「昼食」
セレーニアから、昼食はいかがか?と聞かれた。
召喚されたのは前の世界の午前中の頃ようだった。
迅代が爆発に巻き込まれたのと同じぐらいの時間のようにも思えるが、相関関係が有るかは不明だった。
召喚された後、空腹という感じではなかったが、食事の内容から知れる事も有るだろうと思い、話をつづけながら、という事で食事を出してもらう事にした。
そして食事を待つ間、金装飾ローブの着替えを用意してもらった。
全裸にローブで美人の女性と話すのはさすがに気になっていた。
着替えと料理は待女が持ってきてくれた。
着替えは下着にシャツにズボン。書斎のような部屋で着替えることにした。
当然のように待女が手伝おうとしてきたが丁寧に断って一人にしてもらった。
下着はちょっと形が違っていたが、何とか上下装着できた。
その後、30分ほど待って出てきた料理は、肉と野菜を焼いて並べた皿と、ソースのかかった茹でパスタのようなもの、そしてスープだった。
食事は一応、ナイフとフォークとレンゲのようなスプーンで摂る風習だった。
食べてみたが肉の味はすこし牛のような臭みが有り、味付けは薄味だが食べられないものでは無い。
パスタやスープは何の味かはわからなかったが嫌味の無い食べやすいものだった。
セレーニアが口に合うのか心配していたが、美味しいと答えておいた。
「失礼ながら、この料理ですと、一般の国民のから見るとどういう料理になるのでしょう?」
迅代の問いに、セレーニアが答える。
「ベゾメ牛の肉に付け合わせ、茹でピローネの椀、そして、乳をベースにしたスープですので、貴族の一般的な昼食と言ったところでしょうか・・・」
「一般の国民は風習も有って、昼食を摂らない場合が多いと聞いております」
「その代わりに、早い目の夕食を摂りますが、メインは家庭ごとにアレンジされた茹でピローネかパンで、恐らく肉料理は特別な時にしか出さないと聞いております」
「あと卵は少し高価ですが好んで食べられています」
食事をとりながら、そうなんだ、と聞く迅代。それほど豊かと言う訳ではないのか、と判断した。
貨幣や職業についても聞いてみた。
貨幣はピネという単位が皇国の通貨で、今の相場では10ピネほどで果物が1つ買え、300ピネで10食分ほどの茹でる前のピローネが買えるのだと言う。
貴族以外の職業は、郊外の村では農民、猟師が収穫を行っており、町では、衣類や道具、加工食品の製造販売、運搬、建築、肉体労働などの職業が有るらしい。
都市を維持するのに必要な仕事が一通りと言ったところか。
あと、冒険者や冒険者チームと言った、報酬次第で色々な仕事をしてくれる存在も居るらしい。
ゲームによく出てくるやつか、と思っていれば良さそうだった。
食事の後、セレーニアが、今日の午後は休息とするか尋ねて来た。
自分の体力や気力は十分だった。
思考も召喚時のような鈍りも無くなっていた。
1時間ほどの休憩時間を申し出て、また説明をお願いしたいと告げた。
迅代としては続けて説明を聞いてもいいと思っていたが、相手は女性、特に優しく、が彼のモットーだった。戦場以外に限りだが。