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「捕縛した指揮官」

「大丈夫ですか?勇者ヴィンツ様」

勇者ヴィンツの後ろを歩く騎士の男が気遣う。

ヴィンツが歩く姿に傷を負った様子は感じられない。


「ああ、本調子では無いが、この要請には応じない訳にはいかないだろう」

ヴィンツは負傷を感じさせない声の張りで答えた。


勇者ヴィンツは魔纏兵に負わされた傷が完全に癒えた訳では無かった。

そんな状況であるにもかかわらず、ボーズギア皇子の警護のため、呼び出されていた。

捕えた魔王軍の指揮官クラスの黒い悪魔の尋問をボーズギア皇子が行うという事だった。


そして勇者ザーリージャも警護に参加すると言う。


先の戦いでのザーリージャの行動に勇者ヴィンツも疑念を持っていた。

そのため、警護をザーリージャのみに任せる訳にはいかないと考え、傷を押して尋問に参加する事にした。

それと、魔王軍の指揮官がどのような態度でこの尋問に応じるかも興味もあった。


北東門を少し進んだ防衛砦の一角に、大勢の人が円を取り囲むような形で集まっていた。

そこが、悪魔の指揮官が居る場所なのだろう。


円陣の中から2名ほど、兵士が駆け寄って来る。

「勇者ヴィンツ様、こちらです」

この兵士に案内されて、勇者ヴィンツと、白虎支隊の指揮官、そして、配下の騎士が続く。


円陣の中心には、体を鎖でグルグル巻きにされた黒い人型の物が地面に転がっていた。

悪魔の指揮官だった。

勇者ヴィンツは過去の戦いで一度、悪魔の指揮官を討ち取った事が有った。

その時の指揮官は、さほど強い訳ではなく、一撃で倒せた。

今回の指揮官はAクラス冒険者複数と、勇者アリーチェの魔法攻撃でようやく行動不能に追い込んだらしい。

アリーチェの魔法攻撃は、手加減無しでの攻撃だったのだが、それでも生き残って捕まったのだと言う。


戦闘を目撃した者の話では、魔纏兵と同等の戦闘力を持っていたのだと言う。

集まっている人達をよく見ると、冒険者らしい一団、そして、負傷しているようだが、無理を押して様子を見ている白銀色のプレートメイルの騎士が居た。

冒険者らしい一団が戦っていたAクラス冒険者たちなのだろうとヴィンツは考えていた。


「おそらく、こやつが装備している黒いプレートメイルのような装備は魔纏兵と同じ強度を持っていそうです」

勇者ヴィンツが到着したので、ここの現場指揮官が近寄って来て、説明を始めた。

勇者ヴィンツはその言葉をうんと頷いて聞き、質問した。

「ヤツは動いたりするのか?」

ヴィンツはじっと視線を鎖でグルグル巻きの悪魔に据えながら、言った。

「ジリジリと動きはしています。が、鎖を解こうとか、立ち上がろうとかはしていません」

「観念しているようです」

現場指揮官が言うように観念するとは思えなかったが、勇者ヴィンツは動けないのかも知れないと思い、うんと頷いた。


勇者ヴィンツは、すこし悪魔の指揮官を観察した後に口を開く。

「勇者ザーリージャ殿はもう?」


その問いに現場指揮官が答える。

「ボーズギア皇子を護衛されているので、一緒に来られるのでしょう」

「ああ、来たようです」

頑張指揮官は遠くに見える、大型の角ばった馬車を認めて言った。


ボーズギア皇子の司令部馬車が、こちらに向かって来ていた。


地面に転がっている悪魔の指揮官は、黒いプレートメイルのヘルメット越しに、勇者ヴィンツを睨みつけていた。

どうやら戦意は未だ失ってはいないようだった。

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