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「総評」

2つの冒険者パーティーの演習は終了した。

2パーティー共、2カ所の陣地の捜索は成功していた。

ただ、ガレーネのパーティーは兵隊の笛は鳴らず、リガルドのパーティーのほうは1カ所分、兵隊の笛が鳴ったという違いが有った。

ガレーネのパーティーの面々は、リガルドパーティーに勝ったという気持ちで、気分が良さげだった。

反面、リガルドパーティーの面々は、少し元気が無いように思えた。


迅代が演習の締めとして、全員を集めて総評を行う。

「まずは、両パーティー共に2つの陣地を地図にマーキングして任務を完了してくれた事、期待通りの働きでした」

「また、襲撃に対する対応策も、概ね順当で、任務を任せられるレベルに達していると思います」

「両方のパーティーと契約したいと思いますので、よろしくお願いします」

迅代が頭を下げる。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

ガレーネが了承の返事をする。

「ああ、わかった」

リガルドも同意する。


「あと、余計なお世話かも知れないが、俺が2つのパーティーに対応した感想を言っておきたいと思う」

「もし納得するようなら参考にしてくれ」

迅代はぐるりとメンバーを見渡して話し出す。

「まず、ガレーネパーティーだが、少し襲撃に対する脆弱性が有ると思う」

「今回、二人を矢で攻撃したが、もし、演習用の矢でなければ、負傷した仲間を置いて作戦継続は難しいだろう」

「キノンさんと言う回復役が居るので、その欠点もカバーできるが、二手に分けた場合は、問題となりそうだな」

「回復薬でカバーするか、まとまって行動したほうが良いかも知れない」


キノンはその言葉を聞いて肩をすくめる。

矢を受けたザズはバツの悪そうな顔をした。ココリはすこしうつむいている。


「リガルドのパーティーだが、個人の能力は高い」

「矢のような飛び道具にも、感覚で避け切り、結果的に一度も矢を受けなかったのは凄いと思う」

「ただ、一人で捜索と襲撃対応を行うのは、やはり、少しリスクが高いと思う」

「言うまでも無いだろうが、今回は演習だから、という事と、襲撃役が妨害目的という事が分かっていての行動だろう」

「しかし、あえて言っておくと、実戦ではもう少し慎重にならないと損害が出る」

迅代の内心ではリガルドパーティーのほうの評価が高かった。


「ご心配ありがとうよ」

リガルドは一応、礼を言ったが、分かっていると言いたげだった。

「殺られた」イリナしょんぼりしていたが。


「総評としては以上だ。何か質問は有るか?」

迅代がメンバーを見渡す。


「本当に笛が鳴るかどうかは、評価に関係無かったのかい?」

ガレーネパーティーのキノンが迅代に聞く。

「まあ、笛は鳴らないほうがより良いとは思うが、この人員だからね」

「一人の兵隊の判断だと錯誤も起きるし、それに俺の襲撃ポイント次第で運も有るだろうからね」

「だから、笛が鳴るかは参考程度の評価とした」

迅代の説明に、少しキノンは府に落ちない感じを残していた。


「他に質問が有るものは居るか?」

迅代の問いに、リガルドが発言する。

「ちなみに、まだ、作戦は発動されないんで?」

「あまり期間を空けられるのも、商売上、困るんだが」

確かに、いつからどこを捜索するとはまだ決まっていなかった。

ただ、1か月を上限に、毎週3000ピネのキープ料金が支払われる事にはなっているが。

「申し訳ない、こればっかりは相手次第なのでね」

困ったような笑顔で迅代は答える。

「しゃあないな」

リガルドも一応聞いてみただけで、今日目標が聞けるとは思っていなかった。


各員、解散とし、それぞれ帰路に就いた。


迅代はスカウト部隊の2人を集めて、チーム内の総評を行っていた。


「ルーフ、少し気を抜きすぎじゃないか?」

迅代は、だらけて居眠りしていたルーフの態度に苦言を呈する。

「へへっ、見てやしたか・・・」

少しバツが悪そうにルーフは答える。

「でも、期待されている働きはこんな感じかな?と思いやして」

臆面もなくルーフは言ってのける。

「それはそうだが、なあ、実戦形式の演習だぞ」

「へい、危険は無いと判断して、自分の任務を遂行しました!」

『軍務に慣れすぎというのも、良し悪しだな・・・』

ある意味肝の据わったルーフに困ったものだと迅代は考えた。


「グリン、お前のほうは緊張しすぎだ、これが実戦だと持たないぞ」

迅代はグリンが常時緊張してキョロキョロと警戒していたことにアドバイスする。

「はい!でも、いつ敵が現れるか分からないので・・・」

グリンは真面目に答える。

そこにルーフが口をはさむ。

「相手は獣人とか本職のスカウトだぜ?俺たちが頑張っても敵う訳ないだろ」

迅代は達観しすぎているルーフの意見にツッこむ。

「おい、ルーフ、それを言うと身も蓋もないだろ・・・」

「まあ、俺も能力差に目を瞑って役割を割り振ったが・・・人員が居ないので仕方ないだろ」

やり取りを見てグリンが口を開く。

「隊長殿、また、警戒方法のほうお教えください!」

グリンは日ごろの訓練でも真面目だ。

徐々にではあるが、戦闘対応や軍務の対応について習得してきている。

こういった教育は二年兵ぐらいが丁度良いのかも知れなかった。


そこにセレーニアが声をかける。

「ジンダイ様、撤収の準備、完了しました」

「ありがとうございます、セレーニアさん」

迅代は答える。

「じゃあ、みんな。帰るぞ」


そんなやり取りをしているセレーニアを見て、普段、貴族の女性を真近で見る事が無いルーフとグリンは少し赤い顔をしていた。

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