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「命令違反」

魔王軍の襲撃は、難なく、排除された。

恐らく威力偵察だったのであろう、魔王軍は隊列先頭にオークとトロールとコボルドの混成部隊をぶつけて来た

しかし、当然、勇者の敵では無く、すぐに敵は撤退した。

だが、周辺に伏兵を配置していて、隊列側面からも攻撃を受けたが、数は多くなく、魔法支援部隊、支援部隊の護衛兵で十分排除できた。

空を飛ぶハーピーを倒したのは、スカウト部隊だけだったが、1体のみ、残りは撤退して行った。

恐らく、魔王軍討伐部隊の規模などは、敵に知られてしまったと思われた。


隊列は停止したまま、各部隊の指揮官がボーズギア皇子の元に集められる。

迅代にも声がかかったので、一応、顔を出す。


「諸君、敵の攻撃部隊など、このように勇者を擁する我が部隊では、瞬時に撃退できる」

「どのような敵が来ようとも、それは変わらないだろう」

「今の戦いで、敵も我が部隊の精強さを思い知ったであろう」

「このまま進軍し、敵が準備をする前に、一気呵勢に村の解放を行おうと思う」

ボーズギア皇子は自信有り気に、各部隊の指揮官を見回す。


「作戦は、当初予定通り、魔法支援部隊の大規模魔法の攻撃の後、攻撃部隊が突入し攻撃を行う」

「また、支援部隊の一部とスカウト部隊は、後方に進出し、陽動攻撃を行う」

ボーズギア皇子が迅代のほうを睨みながら告げた。


不意にスカウト部隊の名前が出た事に、迅代は混乱する。

「話が違います、司令官閣下!」

「我が隊は練成途中とお伝えし、作戦の参加は出来ない旨承知いただいていたはずです!」

迅代は強い調子で意見を述べる。

各部隊の指揮官たちも、聞いていた話と違うとして、ざわざわとする。


「聞けば、先ほどの戦闘で、スカウト部隊は魔物を討ち取ったそうでは無いか」

「もう、十分な部隊としての戦力を持っていると見た」

「仲間が戦闘をするのを黙って見ている訳にもいかないであろう」

ボーズギア皇子は見下ろすような目つきで迅代に言う。


「しかし、我が隊の隊員は、まだまだ技量が不足しております!」

「また、我が隊は部隊の作戦方針も知っておらず、この陽動作戦の詳細も知らされていません!」

「我が隊の同行は承服できません!」

それでも迅代は引かない勢いだ。


「これは決定事項である」

「スカウト部隊指揮官は、総司令官の命令を聞くように」

ボーズギア皇子は冷たく言い放つ。

出撃前の約束など無かったかのように。


『くそ、ボーズギア皇子は俺たちを囮にする気・・・いや見殺しにする気か・・・』

『そうなると、前回の戦闘の火矢も・・・、そこまで・・・』

迅代はルーフとグリンの死に顔が浮かび、怒りがこみ上げる。


「我が隊は攻撃には参加しません!以上です!」

迅代はその場を去ろうとするが、ボーズギア皇子が叫ぶ。

「スカウト部隊の指揮官は命令違反を犯そうとしておる、指揮官を拘束せよ!」

迅代がふと気づくと、ボーズギア皇子の取り巻きの兵士が両脇に居る。

そして、迅代の両側から押さえつける。

「な、司令!あなたは!!」

迅代はボーズギア皇子のほうを睨む。

そこでボーズギア皇子が言う。

「命令違反、いや、敵前逃亡がふさわしかろう」

「よって、スカウト部隊の指揮官を解任するものとする」

この様子を各部隊の指揮官たちは見ているが、誰も声を上げようとしない。

あれほど、スカウト部隊は作戦に参加しないと言っていたのに。


迅代は無力感に打ちひしがれる。

『俺は、何のために戦って来たんだ・・・』

両腕を2人の兵士にがっちり押さえられた迅代はその場から連れて出されて行った。

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