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「反攻作戦:東門解放へ」

「回復術師を!」

力なく倒れる勇者アリーチェを支え、叫ぶジェーナ。

アリーチェは火炎地獄の魔法を防ぐため、最後の魔法力まで振り絞っていた。


白虎支隊が火炎の魔法で攻撃される事は防げた。

しかし、当分は、勇者アリーチェの支援を受けることは出来なさそうだった。


その知らせが魔王軍討伐部隊の司令部にも届く。

今日は、司令部馬車で司令官であるボーズギア皇子も戦況を聞きながら、作戦の進行を見守っていた。


「なに?勇者アリーチェ殿が魔法力を使い果たしたとな」

ボーズギア皇子は報告を聞いて、声を上げた。

意外と今回の反攻作戦は思ったように進捗していない、そんな気持ちが頭をよぎる。


しかし、そんなことは考えないように、参謀たちに伝える。

「戦況はわかった、そのまま白虎支隊を東に転進させて、魔王軍主力を葬り去れ」

「勇者ヴィンツ殿の力をもってすれば、魔王軍など何するものぞ!」

勇ましい言葉が空虚に響く。


その言葉を聞いた参謀たちの中に、同意するような言葉を発する者は居なかった。


「そ、そうでありますな」

「今までの勇者様の働きを見れば、この状況も問題無く切り抜けて下さろう」

参謀達が無言なのに気まずさを感じたのか、皇子の取り巻きの兵たちは、遅ればせながら賛同を示す。


しかし参謀長は勇ましいだけの雰囲気を払拭するように口を開く。

「司令官閣下、ここは万全を期するために、一旦進撃を停止させてはいかがでしょう?」

「勝利を盤石にするため、勇者アリーチェ様の回復を待って、進撃を再開すると致しましょう」

参謀長はボーズギア皇子の意思を尊重しつつ、やんわりと拙速な行動を止めようとする。


東門の戦力のほうが南東門の戦力より強大である事は既に分かっている。

南東門の攻撃時のように、大規模魔法で地ならしをした後での攻撃でも無い。

南東門の解放より、より、戦闘が激しくなることは分かり切っていた。

参謀長は、そんな分かり切った状況で、白虎支隊に消耗を強いるのは得策では無いと感じていた。


今となっては、魔王軍のほうから仕掛けて来る事も困難と見ていた。

そして、勇者アリーチェさえ回復すれば、また大規模魔法で攻撃も出来るし、同時多数攻撃の魔法で支援も出来る。

現状では無理に攻撃を始めないほうが優位に働くと見ていた。


「う、うむ・・・」

ボーズギア皇子も一瞬よぎった不安も有り、参謀長の進言を受け入れようか迷っていた。


そこで、思わぬ提案が行われた。


「あたしが行こう」

その声に皆が驚き、声のする方に視線が集中する。

勇者ザーリージャだった。


いつもはボーズギア皇子の護衛役を任されて戦闘に参加していない勇者ザーリージャであった。

しかし、この状況で出撃するのだという。


想定外の言葉に参謀長は、口ごもりながら言葉をひねり出す。

「ざ、ザーリージャ様は、司令部の護衛、それよりも時間を稼いで態勢を整えて攻撃すれば、難なく勝てる状況と見ます」


そんな参謀長の言葉を見下ろすような視線で無言で流す。


「ザーリージャ殿が、護衛の任務から外れるのは困る」

「出撃は認めない」

ボーズギア皇子も、司令部の護衛からザーリージャを外す気持ちは無さそうだった。

その様子を見て参謀長も安堵する。


しかし、ザーリージャはいつになく出撃にこだわっていた。


「なあに、防壁の内側に居ればボーズギア殿も安泰、護衛は不要だろ?」

「そして、あたしが参加すれば、東門の敵も簡単に撃破できる」

「長々、こんな街に閉じこもっているのがイヤなんだよ」

「速くこの戦いを終わらせて、皇都に戻るほうが良いだろ?」

ザーリージャはそう言うと、ボーズギア皇子のほうに挑発的な視線を送った。


当初、魔王軍によると考えられていた暗殺に怯えていたボーズギア皇子であったが、最近はその警戒感も薄れてきていた。

そして、ザーリージャの参戦によって難なく東門も解放されて、皇都に戻れるなら、それが良いと思えて来た。


「う、うむ、よかろう」

「黒龍支隊の出撃、認めようでは無いか」

ボーズギア皇子の言葉に参謀長は落胆する。


勇者ザーリージャの参戦は心強いが、今回の作戦では、魔法支援のほうが有用と考えていた。

魔法の支援なしに直接攻撃の部隊だけで事に当たるのに、参謀長は少しの不安を覚えていたのだった。

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