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「敵中へ」

朝陽が昇る頃、代理指揮官に指揮されたスカウト部隊と、支援部隊の分遣隊であるロングボウを装備した4名の兵士が集まった。

スカウト部隊の代理指揮官と、ロングボウの兵士は馬に乗っているが、スカウト部隊の所属兵士である2名は徒歩行軍の装備でたたずんでいる。


スカウト部隊の代理指揮官であるアークスは号令を発する。

「先行陽動隊、出撃」

先頭に2頭の支援部隊兵士の馬、その後ろにスカウト部隊の2名の徒歩兵士、騎士アークス、と続き、最後尾は2頭の支援部隊兵士の馬と、まるで囚人の護送だった。

徒歩で歩き出したオーリアは普段とあまり変わらないが、ヴォルカはすでに青い顔をしていた。

やはりヴォルカはあまり寝られなかったようだ。


ヴォルカは、オーリアに、迅代の計画は寝る前に話した。

大声を出して喜ぶ勢いのオーリアをなだめるのも一苦労だった。

だが、その後、ぐっすり寝てしまったようだった。

ヴォルカは絶対にまねできないと思って呆れていた。


オーリアは行軍しながら、絶えずキョロキョロと周囲を見回している。

その様子をアークスに見とがめられた。

「おい、2年兵、そんなに風景が珍しいか?」

その言葉にオーリアはおおらかに答える。

「いや、魔物とか出るかも知れないじゃないですか。ちょっとでも早く見つけたいんですよ」

「ふん、臆病なんだな」

「そりゃあ魔物は怖いですよ」


ヴォルカはそんなやり取りを聞きながら、思っていた。

『どうせ隊長を探してるんだろう』

『そう簡単には見つけられないだろうけど』


迅代は無事に野営地を抜け出し、先行する一行に見つからないように、慎重に後を付けていた。

ぐるっと回り道で村の後方にまで進出するのに3時間ほどかかるが、行程の8割りほど来たところで、一行は少し早い昼食を摂る。


迅代もそれに合わせて、物陰に隠れながら携帯食料のパグルをかじり、水を飲む。


それから再び行軍し、どうやら攻撃地点に着いたようだった。

村まで300mほどの地点で、あまり身を隠せる遮蔽物となるものは少ないが、支援部隊の弓兵は、馬を降りて準備を始める。


アークスも馬を降り、オーリアとヴォルカに来るように身振りをする。

「お前たちは、支援部隊の護衛のため、50メルト※ほど前進して警戒を行え」

※約30m

「撤退のタイミングで声をかける」

「それまでは、持ち場を動かず村の方向を警戒しろ。いいな」


アークスの言葉にオーリアが口を開く。

「置き去りにとか、しないで下さいよ」

想定外の言葉に、アークスは図星を刺されたように、言葉に詰まりながら、言う。

「っ、馬鹿な事を言うな」

「ちゃんと声をかけてやる」

そんなアークスの顔は赤面していた。

嘘をつきなれていない人間は嘘を言う時に緊張するものだ。


「わかりました、信じます!」

オーリアは真剣な顔で言う。

アークスはオーリアから視線を逸らす。

どうやら悪人役は板に付いていないようだった。

ヴォルカは『あまりイジメるなよ、まあ、いい気味だけど』と思いながら無言で居た。


その頃、迅代が立ち木に隠れて周囲を警戒する中、近くの丘に人影のようなものを見つけていた。

『こんな所に、人?』

『もしや、避難した村人?・・・』

だが、よく目を凝らすと、シルエットが人の形より少しいびつに見える。

『魔物!?』

そう認識すると、魔物であることが分かってくる。

恐らくコボルドだ。

よく見ると2体居る。

今まで戦ったコボルドより、装備は良さそうだ。

金属を使った胸当てや、小手を付けていそうだ。


『これは先行部隊はすでに見つかっているな・・・』

『仲間に連絡して攻撃の機会を伺っている所か?」

『後方に進出している部隊が小部隊であることが既に知られているとすれば・・・』

『陽動攻撃による混乱の効果はほとんどなくなる』

『そうすると本隊の攻撃は多少苦戦するかもしれない』

『しかし、それでも、勇者は押し切れるだろう』

迅代はそう楽観視していた。

それよりも、先行部隊は奇襲を受けるかもしれないほうが気がかりだった。

どのぐらいの兵力を集めてくるのか。

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