かないんですか?」
オーリアはクロスボウを射撃しながらアークスに声をかける。
「わ、わかっている!タイミングが悪いだけだ!」
「じゃあ、あの先頭のコボルドをやりますので、行ってください!」
オーリアはヴォルカとアイコンタクトを取り、右側から来る先頭のコボルドを射倒す。
「さあ!」
オーリアの声に仕方なく、前に進み出るアークス。
騎士の存在に気づいた棍棒のオークが、アークスのほうに向かって来る。
「俺だって、腕に覚えが無いわけじゃあ無いんだよ!」
アークスはそう叫びながら、ナイフを振りかざして突っ込んできたコボルドと剣を交える。
棍棒のオークがアークスに近づこうとするが、クロスボウの矢で肩を射抜かれ、怯む。
アークスは戦っていたコボルドを始末すると、オークと対峙する。
利き腕の肩を射抜かれ、反対の手で棍棒を持ち直し、襲い掛かってくるオーク。
アークスは棍棒の攻撃をかわすが、傷を受けた右手で殴り掛かるオーク。
これを避け切れず、アークスは殴り飛ばされる。
倒れたアークスに、再び棍棒で殴り掛かろうとするが、今度はクロスボウの矢が目に刺さり、膝をつく。
好機と見たコボルドが倒れたアークスにナイフで襲い掛かる。
しかし、飛び掛かってくるコボルドを、アークスはロングソードを突き刺して始末する。
そして、目に矢が刺さってもうろうとしているオークに、アークスは止めを差した。
しかし、目前にはトロール2体の巨体が迫っていた。




