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「ジェーナの危惧」

「何?魔王軍の指揮官クラスを捕えたとな?」

東門近くまで移動した司令部馬車の中で、ボーズギア皇子は驚きの声を上げて部下の報告を聞いた。


「はい、リシュター領地軍が戦闘していた悪魔クラスの指揮官を、勇者アリーチェ様の魔法攻撃で瀕死の状態にまでダメージを与え」

「意識がほとんどない状態ですが、捕縛したのだという事でした」

部下の参謀の言葉を聞いて、ボーズギア皇子は考える。

この「捕虜」を上手く使う手立ては無いものかと。


「うむ、では、まず、その指揮官とやらを見せてもらおう」

ボーズギアの言葉に周囲の者たちは反対の声を上げる。

「それは危険では無いですかな?」

「捕えたとは言え、強力な力を持っていたとの事」

「もし、暴れ出しでもすれば、御身が危険にさらされる事も・・・」


周囲の参謀達の言葉に一瞬躊躇するが、ボーズギア皇子は、この機会が自身の権力を強化する手段のように思えていた。

賭けをしないと得られない利益も有ると。

最近は余り成果を上げられていない自身の事に焦りが有ったのかも知れなかった。


「勇者殿を護衛に付ける、それで良かろう?」

ボーズギア皇子の言葉に、参謀達も渋々同意を示す。


護衛には、勇者ヴィンツと勇者ザーリージャの2名が指名された。


ボーズギア皇子が捕らわれた敵の指揮官の視察を行おうとしていた頃、迅代のチームの元に、勇者アリーチェが訪れていた。


「こんにちわ、緑の勇者の人」

アリーチェは戦闘用の法衣を着て魔法の杖を持ち、ジェーナと数人の魔法兵士を引き連れてやって来た。

突然の来訪に迅代のチームの面々は驚きの色を隠せない。


「あ、アレって勇者アリーチェ様??」

アレジアがセレーニアにひそひそ話を仕掛ける。

その問いにセレーニアも驚きながら答える。

「え、ええ、間違いなく、アリーチェ様だわ」


一身に注目を集めているのを自覚して、アリーチェは少し恥ずかしいという素振りを見せて、ジェーナの服の裾を掴む。


「皆さま、突然の来訪、失礼いたします」

ジェーナはアリーチェの背中に手を置いて、挨拶し、礼をする。

それにつられてアリーチェもちょこんと礼をする。


「これは、アリーチェ殿と、ジェーナさん、突然どうしたんですか?」

迅代は二人の前に進み出て、ここに来た用件を尋ねる。


勇者アリーチェはすこし恥ずかし気な表情を残しながら、迅代に言う。

「ジェーナがお話したい事があるって」

そう言いながらアリーチェはジェーナのほうを向く。

ジェーナはその言葉に静かに頷いて、迅代の顔を見る。


迅代は、内容に思い当たる事が無く、ジェーナが口を開くのを待つ。


「アリーチェ様を守っていただきたいのです」

ジェーナは迅代の目をじっと見て口を開いた。


「それは、どういう・・・?」

迅代は要領を得ない状態で再度理由を聞こうとする。


「大変不敬な申し出な上、唐突な申し出で恐縮なのですが、少し2人でお話しできますでしょうか?」

ジェーナは揺るぎない瞳で迅代を見つめ、強い意志を感じさせる語調で言った。

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