「難題」
セレーニアとクロスフィニア皇女は、お茶会の席で頭を悩ませていた。
「勢いよく、ジンダイ様にジュウについて作れるか考えるって言ったけど、4人の専門家はお手上げ状態だし・・・」
クロスフィニア皇女は困った顔でセレーニアに愚痴る。
「そうみたい、でしたね」
セレーニアも仕方ないような諦めの声で言う。
「あの接見の後、それぞれの専門家に感触を聞いた感じでは、難しそうでしたね」
「武具の専門家は、まだ、見込みが有りそうでしたが、図面さえあれば、と言っていましたから」
「でも錬金術は素材も足りず、いろいろな実験を考えると、今から始めても、かなりの時間がかかると言っていました」
「魔法とアーティファクトのほうは、なんだか関係ないという雰囲気をだしていましたし」
「ジンダイ様が元居た世界は、錬金術や工作技術が大変発達していて、魔法を使ったような道具が沢山有るのだとか」
「逆に、魔法は無いとおっしゃっていました」
考えながらセレーニアが呟く。
「同じ技術で考えるのは無理が有るのかも知れません」
「ジンダイ様の世界程発達している技術を、わが国で再現するのは難しいでしょう」
「逆に、ジンダイ様の世界にない技術、魔法技術やアーティファクトの技術で補完する事を考えるほうが良いのかも知れません」
セレーニアの呟きに、クロスフィニアが応える。
「なるほどねー、でも、ジンダイ様の世界の技術を、うまく、魔法技術なんかに置き換えて考えられる人が居ないと難しいわね」
その言葉を聞いて、セレーニアは思う。
『さすがフィア、頭の回転が早い』
「では、工作のような技術と、魔法とで、両方の事が考えられる人材が必要ですね」
「うん、そうだね、あの4人の専門家たちに、そのあたりを説明して、人材を探してみてもらえるかな?」
クロスフィニア皇女はセレーニアに依頼する。
「わかったわ、フィア」
少しお茶を飲んで、クロスフィニア皇女が口を開く。
「そういえば、魔王軍討伐部隊はまた出撃したのね」
「はい、今回はスカウト部隊は、作戦行動はしないと、ジンダイ様は言っていました」
「うーん、あのバカ皇子、本当に大丈夫かしら」
「皇女殿下、いくら誰も聞いていないとはいえ・・・」
セレーニアの忠言に、クロスフィニア皇女は悪戯な顔で言う。
「ふふふ、ちょっと言って見たかっただけ」
「そうでないと、ストレスが溜まって・・・」
「少し前の戦勝パーティーに欠席したものだから、リューベナッハ妃の圧力が見え隠れしてねー」
そう言いながら、皇女は足をブラブラさせる。
「今、密かに皇女派の勢力を固めている所です」
「まだ、始めたばかりで勢力も小さいため、公にすれば直ぐに潰されてしまいます」
「時間はかかるとは思いますが、ご辛抱を」
セレーニアは形式ばった形で答えた。
「わかってる、やるからには、勝たないとだね」
クロスフィニア皇女は、セレーニアの手を握り言った。
「はい、皇女殿下」
セレーニアもその手を握り返した。




