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「イリナの戦闘」

イリナも右側の森で、グリーナと同じようにジグザグに走って兵隊の陣地を捜索していた。

そろそろ右側の森の半分以上を捜索し終えた頃だ。

少し前に道を挟んで左側の森が騒がしいように感じた。

『リガルドと隊長さんが戦闘をしているのかな?』そう考えながらも、自分の任務を黙々とこなしていた。


イリナはグリーナと違い、少し魔法が使える。

獣人の感覚にプラスして魔法が使えるのは大きな強みだった。

リガルドのアドバイスで、かなり無理をして、領域探索のサーチの魔法を習得していた。

ただ、範囲は広くなく、せいぜいが50mの円周の範囲が限界だった。

それでも、感覚で感じた気配を、魔法で確認できるのは大きい。


「ザザッ」

イリナは行き足を止める。

人の気配だ。

今日初めての人の気配なので、躊躇なく魔法で調べる事にした。

「サーチ」

魔法の効果を高めるブレスレットを付けている右手を掲げ、サーチ魔法を発動する。

進行方向40メルト※ほど先に、人がいる。一人だ。

※約24m

それ以外は・・・居ない。

なら迷う事は無い。その一人が何なのか確かめるまでだ。

カンではあるが兵隊のほうだろうと思っていた。

なぜなら、さっき左側の森で戦闘をしていた感じが有ったからだ。

そうそう速く、隊長も移動できないだろうと。

真っ直ぐ、人がいる地点に向かう。


ルーフは午前中より更にだらけて、座っていた。

もう、うつらうつらしている。

丁度気候も良く、たまに虫が寄ってきて安眠を邪魔されるが、すぐに眠くなる。

『どうせ、本職のスカウト相手に機先を制しようなんて思うだけ無駄だ』

そんな風に思いながら。


そろそろ40メルト進んだはずと考えるイリナ。

忍び足での移動に変更する。

『人間の気配・・・こっち側が強い・・・』

気配をたどって、森の奥に分け進む。


「ひゅん!」

イリナは矢の気配を感じて即座に転がる。

「ガズッ!」

後ろからの矢が自分の前の木の幹に刺さる。かに見えたが、跡だけ付けて落ちた。

『後ろ??』

イリナは冷や汗を流す。前の目標にちょっと気が行き過ぎていたようだ。

「ザザッ!」

異音と共に、地面が盛り上がる。

「!!」

イリナは転がったまま、盛り上がった地面と反対の方向に転がる。

「ひゅん!」

また矢だ。

これもイリナは上手くかわす。

イリナが元居た地面に矢が突き刺さる。

ちらっと盛り上がった地面を見ると、布に地面を被せただけの仕掛けだった。

それ以上の危険が無いと判断して、これは無視し、矢の射線の死角になる木の幹の裏に隠れた。


「ぴーーーーーーーー!」

笛の音が鳴り響く。

さすがに暴れまわったために、音で気づかれ、兵隊に笛を吹かれたようだ。

ルーフも面倒に感じていたが、さすがに明らかな敵の出現に笛を吹かないわけにはいかなかったようだ。

イリナはまだルーフの正確な位置を把握できていない。

焦るイリナに、迅代が襲撃をかけて来た。


イリナの隠れる木の幹に回り込む葉っぱの塊。

ただし、その葉っぱの中にナイフの刃が光る。

「うわっ!」

驚いてイリナは避ける。

と同時に、イリナも短剣を抜いて迅代を迎え撃つ。

「キン!」

「キン!」

迅代は休む間もなく、斬りかかってくる。

イリナはそれを受けるのに必死だ。

防戦一方のイリナに迅代が勝負をかけた一撃を放つ。

「ガギッ!」

イリナのナイフは飛ばされ、手持ちの武器を失う。


「ファイヤ!」

追い詰められたイリナは知っている数少ない攻撃魔法の火炎で迅代を攻撃する。

イリナと迅代の間で炎が出現する。

しかし、迅代は左腕で顔面を庇いつつ、恐れずに突き進んでイリナに体当たりを行う。

イリナの魔法はそれほど強くなく、迅代を焼き尽くすような威力は無かった。

「くっ!」

イリナが声を漏らし、転倒する。

その上に馬乗りになった迅代が模造刀でイリナの胸部を下から上に斬る動作を行う。

イリナは戦意を失った。

「まけたー」

情けない顔で声を出すイリナ。

「悪いが、ちょっと縛らせてもらうぞ」

そう言いながら、迅代は素早くイリナの手足を細くて強力な縄で縛る。

後ろ手で縛られたイリナはそう簡単に縄をほどくことは出来ないだろう。

口にもかせをハメられ、木の幹に座る形で置かれた。

迅代は処置を済ませると、ルーフの元へ確認に行った。


「ぴーーーーーーーー!」

またの音が鳴り響く。

ルーフはリガルドを目の前に笛を吹いていた。

リガルドはゆっくり地図を取り出し、マーキングを行った。


演習は終了したようだった。

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