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「魔族の愉悦」

薄笑いを浮かべた魔族の女が視線を再びオーリアに向ける。

視線を合わせたオーリアは、体の奥から湧き上がるゾクゾクとした感情に体が上手く制御できなくなり失禁してしまった。


「あうう、あ、う、あああ・・・・」

オーリアは言葉にならない声を上げる。

感じた事の無い恐怖心がオーリアの心を埋め尽くす。


「とーっても」

魔族の女は優しい声でオーリアに告げる。

「熱かったんだよぉ・・・」

そう言いながら、オーリアに近づく。


「あんな弱っちいヤツに憑依していたからねえ」

魔族の女の口角が上がり、微笑む、恐ろしい笑顔。


「こんなに熱い思いをしたのは何十年ぶりかねえ・・・」

魔族の女は炎を宿したバトンを振り上げる。


吹き飛ばされたヴォルカも、叩き飛ばされ、壁にぶつかったアークスも、動かない。

もうオーリアを助けてくれる者は居ない。


「この炎は特別製。地獄の炎なんだ」

「じーっくり燃えて決して消えないんだよ?」

魔族の女の両目がへの字に歪む。

まるで悦楽に浸っているように。

「そうだねえ、足先なら徐々に、体、頭と、ゆーっくり、燃えて行ってもらおうかねえ」

「じーっくり苦しむんだよ?」


「ドタドタ」

魔族の女がオーリアの末路を話して楽しんでいる所に、階下から兵士たちが集まって来る。

さすがに異常に気付いたようだ。


魔族の女は興がそがれたとして、不満げな顔になる。

「まったく、虫けらは!たのしい時間を過ごしているのに、待てないのかねえ!」


魔族の女は、まずは階下の兵士たちを攻撃しようとする。


そこに「チュン!」「バギッ!!」


魔族の女の振り上げたバトンと右腕に銃弾が命中する。

「ボン!!」「ボン!!」

同時に銃の発射音が2つ響き渡る。

「ぐぅ!!」

魔族の女は右腕に受けた痛撃と、魔法のバトンに受けた衝撃で声を上げて怯む。


廊下に有る窓の外からの狙撃だった。

バトンに点った地獄の炎が射撃には良い目印になったようだった。


何が起きたか分からず、周囲に目を走らせる魔族の女。


しかし、近くに飛び道具や魔法攻撃を仕掛けている兵士は居ない。

そこで窓の外からの魔術攻撃と判断し、衝撃を受けた方向、窓の外側に視線を向ける。


魔族の女は窓の外、少し離れた建物の窓に、こちらを向いて構えている者を感知する。


窓の奥には、三脚に据えたライフル銃を構えるセレーニアが居た。

そして槓桿を操作し次発を装填している所だった。


「あれか!」

そう言って、攻撃を放とうと思考した瞬間に、階下から突撃して来る者が居る事に気づく。

「ダダッ!!」


兵士が一人、低い姿勢で小走りに階段を上って来る。

魔族の女は雑魚が何人来ようと無視することし、窓の外の敵のほうが脅威度が高いと判断した。


しかし階下から昇ってきた兵士は、手に構えた拳銃を魔族の女の頭部を狙い、弾丸を発射した。

「ボン!!」

発射炎と共に衝撃で銃口が上を向く。


窓の外に気を取られていた魔族の女の顎下に至近距離から放たれた銃弾が命中する。

「バジュ!!!」

「ギャアア!!!!」

命中音と共に、魔族の女は悲鳴のような叫び声を上げた。


階段から放たれた銃弾は顎下から頭部に侵入し、脳に達した。

その後、頭蓋骨で銃弾の運動エネルギーは吸収され、一回り頭部が膨らんだ気がした。

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