「情報収集」
その日の午後からは、迅代はセレーニアに思いつく質問をぶつけていった。
しかし、半日では終わらず、翌日も、その翌日も、と休憩をはさみながら一日に4~5時間、質問をつづけた。
そんな迅代にセレーニアは可能な限り対応してくれた。
まずこの国に事だが、皇帝も言っていた「ブリムブリガ皇国」と言い、「シュバルツ・ブリガルデゼーン皇帝」が統治する国で、12の地方領と皇帝直轄領からなっているらしい。
皇族がこの国の頂点であり、皇妃リューベナッハ、第一皇女のクロスフィニア、第一皇子のボーズギア、第二皇子のヴィッツグリュンの方々が居るのだという。
もう一つの国家の権威の頂点として聖教というものが存在し、教皇という存在が有るようだ。
聖教は表向き、統治や政治的な向きには口出ししないしきたりのようだが。
地方領には皇帝に任命された領主が居て、言わば州や県の役割を担っている。
そして領主配下の固有の軍事力も持っているとの事だった。しかし国家の危機には戦力を差し出す盟約を結んでいるとの事だ。
皇国はこの大陸の中でも最大の国で、それ以外の国は、もう一つの大国ラ・シーム国、蛮族の国キュイロ、他に種族小国が10程も有るらしい。
大陸を隔てる海を渡れば、10もの国が有るようだが、海を渡っての交易は、海獣という魔物が跋扈するため、盛んでは無いらしい。
魔王軍の状況に関しては皇国の領のひとつ、険しい山岳地帯にある、ズベーレン領という所からの連絡が途絶え、どうやら魔王軍の支配下に置かれているとの思われていると推測されていた。
魔王軍は魔獣や魔人などの魔物として扱われる者たちが魔王の下に組織的な軍隊をなして、人間の世界に脅威を与える存在との事だった。
迅代は、魔物と皇国は和睦できないものなのか?と聞いてみた。
しかし、魔物は人を侵食し、人では無いものにする存在であり、魔王軍に襲われた村は一人残らず消え去り、戻って来た者はいないのだという。
言い伝えによれば、連れ去られた人は、魔物の贄にされるか、魔物自身に変えられてしまうのだろう、との噂が流布されているとの事だ。
これを聞いた迅代は、恐怖が混じった言い伝えなので信ぴょう性は下がるように思えた。
しかし、これが本当であれば、自分が人間以外の存在になることを善しとする人は少ないだろう。魔王軍は人類と相容れない敵、という所だ。
これではどちらかがせん滅されるまで戦いは終わらないだろう。
迅代は先に召喚されたという勇者についても聞いてみた。
しかし、セレーニアによれば、他の勇者については、まだはっきりとした力などはわかっていないのだという。
剣士ヴィンツは、見た目は壮年の男性剣士で、召喚の儀の際、結界を素手の状態で力ずくで撃ち破ろうとし騒ぎとなったが、皇女殿下、皇帝陛下の説得に矛を収められたとの事だった。
魔法士として大きな力を持つクロスフィニア皇女の結界を、あと一歩で撃ち破れそうだった事からかなりの腕の持ち主であろうとの評価だった。
魔法剣士ザーリージャは、20代を思わせる褐色の肌を持つ女性で、戦士の名にふさわしい筋骨隆々の肉体を備えているとの事だった。
召喚直後、言い伝えの他の召喚勇者のように混乱するような事は無く、勇者が運命であるなら受け入れようと言う事だった。
召喚に立ち会った聖教会大司教が言うには、神の啓示を受けて召された勇者様なのであろうとの事だった。まだ実力のほどはうかがい知れないとの事だった。
魔法士アリーチェは、皇女殿下よりも幼い少女で、召喚された直後混乱の余り、使い魔の黒獣「グリム」を召喚して、結界を打ち破り、召喚の儀に立ち会った一同を威嚇する騒ぎが有ったそうだ。
皇女殿下の結界を破れる使い魔を使役できるのだから、魔法力は皇女を凌駕するものと見られるそうだ。
アリーチェは皇帝の前でも恐れず、行儀もままならない子供のような態度を取るため、すこし扱いが難しいと噂になっているようだ。
その他には、一応、魔法についても確認してみた。
風や火を起こしたり、あの結界のような障壁を作ったり、攻撃や束縛、治癒の魔法なんかも有るようだった。
これはゲームなんかにあるイメージ通りの魔法の力だと迅代は思った。