「リセルゼの来訪」
「アリーチェちゃん、今日は来れなくなったらしいです・・・」
先ほど来たアリーチェの使いの兵士を見送ったリォンリーネが残念そうな顔で、迅代に話しかけてきた。
「そうなんですね。せっかくお菓子を作る準備をしていたのに・・・残念ですね」
皇国遺跡調査室の会議室で、迅代は、机に地図を広げ、考え事をしながらリォンリーネの相手をしていた。
迅代は、アリーチェの様子を見ながら移動するため、魔王軍討伐部隊と付かず離れずという形での、皇都への帰還ルートを検討している所だった。
「リォンリーネさん、ジンダイ様は忙しいのです」
「アリーチェ様が来ないのなら、ご自分の荷物の整理でもなさったらどうですか?」
一緒に地図を見ていたセレーニアが邪魔と言わんばかりに、リォンリーネを窘める。
「ぶー、持って行く荷物整理は明日に予定入れてますよう。突然今日の予定が無くなって、暇なんですよう」
リォンリーネがつまらない風につぶやく。
そんな様子をちらりと見た迅代は、リォンリーネに話しかける。
「アリーチェ殿は、何故来れなくなったんです?」
「今日、来れなかったら、もう皇都へ出発しちゃうんじゃ?」
魔王軍の撃退と言う任務を終えた、魔王軍討伐部隊は、皇都に戻る事になるだろう。
軍師デカルテの話では、ボーズギア皇子が一刻も早く帰りたがっていると聞いていた。
「それが、なんだか変なんですよう」
「連絡に来た女の兵士の人が言うには、今日は理由は言えないけれどキャンセルで、3日ほど後に、また連絡するとか・・・」
「3日後ぐらいには皇都に立つと思っていましたよう」
リォンリーネは不思議な顔で言った。
「理由は言えない・・・か・・・」
「何か作戦行動でもしているのかも知れませんね・・・」
迅代は呟いた後に、セレーニアのほうを見る。
目線が合ったセレーニアも頷く。
「軍事行動を取るのなら納得がいきますね」
「魔王軍の残党でも見つかったのでしょうか?」
セレーニアも迅代と同じような考えだ。
「今日の警護はリガルドとグリーナだったか」
「交代要員のトールズとアレジアは早い目に行かせよう」
迅代はセレーニアに告げる。
セレーニアは頷き、早速、二人に伝えに部屋を出て行った。
「じゃあジンダイさんはお菓子作るの手伝ってもらいますよう」
迅代と二人になったリォンリーネは突然切り出した。
「え、いや、今、移動ルートを・・・」
迅代は断るつもりで言ったが、リォンリーネはお構いなしだった。
「ジーボスコの実は傷みやすいんですよう」
「せっかく沢山買ったので、今日中に餡にしてしまいますよう」
口うるさいセレーニアが居ない間に、リォンリーネにせかされて、結局、迅代が調理室へ駆り出された。
買ったジーボスコの実の餡が概ね出来上がった頃、リガルドとグリーナがが帰ってきた。
しかし、何故か白銀騎士リセルゼを連れていた。
「勇者ジンダイ様、今日は折り入ってお願いが有って参りました」
リセルゼは畏まった態度で礼をしながら迅代に告げる。
「は、はあ・・・どういったお願いなのでしょう?」
迅代は少し警戒しながら、リセルゼの言葉を待つ。
リセルゼは迅代を見据えて言った。
「申し上げにくいのですが・・・我がリシュター領主の御子息、ダイス様の初陣にお付き添いいただきたいのです」




