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「遭遇戦」

帰り道は速度優先で行動する。

すこし欲張って進みすぎた。

高見やぐらの存在の発見と言う、成果は有ったが。

だが太陽が陰る頃、16時ぐらいまでには野営地に戻らないとグリンが撤退を開始する。

徒歩で村まで帰る羽目になるのはごめんだ。


そういう焦りが行動を雑にしてしまったのかもしれない。

「ザザザッ!」

野営地まであと10kmほどと言う所で、草木の音が立つのにも構わず移動する音に気づく。

犬顔の魔物がナイフを持って左側から走って来ていた。

『見つかったか!』

迅代は状況を把握しようとぐるっと見回す。

左20mほどに2体。森の木々を縫って犬顔の戦士が走ってくる。他にも居るかも知れないが、今はそれしか見えなかった。

迅代も走る。バトルナイフを抜き、右手に持つ。

犬顔、コボルドは素早かった。

だんだんと迅代に接近してくる。


2体同時の相手は不利と見た迅代は、まずは1体を倒す事を狙う。

迅代も木々を縫うように走りながら、2体のうちの左側に居る奴との間合いが縮まるように走る。

しかし、なかなかうまい体勢にならない。

チームワークは中々良いようだった。


だんだんと距離が縮まり、3mほどに近づいていた。

2体のうちの遠いほうの奴がナイフのようなものを投げる。

目の端でそれを見た迅代は、逆にフェイントをかけて、ナイフを逃れると同時に攪乱用の粉袋を、もう一体の近いほうの奴に投げる。

あまり上手くは当てられなかったが、舞った粉瘤の一部を吸い込んだらしい。

ガクンと走る速度が落ちて顔を手でこすっている。


『チャンス!』

その間に、ナイフを投げて来たほうのコボルドと対峙する。

この世界に来て会得した加速ダッシュを使い、瞬時にコボルドの後ろをすり抜ける。

その動きと同時にバトルナイフでコボルドの右腕を掃う。

皮服のみでしか防護されていない右腕は深くナイフで切り込まれる。

「ぎゃあ!」

コボルドは斬られた腕から大量の血を噴き出し、地面に転がる。

迅代は、そのコボルドは放置し、今度は粉を拭っているほうのコボルドにダッシュで向かう。


当然、奴も無抵抗ではない。

片目をつむった険しい表情で、ナイフで切りかかってくる。

「ギン!」

そこを相手のナイフをバトルナイフ払い、瞬時に左手でサブナイフを抜き、刃をコボルドの腹部に突き立てる。

「ギャン!」

サブナイフを腹部に食らったコボルドは、悲鳴なのか泣き声なのか分からない声を発する。

こっちのコボルドも血を流しながら地面に倒れ込む。


初めて魔物を倒した迅代は興奮していた。


倒れたコボルドを見て10秒ほどたたずんでいたが、息が整ってきて、落ち着く。

周囲からは更に何かが襲ってくる気配は感じなかった。


そして一瞬躊躇したが、意を決し、コボルド2体にトドメを差した。

『捕虜は取れない、手の内も明かせない。悪いが・・・』

これもこの戦いに参加すると決めた時に、覚悟した事だった。

コボルド2体の死体を目立たない所に移動し、大きな血の跡だけ枯れ葉や土でごまかした。

そして帰り道に戻っていった。


そんな迅代の姿を少し離れた所から見ている目が有ったが、迅代は気づいていなかった。


今度はもう少し警戒を強くして帰り道を進む。

何か胸騒ぎのようなものを感じるが、帰りを急ぐのが優先だ。


森が途切れる川沿いの道の端が見えて来た。

そして森を出て野営地へ戻る河川敷を歩いているその時。


「ひゅん」

迅代は左肩に痛撃を感じる。

「ぐっ!」

防御力の有る皮服のおかげで深くは刺さらなかったが、矢が刺さっていた。

急いで転がり、これ以上目標になるのを避ける。

「ひゅん」

矢がもう一本来たが、当たらなかった。

『威力からしてショートボウって所か』

矢は森の中から射かけられていた。

射線が高いので、恐らく木の上に昇っているのだろう。


射線から死角になる所が近くに無いか探した。

近くの岩塊でも20mほど先だった。

『少し遠い。射手は1人っぽいし、このまま伏せているほうが良いか?』

そう考えていたが、その考えは甘かった。


右側に棍棒を持ったオーク、左側にナイフを持ったコボルドが現れた。

そして後ろには弓が狙っている。


完全に囲まれているようだった。

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