「2つ目の陣地」
ルーフのほうは、道の右側の森の、少し奥に入った3km付近、道から200mほど森に入った所に陣取っていた。
こちらは森の木々の中で、見晴らしはあまり良くない。
その中で木々の間で敵が来るのを監視しろとの命令だった。
とりあえず、だれかが来るまで待っていろという任務なので、適当に木の下で腰を下ろして、座っていた。
一応、道からくる者に気づくように、そっちを向いて座ってはいたが。
『お気楽な任務だぜ』
と気負わずのんびりとしていた。
キノンの一隊は、左側の森の捜索を終え、森を出て見晴らしの良い所で、ガレーネの隊が出て来るのを待っていた。
少ししてガレーネが森から出て来た。
「どうだった?」
キノンはガレーネに近づき、声をかける。
「隊長さんに奇襲を受けた。成果は無しだ。」
「ザズがやられて、休んでる。後追いでやってくるだろう」
キノンは肩をすくめる。
「戦闘やってるのは気づいたけど、あのザズがやられたのかい」
「ああ、矢と電撃を食らった」
「そっちはどうだった?」
「若い兵隊のほうの陣地は見つけたよ」
キノンはマーキングした地図をガレーネに見せる。
「隊長さんが待ち伏せしてたみたいだが、ココリんのサーチ魔法で回避できたよ」
キノンはココリにウインクする。
「ココリん言うなし」
ココリはちょっとふくれる。
「時間もあまり無い。キノンのチームは先に進んでくれ」
「俺はザズが追いつくまでここで待つしかない。探索能力はザズ頼みだからな」
「はいよ」
後ろ手で挨拶すると、さっさとキノンのチームは右側の森に進む。
ココリはガレーネにちょこんと頭を下げて、キノンの後を追って行った。
キノンのチームが右側の森に入って1kmほど進んだ。
「リボー、気配はあるかい?」
キノンがリボーに問いかける。
「・・・いや、気配は感じない」
リボーは目や耳は良いが、さすがに獣人ほどでは無い。
キノンが少し考えて、ココリに向かって言った。
「ココリん、サーチ頼めるかい」
ココリは前に進み出て言った。
「ココリん止めててよね」
ふくれっ面で右手に杖をかかげ魔法をかける体制に入る。
「ひゅん!」
「ざっ!」
ココリの右背腕部に矢が刺さる。
がこれも魔術師のローブを貫通せず、矢が落ちる。
「つう・・・」
ココリは撃たれた事に混乱し、右手の杖を落とし、かがみ込む。
実際に傷は負っていないが、それなりの衝撃だった。
「ココリ!」
背後からの攻撃だ。
キノンはココリを庇うように背後からの追撃に備え立ちはだかる。
リボーもナイフを抜き、矢の飛んできた方向の敵を探す。
防御の構えのまま、キノンは後ろでしゃがみ込んでいるココリに声をかける。
「大丈夫かい?」
ココリは撃たれた右手を震わせながら、魔法を増幅する効果のある杖を拾いなおす。
「う、うん、大丈夫。打撃を受けただけみたい」
地面に落ちた演習用の矢を見て言う。
「ひゅん!」
今度は矢が左側からキノンのほうに飛んでくる。
「くっ!」
キノンは矢を避ける。
が、その先にはリボーが居た。
「ざっ!」
リボーの脇腹に矢が命中する。
「ぐっ!」
また矢は貫通しなかった。
リボーは矢の命中の衝撃に耐えて、体を左に向け、射手を探す。
「あそこだ!」
左側15mほど先の木の脇の葉っぱの塊を指さす。
「サンダーボルト!」
キノンが魔法を詠唱する。
「アイススピア!」
ココリも体を横にしたまま震えた声で魔法を繰り出す。
キノンの電撃は飛び跳ねるように回避する葉っぱの塊に少し掠ったようだ。
だが、ココリの氷塊は移動前の空間を通り過ぎ、地面に刺さる。
葉っぱの塊は木々を盾にしながら、撤退して行った。
「イヤな攻撃をするね」
無傷だったキノンは呆れたように言う。
「リボー、どうだい?」
リボーは服をめくって傷を確認していた。
「青ジミになっているだけだ。演習用の矢じゃなかったら重症だったがな」
キノンは、まずココリをヒーリング魔法で癒す。
「ありがとう、キノンさん」
「キノンで良いっていってるのにぃ」
キノンは拗ねたような声でココリに言う。
ココリと警戒役を代わり、リボーをヒーリング魔法をかける。
「キノンさん、男には雑じゃないですか?」
「おら、男が細かい事言うんじゃないよ」
「はい、OKだよ」
「とりあえず、ありがとうっす」
リボーの治療も完了した。
「ここで仕掛けて来たって事は陣地も近いのかもね」
「ココリん、頼めるかい?」
キノンの声に、ココリはうなずく。
「魔力、これが最後かも」
サーチの魔法は魔力の消費が大きいので、使いどころを考える必要が有る。
「サーチ!」
ココリは目を閉じて探索する。
「進行方向真っ直ぐ30メルト※ほどに人サイズの生き物」
※約18m
「あと、進行方向右2リーグ※、50メルトほどにも人サイズ」
※約60度、※※約30m
「人サイズはこの2つだね」
ココリが目を開く。
「真っ直ぐのほうだろうね」
「運が悪かったら、また攻撃を受けるがね」
キノンはそう言って、進みだした。
この推測は当たり、ルーフの陣地も見つけることが出来た。
迅代はキノンの魔法攻撃で、足が痺れており、実質攻撃を行うことが出来ない状況だった。
ガレーネパーティーは笛を吹かれることなく2つの陣地を見つけることが出来た。




