「偵察行動」
明けた次の日、ガレーネのパーティーは、川の左側、リガルドのパーティーは川の右側、という分担で偵察行動を開始する事とした。
スカウト部隊は本部に残り、偵察結果の統合と、食事の準備、および、夜間の見張り要員として行動する。
夜中も誰かが番をするので、迅代、ルーフ、グリンの3名を3交代シフトで活動する事にした。
1名づつ、1日の2/3づつで行動する形で、誰かと1日の1/3の時間を一緒に行動する。
まず初日は朝食後に、迅代が集めた情報を、本部の統合地図に書き込みながら全員に説明する事にした。
「向かって川の左側の森についてだが、俺は足を踏み入れていないので全く分からない」
「上流に登って行って、川を挟んで見た感じでは、右側の森よりも険しいようだ」
「そして渓谷の25000メルト※ほど前の地点に高見やぐらが有った」
※約15km程
「高見やぐらの上にはオークとハーピーが数体居たようだ」
「やぐらの上からでは、木々が途切れて見晴らしの良い川縁に出てしまえばすぐに見つかってしまうだろう」
「やぐらの周囲8500メルト※ほどの範囲は川には出ないほうが良いだろう」
※約5km程
「言うまでもないが、まだ未発見の監視拠点や高見やぐらが有るかも知れない、注意してくれ」
リガルドパーティーのメンバーはそれぞれうなづく。
「川の右側の森だが、川から8メルト※ほど内側の森の中を中心に、先日、俺は進んで行った」
※約5m
「森に入って上流に8500メルト※ほど進んだ所で、川の周辺が大きく開けているんだが、そこに冒険者の死体が有った」
※約5km程
「数日前に出発した、村が依頼した冒険者のようだったが、調査はしていない」
「今回も、危険だから特に調査はする必要はない」
「この近くには俺が見た時点で魔物たちが監視拠点らしきものを建築していた」
「ゴブリンが多数と、8メルト※ほどの巨人が2体、それからオークが1体居た」
※約5m
「オークが指揮を執っているようだった」
「それから高見やぐらが有る42000メルト※付近で引き返したが、それまでにパトロールしている部隊に1度出くわした」
※約25kmほど
「オークが1体とコボルドが4体」
「そして帰還途中にも別のものと思われるパトロール隊に襲撃された」
「最初はコボルド2体のみ、その後で森の出口で待ち伏せされオーク1体とコボルド1体、正体不明の弓兵1体だ」
「この時、弓兵には逃げられた、すまない。警戒が厳重になっているかも知れない」
迅代の言葉にリガルドは肩をすくめて答えた。
迅代は再度全員を見回して言う。
「この森について、できれば5日ほどで全容を把握できるようにしたいと考えている」
「少し厳しい注文と思うが、よろしく頼む」
「あと、スカウト部隊のモットーは、魔物を見かけたらまず逃げろ、だ」
「もし、森から1日経っても帰ってこなかった場合は一度だけ捜索隊を出す」
「それ以上は無理だと思ってくれ」
「あと、敵に追われる状況で森を抜けたら、笛を吹いて合図してくれ」
「我々スカウト部隊が援護のために駆けつける」
「そして、最悪の事態として、魔物の大軍が部隊本部に襲来した場合は、事前に打ち合わせた集結地点に後退する」
「そうならないためにも極力隠密行動をお願いしたい」
「以上だ」
また迅代は全員を見渡す。
「何か質問は有るか?」
今回は誰も質問しなかった。
魔物が多数いるであろう森に入るのだ。
緊張感が今までとは違っていた。
10秒ほど沈黙が続く。
「では、各員、行動を開始してくれ」
迅代の言葉に各員がそれぞれが動き出した。




