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「宿営地」

迅代を隊長とするスカウト部隊は、出立から2日ほどで、グーゼンテ領に入ることが出来た。

グーゼンテ領の守備隊に連絡を付け、魔王軍討伐部隊の先発部隊であることを告げ、領内での行動の自由を取り付けた。


グーゼンテ領でも勇者が召喚されたことは知られていたが、迅代がその勇者の一人であることは知られていなかった。

ヴィンツ、ザーリージャ、アリーチェの3勇者は、名前だけだが知られていたようだが。

無論、迅代は自分も召喚された勇者であることは話さなかった。

守備隊のほうも、迅代の部隊は、近衛隊のスカウト部隊から改編された急いで駆け付けた小部隊程度にしか思っていないだろう。

兵員3名と、陣容が小さすぎると言う意味では悪目立ちしていたが。


グーゼンテ領の南東側に問題の渓谷は有るらしい。

ガムル山とガイヤス山というそれほど高くは無いが、切り立った山が有り、その間が渓谷となっているとの事だった。

迅代は領内の冒険者ギルドに行き、ガレーネとリガルドのパーティーに渓谷の少し離れた下流近くにあるエーリズ村という所に集結するように伝言を頼んだ。

各パーティとの連絡は冒険者ギルドへの連絡依頼で行う事にしていた。


迅代達は、グーゼンテ領守備隊の兵員にエーリズ村まで案内して貰える事になった。

魔王軍討伐部隊への協力要請は、すでに出ているのだろう。

ボーズギア皇子が居るとこう上手く事が進むかは分からないが、共通の敵、魔王軍に対しては当然の対応であろう。


エーリズ村の近くの野原にスカウト部隊の宿営地とさせてもらう事とした。

荷馬車を中心にして、少し大きめの部隊用テントと、各員が個人用のテントを張る。

夕方ごろには設営も終わり、夕食を摂ることにした。


「冒険者パーティーが来るまでは待ちですかねえ」

夕食を摂りながら、ルーフが迅代に聞く。

「いや、明日は朝から周囲の調査だな」

「冒険者パーティーが揃うと、彼らには森に入ってもらう」

「俺たちは川沿いに上流へ上って行く事にする」

ルーフは内心、面倒くせええ、と思う。表には出さないが。


「ただ、調査は、俺とグリンで行う」

「ルーフはここ本部の番をしつつ、冒険者パーティーの到着を待つのと、村人から情報を集めてくれ」

ルーフの顔がぱっと明るくなる。

「へへ、了解でさあ、村人から情報をしっかり集めやすぜ」

急に元気が出るルーフを見て『調子が良い奴だな』と迅代は苦笑する。


「魔物に遭遇しますかね・・・」

グリンが恐る恐る聞く。

「この周辺ではまず出ないだろう。もっと上流の、森に入ってからだろうな」

「だが、訓練でも言ったが、魔物を見ても慌てて攻撃したりしないように」

「相手が気づいてないならやり過ごすんだぞ」

グリンの問いに迅代が答える。

「は、はい・・・」

少し自信なさげにグリンは答える。

『怖いもの知らずの新兵も、いざ戦場に近づいていると考えると不安なんだろう』

迅代は内心で考えた。


「へへ、戦場なんて、怖がってるやつが先に死ぬんだぜ」

ルーフが知ったような口でグリンに言う。

以前と比べ、ルーフがグリンに話しかけるようになった事に迅代は気づいた。

『何か心境の変化が有ったんだろうか・・・まあ仲間意識を持ってもらうのは良い事だ』


「ルーフさんは魔物と戦ったことが有るんですか?」

グリンが真摯に聞く。

「あったりめえよ、大群で襲われたが、剣を振り回してたら勝手にやられてくれたぜ」

「そんなに簡単なんですか?」

「まあラッキーも有ったんだろうが、3匹ぐらいは倒したぜ」

「すごい、すごいですね!」

もっとも倒したのは初級冒険者でも倒せるゴブリンだったが、それは言わないルーフであった。


「まず、魔物と戦わないといけなくなったら、相手の目を見るんだぜ」

「何故ですか」

「そりゃ気迫が大事だからだぜい」

「なるほど・・・」


「ルーフ、それぐらいにしておけよ」

迅代はルーフの魔物戦闘法の講釈に割って入る。

「へーい」

ルーフは頭をかいて講釈をやめる。

「グリンもルーフの武勇伝は話半分に聞いておけよ」

「何故ですか?」

グリンは不思議な顔で迅代に聞く。

「それは話を盛るのが好きだからだよ、ルーフは」

迅代はルーフのほうを見て言う。

「へへっ、まあ、話は楽しいほうが盛り上がるってね」

「え、ウソなんですか?」

グリンの視線に目を合わせないルーフ。

「ウソでは無いだろうが、オーバー、ってとこだな」

迅代がグリンに言う。

「ええ、真剣に聞いていたのに・・・」

そんなグリンの様子を見てルーフが茶化す。

「まあ、若い内は騙されてナンボだぜい」

迅代は間髪入れずに言う。

「それもテキトーだからな」

グリンは更に頭を抱えて混乱する。

「うう、何を信じていいんですか!」

何事にも素直なグリンを迅代とルーフはほほえましい気持ちで見ていた。


迅代のスカウト部隊は、部隊の形としてはまだまだであったが、在り様のようなものは出来つつあった。

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